2024年12月21日( 土 )

韓国ネット通販クーパン、米証券取引所への上場申請を発表(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 韓国ネット通販「クーパン」は12日、米国ニューヨーク証券取引所に上場申請したことを発表した。米国の『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、クーパンの上場後の企業価値は、500億ドルに達するだろうと予測した。もし、そのような企業価値が実現されれば、海外企業による同証券取引所でのIPOとしては、2014年の中国のアリババ・グループ・ホールディングについで最大規模となるという。

   韓国人は食料品、日用品、化粧品、ファッションなど、生活に必要なほぼすべてのものを、ネットで買っている。韓国の小売におけるEC化率は12%を超え、世界でも3本の指に入るほど、韓国ではネット通販が日常化している。

 「韓国のアマゾン」と呼ばれるほどに成長した「クーパン」は、ロケット配送というサービスを導入し、韓国で急激に利用者を伸ばした。ロケット配送とは、夜の午後12時まで注文をすれば、翌日には注文した品物が届く便利なサービスである。

 「クーパンなしでは生活が成り立たない」はという冗談が出るほど、クーパンは韓国人の日常生活に深く浸透しており、むしろコロナによって恩恵を受けている。一方、売上高が拡大しているにもかかわらず、依然として赤字が続くクーパンの将来展望については議論がわかれていた。

 しかし、クーパンは、韓国の第1号のユニコーン企業となり、その後も成長を続けている。今では、会員数が2,500万人以上となり、全国102カ所に物流拠点を有した韓国最大のEコマース企業となった。

ニューヨーク証券取引所に上場申請

 クーパンが米国証券取引所への上場を選んだ理由としては、ニューヨーク証券市場は全世界の投資資金の70%が集まるので、大規模な投資を誘致するには韓国より米国で上場する方が有利という判断が働いたようだ。

 加えて、米国には経営権を防御する手段である優先議決権という制度があるので、米国を選んだようだ。優先議決権とは、1株当たり29倍の議決権を行使できる株を発行できることだ。クーパンの創業者のキム・ボムソク議長が2%の株をもっているだけで、58%の議決権を行使できるので、経営権に関して懸念せずに安定的な経営ができる制度である。クーパンはソフトバンクグループ(以下、ソフトバンクG)から投資を受けて以降、追加投資がなかったので、上場が唯一の突破口になるだろうと言われていた。

クーパンの歩み

 クーパンがこれほど果敢な投資を実行し、成長できた背景にはソフトバンクGからの投資の誘致を成功したことがある。ソフトバンクGから出資を受けたことで、クーパンは有名となり、韓国でも注目が集まっていた。

 ソフトバンクGは15年に10億ドルを出資し、ソフトバンクG傘下の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」が18年に20億ドルを出資している。ソフトバンク・ビジョン・ファンドはクーパンの筆頭株主で37%の株をもっている。今回、クーパンが上場をはたすと、ソフトバンクGにも大きな利益が発生することになる。

 毎年、売上高を伸ばしているクーパンだが、18年には営業損失額1兆970億ウォンを計上し、最大損失を記録した後、19年には営業損失は7,205億ウォンに減少した。20年の総売上高は前年比91%増の119億7,000万ドルで、最終損失は前年の7,205億ウォンから5,800億ウォンに縮小した。クーパンは赤字が膨らむなかで事業を縮小するのではなく、さらに拡大していく方針を選んだことが売上高の増大と財務状況の改善につながった。

(つづく)

(後)

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