【IR福岡誘致開発特別連載28】IR長崎の致命傷はコロナ禍問題と海外カジノ観光客規制
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中国人富裕層の国外カジノ観光客規制
前回の連載で、筆者はなぜ「中国人富裕層の国外カジノ観光客禁止」規制がIR長崎にとって致命傷になるのかを具体的に説明した。今回は、それを裏付ける昨春の長崎県平田研副知事のインタビューを踏まえて、さらに詳しく解説しよう。
このインタビューは、本件IRに関する国際的な専門誌を発行するIAG Japan(英国系の航空会社を主体としたマカオ最大のInside Asian Gamingの子会社)が報じたもので、現在もインターネット上で公開されている。
昨春、本件の長崎県行政における実務上のトップである、現在の長崎県副知事の平田研氏(元国土交通省土地・建設産業局建設業課長)を上記 AIGのCEOのアンドリュー・スコット氏がリモートインタビューしている。これが大変、興味深い内容なのだ。
平田副知事は、IRのプロである司会者スコット氏の質問に対して、誠に真摯な態度で受け答えをしている。当該地ハウステンボスを中心に半径1,500km(日本列島の約半分という大規模な範囲)をIR長崎の市場としており、「国内外の観光客の集客」を主体とした計画だと明確に言い切っている。
現在の長崎県内の人口は約142万人(五島列島、壱岐、対馬なども含む)であるが、10年後には少子化などの理由で120万人を切る恐れがあるため、地元経済、雇用などの衰退を観光客の誘致で補い、改善することがIR誘致の主旨であるとしている。
ゆえに、長崎市、佐世保市の後背地人口は少なく、前述の通り激減の一途であり、本件IR誘致開発の要は国内外の観光客誘致の可否にすべて懸かっていると言っているのだ。これは、IR和歌山も同様であり、一昨年に撤退した北海道苫小牧市も同じ状況なのだ。
また、一方では、司会者スコット氏は、福岡市や誘致を一時検討していた北九州市の大都市圏は、長崎市、佐世保市の都市圏とは比較にならないほど市場規模が大きく、海外の投資企業も強い興味をもっているため、本件IR誘致開発の候補地になる可能性があるのではないかと平田副知事に尋ねた。それに対し、平田副知事は、福岡県行政や九州一円の経済界の意向としてはIR長崎にすでに一本化されており、他の候補地が新たに出てくる可能性はないとして、事実ではない表向きの回答に終始している。
事実上は、福岡市も含めた九州一円に「ほかの候補地が出ない場合には」という条件が付いた上での各関係機関の意向としては正しいものだ。
海外観光客に頼るIR長崎
前回も説明したように、今回の世界的なコロナ禍により、国内外の観光客主体の誘致計画がいかに危険で、リスクが高いかを露呈した。さらに、ここにきて、中国共産党の習近平政権による「中国人富裕層の国外カジノ観光客禁止」規制が報じられた。筆者が重ねて説明してきた通りの厳しい結果だ。
仮に、コロナ収束後であっても、福岡市圏を中心とする九州一円の海外観光客誘致予測は、全国3,700万人(2026年予測)の10%を占める370万人程度にとどまり、そのうちの250万人が中国からの観光客という予測値である。
そのような状況で、長崎・佐世保のハウステンボスまで多くの人々がわざわざ行くだろうか。いくら楽観的な予測であっても、それは火を見るより明らかである。観光客数は過去の実績としてたった一時期、300万人を超えただけであり、現状は100万人を大きく下回っている。過去に同様の失敗で2度の閉鎖の危機に直面したが、それを巨額な損失計上で逃れているという歴史がある。
これに加えて、辻褄の合わないことであるが、当時の譲渡継承費用として資本総額15億円と、各種の公租公課の長期減免措置を実施した(株)エイチ・アイ・エスの隣接土地の購入費用200億円に加えて、新たな交通インフラ整備費用140億円が投資家の負担となる。
平田副知事は、本件IRへの投資家負担は、他の候補地とは異なる"コンパクト"なものであり、その投資総額は4,500~3,500億円程度と公言している。当時のHISが引き継いだハウステンボスはわずか15億円の投資であり、「中国人富裕層の国外カジノ観光客禁止」規制もあるなか、この巨額投資を行って採算が合うというのか。
これが長崎、佐世保行政の政治家と役人による「武士の商法」だとしても、誠に愚かなものであり、すでにこの問題がIR長崎にとって「致命傷」となるという答えは出ている。
このIR長崎のもとで"九州は1つ"という概念があるのなら、いよいよ福岡市行政と福岡財界の出番である。(一社)福岡青年会議所(JCI福岡)を筆頭にした若い人が集まる組織は、本件IR誘致事業の事前の準備を用意周到にしている。
従って、IR福岡の各関係機関の組織の人々は、IR誘致開発に向けてより積極的に行動し、このようなIR長崎の事情を理由にして誘致開発しない、という判断をする「自己保全」は一切すべきではない。
【青木 義彦】
法人名
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