【熊本】九州発のコロナワクチン開発へ~熊本市のKMバイオ
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不活化ワクチンの治験は国内初
明治ホールディングス傘下のKMバイオロジクス(株)(熊本市)が、新型コロナウイルス感染症に対する予防ワクチンの第Ⅰ相と第Ⅱ相の臨床試験(治験)を、3月中に国内の複数の医療機関で始める見通しだ。KMバイオロジクスは厚労省の(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)に治験計画を届け出。PMDAが安全性などを調べる「30日審査」を経て厚労省の承認を待ち、KMバイオロジクスが医療機関に治験を依頼する。
ワクチンは、新型コロナウイルス株をアフリカミドリザル腎細胞由来のベロ細胞で培養(増殖)。その後、培養させたウイルスをホルマリンなどで不活化(感染性を喪失)させて精製する。インフルエンザワクチンなどでお馴染みの「不活化ワクチン」と呼ばれるタイプ。同タイプのコロナワクチンの治験は国内初。
治験計画などによると、国内の複数の医療機関で健康な少数の成人を募り、安全性と有効性を調べる第Ⅰ相と第Ⅱ相の治験を並行して実施。その後、2022年3月末までに多数の被験者を対象にする最終段階の第Ⅲ治験に移行する。ただし、国内の感染状況次第では、海外の被験者も追加する。
コロナワクチンは2回接種を想定。23年度中の上市(発売)を目指しており、同社菊池研究所(熊本県菊池市)にある新型インフルエンザワクチン用既存製造施設を改造し、コロナワクチン原液を生産する。半年間で3,500万回分(1,750万人分)の量産体制を22年3月までに確立する。
国内接種スタートのワクチンは「mRNA」タイプ
KMバイオロジクスは20年5月、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)の創薬支援推進事業に採択され、国立感染症研究所、東京大学医科学研究所、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所と協業して新型コロナに対する不活化ワクチンを開発、実用化を目指すと発表。これまで非臨床試験(薬候補物質の有効性、安全性、毒性などを調べる試験)で、ワクチン接種で起こる可能性がある「抗体依存性感染増強(ADE)」現象などを評価してきた。ADEは、ウイルスから体を守るはずの抗体が、ワクチン接種によって免疫細胞などへのウイルスの感染を促進、症状を悪化させる副反応。
国内では現在、米ファイザー社製の「mRNA(メッセンジャーRNA)」というタイプのコロナワクチンを使い、医療従事者への先行接種が始まったばかり。厚労省で承認審査中の英アストラゼネカ社製のコロナワクチンも「ウイルスベクターワクチン」というタイプ。どちらのタイプも、コロナウイルスの遺伝情報の一部をワクチン接種して体内でウイルスの一部がつくられ、免疫ができる。
このうちmRNAワクチンは、壊れやすい有効成分「mRNA」を脂質粒子で包み込んでいるため、マイナス70℃前後の超低温下で固定して管理する必要がある。一方、既に国外で流通する中国製の不活化コロナワクチンは通常の冷蔵庫の温度で保管可能という。
【南里 秀之】
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