【BIS論壇 No.342】世界平和の基盤としての経済
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NetIB‐Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会会長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
今回は2021年2月24日の記事を紹介。(1)コロナ禍での革命的なパラダイムシフト
2月22日付の『日経新聞』朝刊には、6段抜きのトップ記事で「世界裂く『K字の傷』」と題し、2035年には「中国+香港」の名目GDPが「米国+日本」を逆転するとの衝撃的な特集が掲載された。世界の経済、社会に甚大な影響を与えつつあるコロナ禍により、世界は革命的なパラダイムシフト(社会基盤の変容)を迫られている。
戦後のブレトン・ウッズ体制(世界銀行、IMF、GATTの創設)を超える世界規模の社会変革が必要となっている。それには、世界政治の下部機構である経済システムの再構築、加えて、それに基づく新たな平和の構築が必須だ。
これまでの経済利益の追求1点張りであった資本主義―大量生産、大量消費、大量廃棄、大量エネルギー消費、環境破壊に大きな変革が必要だ。
そのためには環境保護を中心として、国連が30年を目標に推進するSDGs(持続可能な開発目標)に協力し、21世紀のアジアの世紀の到来に向けて、倫理、道徳を中核として万民の幸福を追求する新たな平和の構築が求められている。ユーラシア、シルクロードの文化や、宗教、経済、平和交流を視野に入れて、コロナ後の世界経済において平和を構築する構想を世界に向けて日本から発信することは意義がある。
コロナ後に重要性を増すアジア、ユーラシア、さらにはアフリカを中心に展開する中国主導の広域経済圏構想「一帯一路」、ASEANを中心とする「RCEP(東アジア地域包括的経済連携)」「TPP(環太平洋経済連携)」などの経済を基盤とする新たな世界平和の構築において、とくにアジア、ユーラシアの重要性を強調したい。
(2)21世紀の経済発展の中心はアジア、ユーラシアへ移動
ユーラシア、アフリカの人類の歴史は、チグリス・ユーフラテス川、ナイル川、インダス川、黄河流域で発展してきた。シュメール文明、ギリシャ文明、ローマ文明、エジプト文明、インダス文明、黄河文明を経て、中国では秦、隋、唐、さらにユ-ラシア大陸に世界最大の帝国を築いたモンゴルが覇を競った。海のシルクロ-ドでは、明の鄭和の大商船隊がアフリカ、アラブ、アジアにおける貿易通商で活躍した。
英国の経済学者、アンガス・マディソン氏によると、1820年代には中国、インドのGDPは世界の60%を占めるほどに発展したという。しかし18世紀後半になると、世界経済発展の軸は、織機、機関車、船舶など内燃機関の発明で産業革命を達成した英国、20世紀半ばには、世界のGDPの50%を占める自動車、石油産業、航空機、情報通信産業を主導する米国へ移った。
しかし、IoT、AI、5G、ロボット、電気自動車(EV)、デジタル、医療、バイオなどを主力産業とする21世紀の経済発展の中心は、アジア、中国、ユーラシアへ移動し、パクス・アシアナ後の22世紀にはアフロ・ユーラシアの時代が到来する。アフロ・ユーラシア大陸は、陸地の60%(約8,500万Km2)、全人類の85%、57億人を占める(2006年)。アジア・ユーラシアは21世紀、アフリカは22世紀に最大の発展をするとみられている。筆者は、アフロ・ユーラシアから将来の経済発展、平和希求を目指すべきだと考えている。
<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)関連キーワード
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