東京五輪・パラリンピック組織委員会人事とスポーツ界
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森喜朗元首相が「女性への発言」によって、東京五輪・パラリンピック組織委員会会長を辞任する事態に発展した一連の騒動。
森氏は、過去にもさまざまな発言で物議を醸したことがあった。発言する内容については、一国の首相経験者であり、その影響力を考慮して言葉を選ぶ必要があっただろう。他方、タフネゴシエーターとしての力は本物で、「どんな困難な問題でも遅くとも翌日には『何も心配はいらない』と、すべてがクリアになっていました」という声が政界やスポーツ業界から聞こえてくる。さらに、どんなに小さなことでも耳を傾けてくれたという。直近では、2019年ラグビーW杯の招致成功の立役者であることに異論はない。
森氏が同組織委員会会長を辞任後、後任としてすぐに名前が上がった川淵三郎氏。森氏とは早大つながりで川淵氏は1つ年上だが、川淵氏は2浪して入学しているため、学年では森氏が「先輩」となる。
川淵氏は、日本サッカー界の発展の功労者でキングメーカー。国内スポーツ界のご意見番としての地位も確立させている。本人もサッカー日本代表として1964年東京オリンピックに出場。また、Jリーグ創設の貢献者、なでしこジャパン名称の生みの親として知られている。
古河電気工業時代はビジネスマンとしての才覚を発揮し、古河グループの一角を占める古河産業の取締役まで登り詰めた。他方、ある高校サッカー関係者の話で、高校およびユース強化策を提言した際に「最初は上から目線での横柄な態度であった」というように、権威主義的な志向があったともいわれている。日本代表監督をめぐって、フライング発言をしたこともある。今回もフライングしてしまった感が強い。
日本柔道最強の男として名高い山下泰裕氏。現在JOC会長および全柔連会長の要職に就く。ロサンゼルス五輪の男子無差別級金メダリストなど、輝かしい選手としてのキャリアを積んだ。現役引退後は後進指導にあたりながら、柔道界とスポーツ界の発展に寄与し、現在に至る。実直でフェアーな人柄は、業界内外からも信頼が厚く、実力・人格とも高く評価されている。
山下氏も森氏の後任者として名前が挙がったものの、全柔連の職員によるパワーハラスメント問題が発覚し、森氏の後任はおろか全柔連の会長職も厳しくなってきた。結局、森氏の後任として、橋本聖子参議院議員が就任し落着した。
筆者には、森氏・川淵氏・山下氏をめぐる一連の騒動は茶番としか思えない。加えて、地上波テレビと新聞などオールドメディアの同調圧力的な報道に対して、我が国の行末が憂慮される。森氏の女性への発言については、少々過ぎた表現があったにせよ、全文を読むと世間が言うように女性を蔑視しているとは思えない。川淵氏についても、少し配慮が足りなかったとはいえ、集中砲火を浴びることであったのかという疑問がある。山下氏も懐疑的なマネジメント力であったにせよ、糾弾することには違和感を覚える。
これらの茶番の陰で、ひたむきに鍛錬を続けるアスリートたちがいることを忘れてはならない。あるスポーツ関係者は「現役アスリートたちは、JOCなど権力者に睨まれるのが嫌だから発言しないのだろう」と話していたが、アスリートはそれほど暇ではない。最高の成果を上げるために日夜鍛錬し続けている。人生そのものを賭けている。そもそも組織の人事などに興味もないだろう。
一連の騒動は、スポーツ界特有の派閥が絡んだ恨み・妬みの憂さ晴らしをするために利用されたと筆者は推察する。東京五輪開催の可能性については現在のところ不明だ。どのような結果になっても、オールドメディアと批判するだけの人たちは、再び一斉に「けしからん!」と大キャンペーンを放つだろう。もっと建設的な意見を出してもらいたいと思う。
【河原 清明】
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