福島第一原発事故、東電の賠償額10兆円超える
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賠償の支払額は今後も増加
東日本大震災の福島第一原発事故による東京電力(株)の原子力損害賠償支払額の累計は、2021年度に10兆円を超える見通しとなったことがわかった。この累計には除染費用が含まれる。原発事故の避難にともなう慰謝料や営業損害などへの支払総額は、2月26日時点で9兆7,047億円に上る。
福島第一原発事故の避難指示が出た地域の住民などによる東電への賠償を求める集団訴訟が相次いでおり、今後も賠償の支払額が増加する可能性は高い。
政府補償と原子力損害賠償交付金
原子力損害補償の賠償金額の合計と件数(2月26日時点)は、個人が約3兆2,057億円(約100万5,000件)、個人の自主的避難などによる損害が約3,537億円(約129万5,000件)、法人・個人事業主などが約5兆9,918億円(約44万6,000件)となっている(仮払補償金の約1,525億円を除く)。
下記は、賠償金の累計支払額の推移だ。21年2月までの合計9兆7, 338億円の金額のうち、政府補償は15年3月の1,889億円、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(支援機構法)による「原子力損害賠償・廃炉等支援機構(支援機構)」の原子力損害賠償交付金などによる11年11月~21年2月の資金交付は9兆5,449億円となっている。
損害賠償の法律上の時効の問題
11年3月に発生した福島第一原発事故では、原損害補償に関して13年12月に原賠時効特例法が成立し、損害賠償の時効が3年間から10年間に延長された。今年3月には事故から10年が経過し、3月以降に法律上の時効を迎える。
法律によると、「損害及び加害者を知った時から10年」、または「損害が生じた時から20年」のいずれかの早い方が経過すると、時効によって消滅するとされている。
東京電力は、時効の完成をもって一律に賠償請求を断ることは考えておらず、時効完成後も「最後の1人まで賠償貫徹」という考え方の下、消滅時効について柔軟に対応すると発表している。その一方で、賠償基準を定めた国の指針では、対象区域の避難慰謝料は1人月額10万円としており、住民にとって十分な損害賠償であるかどうかについては大きな疑問が残る。加えて、損害賠償が時効となるにあたり、今後の法律上の扱いに注目が集まっている。
また、事故から長期間経過した後に、それまで予想されていなかった損害が見つかる可能性もある。事故による損害を受けていることがその時点ではわからなくても、法律では「損害が生じた時から20年」が時効とされている点も懸念されている。20年が過ぎた後の補償については、法律上では補償されていないためだ。原発事故の処理もまだ続いているが、損害賠償の終わりとなる時期も見通しが立っていない。
【石井 ゆかり】
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