2024年11月22日( 金 )

【コロナ下の流通業界特集(2)】上位21社売上高ランキングの変遷 激変の2019年、企業間格差が鮮明

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 流通企業の栄枯盛衰は激しい。【別表】はマイカル、寿屋が破綻した2001年から06、11、16、20年と5年ごと(20年は4年)の売上高上位21社ランキングの変遷を示したもの。01年に名を連ねていた首位寿屋、10位ニコニコ堂、12位マイカル九州、17位マルショク、19位丸和、20位九州西友の6社は現在ない。順位も01年から大きく変わった。経営の舵取りを誤ると企業間競争で後退するばかりか、市場から退出を迫られるという厳しい市場の掟を示す。

寿屋など6社が消える

 2001年末、系列スーパーや専門店、外食子会社を含めた連結で3,157億円、単体で2,416億円を売り上げていた寿屋が民事再生法適用を申請し、九州流通業界を震撼させた。創業オーナーによる過大な拡大戦略とその後を継いだ銀行出身トップの無為無策が原因だった。

 これを機に九州流通業界は低価格業態の台頭と相まって大激動期に突入する。寿屋に代わってサンリブが首位に上昇するが、マイカル九州を吸収合併したイオン九州(旧・九州ジャスコ)が取って代わり06年には2,000億円に乗せ首位の座を固める。01年はサンリブに800億円近い差をつけられ7位だった。

 この年、トライアルカンパニーが1,061億円で7位、コスモス薬品が1,050億円で9位を占めた。わずか5年前にはトライアルは113億円、コスモスは124億円にすぎず、それぞれ9.4倍、8.5倍の成長を遂げた。

 マルショクが01年の601億円から1,061億円と6位に浮上したのはグループ会社と合併したことによる。下位では高質スーパーとして頭角を現しつつあったハローデイが457億円で西鉄ストアにつぐ22位だった。

11年、低価格業態台頭

 11年、イオン九州は2,547億円で首位は変わらないが、2位にトライアル2,407億円、3位コスモス薬品2,372億円が付け、勢力交代を印象付けた。両社は翌12年イオン九州を抜く。10位は09年末、サンドラッグ傘下に入ったダイレックスの961億円で、01年前身のサンクスジャパンが21位だったのから躍進した。

 14位にはコスモス薬品を追撃し多店舗展開に乗り出していたドラッグストアモリのナチュラルが登場、低価格業者4社がそろい踏みする。

 SMでは不採算店閉鎖に追われるサンリブとマルショクが後退。それぞれ06年の3位から5位、7位から11位に下げた。西鉄ストアはスピナの合併で667億円と06年の20位から15位に順位を上げた。

16年、新興2社が1、2位

 16年、コスモス薬品とトライアルの低価格業態が1、2位を占める。ダイレックスが5年前の11位から6位、ドラモリが年商1,000億円の大台に乗せ同15位から12位に順位を上げた。SMではハローデイがボンラパスなどの子会社の合併で686億円と16位に登場した。

 20年は前年9月の消費増税で一段と消費者の低価格志向が強まり、上位10社のうちミスターマックス・ホールディングスを含め低価格業態が5社に増えた。ダイレックスは2,300億円で4位に上昇、ドラモリは1,530億円で9位とベスト10入りした。下位集団では百貨店が脱落したのと入れ替わって19位にJA系スーパーのエーコープ鹿児島、20位エレナ、21位三角商事が入った。

コスモス、19年間で55倍

 過去19年間の成長率1位はコスモス薬品の55.2倍。医薬品や化粧品の儲けで食品や日用雑貨を低価格で販売するビジネスモデルで驚異的な成長を遂げた。トライアルは投資コストの低い居抜き出店から始め、大型売り場で生鮮からレジャー用品までを低価格で販売するスーパーセンターへと進出した。20年3月期の売上高は卸金額で、小売換算すると4,834億円と成長率は42.8倍になる。

 01年の上位21社のうち、破綻や合併などで市場から退出した6社を除く15社で19年も残っているのはイズミ、イオン九州、ナフコ、サンリブ、ミスターマックスHD、岩田屋三越、タイヨー、マルキョウ、井筒屋、エフコープの9社。このうち、井筒屋は41.6%、タイヨー18.9%、マルキョウ13.6%のマイナス成長だ。タイヨーは07年上場廃止後、売上拡大から利益本位に転換、出店をやめた。マルキョウも20年4月居抜きで出店するまで10年以上、ゼロだった。

 凋落が著しいのは百貨店。01年にはトキハ、博多大丸、鶴屋百貨店、山形屋を含め6社が名を連ねていたが、4社とも圏外に落ちた。消費増税に加え、今回のコロナ禍で大幅に売上を落としている。消費環境の変化を考えると今後、盛り返して復帰することは難しそうだ。

イズミはM&Aで成長保持

 既存業態でも成長企業はないわけではない。イズミは九州での売上高を01年2月期の800億円から06年1,372億円、11年2,003億円、16年2,373億円、20年2,603億円と着実に増やし、順位も01年10位だったが20年はイオン九州を抜いて3位に上昇した。売上には「ゆめタウン」のテナントが含まれるため直営に限ると6割程度でイオン九州より少ない。とはいえ、ゆめタウンの出店が難しくなるなかでユアーズやスーパー大栄などの地方スーパーのM&Aと、SMへの進出で成長力を保持した。

 旧・マックスバリュ九州は03年9月、イオン系スーパー3社の合併で発足しSMでは後発だったが、積極的な店舗拡大と24時間営業を武器に業績を拡大、20年2月期は1,850億円と8位を占めた。06年からの成長率は2.1倍。9月、イオングループの全国的な企業再編の一環でイオン九州と合併した。

 21年はコロナ禍で業態間・企業間の明暗がわかれる。巣ごもり消費の恩恵を受けるSMとDS、ドラッグストアが売上を伸ばすのに対し、総合スーパーと百貨店は外出自粛の影響を受け厳しい。ただコロナはあくまで一過性。コロナ後には経営戦略の巧緻で企業間格差が付く時代になる。

(つづく)

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