【特別インタビュー】再分配機能の強化で貧困をなくす コロナ禍で「小さな政府」は終焉(後)
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立憲民主党 衆議院議員 山内 康一 氏
福岡県総支部連合会代表(聞き手:データ・マックス代表取締役社長 児玉 直)
小さな政府の終焉
――勝ちを引き寄せる手立てはありますか。
山内 国政選挙ですから、全体の「流れ」が非常に重要になります。いかに「政権選択選挙」という構図を打ち出せるかにかかっていると思います。立憲民主党が選択肢として見てもらえるかどうか。そして、菅さん……あるいは次の自民党総裁と立憲の枝野さんのどちらを選ぶのかという構図をつくったうえでメディアに伝えてもらえるように工夫できれば、政権選択のチャンスになると思うのです。まずは選択肢としてみなされるように努力します。
――野党を見ていると、スピード感がないと感じる時があります。
山内 野党の場合、危機の際に予算を執行できる権限がありません。知事のほうが迅速に動けるので、すごく目立つんですね。野党は災害時に存在感が薄くなってしまいがちです。
また、自民党は有事の際に補正予算などを配分できるということもあって強くなるんです。だから野党にとっては非常に難しい状況ですが、そこは地道に政府の対応についての問題点を指摘したり、より良い政策オプションを示していくしかありません。まずは政策面でより良い選択肢であるということをオピニオンリーダーやプロにわかってもらい、そこからじわじわと国民に広げていく。そういう手順が必要かなと思います。
これまで自民党が続けてきた新自由主義的な政策、小さな政府という言葉は、今回のコロナ禍でおそらく終焉を迎えたと思います。世界中の国々が大きな政府になっているので「小さな政府」は死語になるでしょう。これほどまでに感染が広がってる状況では公助が重要です。菅首相は自助努力を強調していますがそれは時代の流れと真逆で、それも支持率低下の背景にあると思っています。後世においては、新自由主義最後の政権が菅政権だったといわれるのではないでしょうか。
実際、アメリカもヨーロッパも政府が前面に出ています。ワクチン開発などでも資金を出しているのは各国政府ですから。さらに、インターネットやGPSが軍事研究の延長線上で生まれたように、イノベーションを起こすような大きな開発は、ほとんどが政府予算による研究が元になっています。政府が前面に出て、人材育成、研究開発、インフラ整備などをやらざるを得ない時代なのです。我々としては、適切な規模の信頼できる政府を再構築していくことを打ち出していかなければなりません。
――消費税ゼロ政策は打ち出さないのですか。
山内 今の状況を考えると消費税をゼロにするのは不可能だと思います。税を集めたうえで初めて再分配できるのであって、税を集めずして分配はできません。ただし、法人税や所得税などは税の平等化が必要だと思いますね。たとえば高額所得者に対する累進性強化や金融課税の強化など、再分配機能を取り戻すための税制改革が必須でしょう。小さすぎる政府ではセーフティーネットが弱くなってしまいますので、我々は社会保障費増額の方針を打ち出していきたいと思っています。
安倍政権で法人税を下げましたが、元の水準まで戻すべきで、それを教育や基礎研究分野などに投資する必要があるのです。あまりにも税の再分配機能が弱くなっているので、これを戻さないといけません。消費税を増税しろとは言いませんが、消費税減税というのは時代の流れに逆行しているのでは。
個人的に考えているのは、学校給食を無償化して子育て世帯の家計負担を軽減することです。またOECD加盟国のほとんどにあって日本にない数少ない制度に住宅手当・家賃補助という制度があります。たとえば住宅ローン減税に年間8,000億円使っていますが、その金額の半分でいいから賃貸住宅に住む低所得者層の家賃補助に回していくなど、セーフティーネットに使えるお金を増やしていく発想が必要です。再分配機能を強化して貧困をなくしていく。それが自民党と差別化する最大のポイントだと考えています。
(了)
【データ・マックス編集部】
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