【コロナで明暗企業(2)】スシローグローバルホールディングスの快進撃~牛丼の吉野家から持ち帰りすしの京樽を買収する「プロ経営者」水留浩一氏(後)
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「捨てる神あれば拾う神あり」。このことわざの意味は、一方で見捨てる人がいるかと思うと、他方で救ってくる人がいる。世間は広く、世の中はさまざまだから、くよくよすることはない(『広辞苑』)。
新型コロナウイルスの影響を強烈に受けた外食業界は、明暗がわかれた。回転ずしの(株)スシローグローバルホールディングスが、牛丼の(株)吉野家ホールディングスから持ち帰りすしの(株)京樽を買収する。「捨てる神あれば、拾う神あり」の図だ。台湾茶専門店「シェアティー」は「お茶のスタバ」を目指す
スシローGHDは2020年11月、事業領域の拡大とグローバル展開を加速し、さらなる成長を進めるために、新社名に変更すると発表した。新社名は(株)FOOD&LIFE COMPANIES。日々の食をおいしくすることで、お客の生活や人生まで豊かにする夢を実現する仲間という意味を込めた。21年4月1日から社名を変更する。回転すし「スシロー」のブランド名は変えない。
スシローグループは1984年の創業以来、回転すし「スシロー」の国内展開を進め、回転すし業界において第1位の売上を達成するまでに成長した。また、11年から海外展開を開始し、現在では4つのエリアへ進出をはたした。
スシローGHDはカフェ事業に参入した。20年8月、台湾茶専門店「Sharetea(シェアティー)」を新宿マルイ(東京・新宿)の本館に開いた。
シェアティージャパンでは「ちょっと上質を、毎日を贅沢に」をコンセプトに、本格的な台湾茶を手ごろな価格で提供するという。用意するドリンクメニューはストレートティーおよびティーラテが各5種類。フルーツティーが3種類。タピオカ入りはタピオカミルクティー1種類だけだ。価格設定は看板商品の「定番台湾茶」が350円(Mサイズ、税抜き) から。シェアティーは台湾発のカフェで、世界で500店舗以上を展開している。
スシローGHDは20年2月、グループの(株)スシロークリエイティブダイニング(大阪府吹田市)が70%、台湾企業が30%出資する合弁会社(株)Sharetea Japan(東京都中央区)を設立した。
社長は、アパレル大手ワールドで10代女子向けブランド「ピンクラテ」の事業トップを務めた経験をもつ小林哲氏。かつてワールドの専務だったスシローGHD社長・水留浩一氏がスカウトし、スシローGHD初のカフェ業態の責任者に就任した。顧客の年齢層が比較的若いカフェ業態では、ファッション感覚が求められることから小林氏に白羽の矢が立った。
「シェアティーは全国500店舗を目指し、ティー版のスターバックスコーヒーを目指す」と小林氏は意気込みを語っている。
台湾茶といえば、19年に日本市場を席巻した「タピオカブーム」が記憶に新しい。台湾発のカフェチェーン「ゴンチャ(Gong cha)」や「春水堂」には、タピオカミルクティーを求め、大勢の若い女性が列をなす光景が多く見られた。スシローは、回転すしにつぐブランドとしてシェアティーを選んだ。先行するゴンチャを追いかける。
台湾茶店ゴンチャジャパントップに就いた「プロ経営者」原田泳幸氏は失脚
19年12月、台湾発のティー専門店「ゴンチャ」を運営する(株)ゴンチャジャパン(東京・渋谷区)の会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)に原田泳幸氏が就任した。
原田氏は1997年にアップルコンピュータジャパン(株)(現・アップルジャパン(株))社長。米マクドナルドにヘッドハンティングされて、2004年に日本マクドナルドホールディングス(株)(以下、日本マクドナルドHD)に送り込まれ、会長兼社長兼CEOとして全権を握り、日本マクドナルドHDの再生に辣腕を振るった。退任後は、(株)ベネッセホールディングスにスカウトされ、14年会長兼社長に就いた。だが、16年に不本意なかたちで退任した。
「プロ経営者」は、今度、台湾茶のゴンチャジャパンのトップに招かれた。ゴンチャは06年に台湾で創業。日本には15年に東京・渋谷に国内1号店をオープンし、近年のタピオカブームの先駆けとなった。
原田氏が社長に就いたとき、ゴンチャは51店舗だった。早期に400店舗体制を目指すと宣言した。目指すは台湾茶のスタバ版だ。「プロ経営者」と呼ばれる原田氏と水留氏が、ともに台湾茶のスタバ版を目指すと宣言。両者の対決は、大きな話題になった。しかし、対決は思わぬかたちで消滅した。
ゴンチャジャパンは2月24日、原田泳幸会長兼最高経営責任者(CEO)が辞任したと発表した。理由は「一身上の都合」。後任は前田仁志最高財務責任者(CFO)が昇格した。
原田氏は2月5日、東京都渋谷区の自宅で妻のシンガソングライター・谷村友美さんを、ゴルフ器具で複数回殴り、右腕や太ももなどに全治10日のケガをさせたとして逮捕された。傷害罪で起訴され、19日に東京簡裁から罰金30万円の略式命令を受けた。これが「一身上の都合」による辞任の理由だ。
京樽を買収するなど快進撃を続ける水留氏と、ドメスティックバイオレンス(家庭内暴力)で経済界の表舞台から姿を消した原田氏。「プロ経営者」の両雄は明暗を分けた。
(了)
【森村 和男】
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