2024年11月24日( 日 )

ドメスティックバイオレンスで日本マクドナルド元社長・原田泳幸逮捕の衝撃!~日本版カルロス・ゴーンの異名をもつ「壊し屋」(2)

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 「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」(何でも食う犬さえそっぽを向く)ということわざがある。夫婦喧嘩は一時的ですぐに和合するものだから、他人が仲裁に入るのは愚かであるという意味(『広辞苑』より)。夫婦喧嘩の果てに、日本マクドナルドホールディングス(株)の原田泳幸(えいこう)元会長兼社長が逮捕された。「プロ経営者」として一世を風靡したスーパースターが、ドメスティックバイオレンス(DV、家庭内暴力)によって失脚の時を迎えようとしている。原田氏の「プロ経営者」の足跡をたどってみよう。

原田氏がもっとも輝いていたのはアップルコンピュータの日本法人の社長時代

 原田泳幸氏は1948年12月3日、長崎県佐世保市の生まれ。県立佐世保南高校から東海大学工学部通信工学科に進学。いかにも基地の街育ちらしく、大学卒業後は外資系一筋だ。日本NCR(株)、横河・ヒューレット・パッカード(株)、シュルンベルジェ・グループを経て、4回目の転職先はアップルコンピュータ・ジャパン(株)(当時)である。

 1990年、42歳でマーケティング部長として入社。ビジネスマーケット事業部長、取締役マーケティング本部長と昇進を重ね、96年には米国法人に勤務して、世界市場を相手にマーケティングを担当した。97年、日本法人のアップルコンピュータ社長と米国本社の副社長を兼務した。時に49歳であった。

 日本法人の社長としての実績は、直販化の推進である。40社強あった1次卸を4社に絞り、3,000店あった販売店を100店に削る荒療治をやってのけた。天才的起業家として神話的存在となったスティーブ・ジョブス氏が暫定CEOとして米アップルに復帰。98年にiMac(アイマック)を発売するタイミングに合わせて、原田氏は日本市場で、この荒療治を実行した。

 原田氏が経営者としてもっとも輝き、自身が誇りにしているのが、アップルコンピュータの日本法人の社長時代だ。アップルコンピュータの日本法人社長として、経営者人生の第一歩を踏み出し、iMacの販売を成功させたことが、原田氏の輝かしい勲章である。日本法人社長時代に谷村有美さんと結婚している。

 原田氏は「主張がブレないタフネゴシェーター」という評価が定着した。アップルジャパンでの剛腕を買われて、米マクドナルド本社にヘッドハンティングされた。日本マクドナルド(株)の体質を根底からつくり変えるには、うってつけの人物と見込まれた。2004年、日本マクドナルドHDのCEO(最高経営責任者)に就いた。アップルの主力商品マッキントッシュとマクドナルドの愛称がともにマックだったことから「マックからマックへ華麗な転身」と話題になった。

原田氏は藤田マクドナルドを解体する「壊し屋」だった

 原田氏は自分自身をこう規定している。

 私は決して「プロ経営者」ではありません。プロはたくさんいます。私は「一番熱心な雇われ社長」です。

    「一番熱心な雇われ社長」として剛腕を発揮したのが日本マクドナルド時代である。一番熱心な雇われ社長の仕事とは何か。

 「今から新しいバスが出発する。新しいバスのチケットを買いたい人は乗れ、買いたくない人は乗らなくていい」2004年5月、日本マクドナルドHDのCEOに就いた原田氏が、幹部を集めて発した第一声である。自分が運転するバスに乗る者には相応の覚悟を求め、その覚悟がないものは去れという意志表示である。

 藤田マクドナルドに対する宣戦布告である。小泉純一郎元首相が「古い自民党をぶっ壊す」と叫んだように、原田氏は「藤田マクドナルドをぶっ壊す」と吠えた。一番熱心な雇われ社長としての仕事は、「藤田マクドナルドをぶっ壊す」こと。「壊し屋」が原田氏の仕事だったのである。日産自動車に乗り込んだカルロス・ゴーン氏が、古い日産をぶっ壊したことになぞらえて、原田氏は日本版カルロス・ゴーンの異名が付いた。

 日本マクドナルドという米国のファーストフード業態を輸入したのは(株)藤田商店社長の藤田田(ふじたでん)氏である。1971年創業の日本マクドナルドは、31年間社長を務めた藤田氏が、ワンマン経営の拡張路線で外食大手の一角に飛躍した。

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 2000年代初頭、「59円バーガー」を売り出して過度に値下げし、その後、値上げするという価格政策のブレから客離れが進み、業績が悪化した。米国本社は、日本マクドナルドの体質をつくり変えるために、原田氏を落下傘経営者として送り込んだ。

(つづく)

【森村 和男】

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