社会的責任をはたし信用を積み上げる、リネン業界の老舗
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玉屋リネンサービス(株)
リネン業界のパイオニア的存在
玉屋リネンサービス(株)は、福岡におけるリネンサプライ業界のパイオニア的存在として、ホテルや病院を衛生面からサポートしてきた。
リネンサプライ業は、1962年に病院寝具設備・洗濯が外部委託できるようになってから、クリーニングの新しい分野として誕生した。同社はその2年後の64年8月に日本基準寝具(株)として設立されている。68年には第一工場を建設して本社を現在地に移転、社名を玉屋基準寝具(株)に変更。翌69年2月には(有)玉屋ランドリーから資本および営業権を譲り受け、リネンサプライ部門・クリーニング部門を新設した。
リネンサプライは、事業者がリネン(麻などの織物全般)製品の在庫をもち、契約者に貸し出すサービスで、貸し出したリネン類は、定期的に回収・洗濯・仕上げをして納品する。サービスの利用者は、リネンの購入、洗濯、仕上げ、補修、保管のための設備投資や人材確保を必要としないことから、ホテルや病院などで需要が拡大した。
リネンサプライを提供する事業者として同社が大切にしているのは、「品質の向上」「安定供給」「サービスの充実」である。品質の向上については、管理者の国家資格取得業務(クリーニング師)、工場施設・機械設備などを適切に配置し、衛生的で適正な処理を徹底している。さらに、高品質のリネンを安定供給するため、従業員の増員や大型の機械設備を導入するなど、企業努力も重ねてきた。リネンを配送する際、ホテル側の業務負担を軽くするきめ細かな対応を心がけながら、配送時間の短縮も実現するサービスは高く評価されている。
こうした企業努力が実を結び、「ヒルトン福岡シーホーク」「ホテルオークラ福岡」「ホテル日航福岡」「西鉄グランドホテル」や「福岡山王病院」「福岡市民病院」などといった福岡でも著名なホテルや病院など大型施設から業務を受託していることからも、信用度の高さがうかがえる。近年は、福岡で国際会議や大型イベントが開催されることが増え、インバウンドも大きく伸びたことでホテル開業が相次いだため、同社としてもその対応に追われてきた。1日の取扱量は45tから50tに上り、残業などで対応しても追いつかず、昨年夏には大型の洗濯機と仕上げのロールアイロンなどを導入して生産量を20%アップするなど、対応力をさらに強化した。
コロナで状況が一変
ところが、2020年に入って状況が一変した。新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、コンサートやプロ野球、サッカーなどのイベントなどが中止され、人の移動の制限などによって、観光客だけでなく出張などビジネスでのホテル利用が激減したのだ。一時的に休業する施設も出て、福岡の観光産業は大きなダメージを受けている。医療機関でも、感染者受け入れのために入院患者数を制限する動きが出た。福岡都市圏の施設を主要な取引先としている同社も、当然ながら影響を受けた。
代表の田中丸昌宏氏は、「緊急事態宣言が発出されて以降、出荷量が減りました。7月ごろには底を打って持ち直す傾向がみられましたが、8月に入って福岡県内の感染者数が増加したことで、再び出荷数が減少に転じました。一時期は、工場の稼働が週1日だけということもありました。回復はしてきましたが、9月でも稼働は週3日程度です」と、厳しい環境が続く現状を語る。
コロナ禍で景気の先行きが見えないなかで田中丸氏がもっとも重視してきたのは、企業としての社会的責任をはたすことだった。まず、社内で感染者を出さないこと。感染者が出れば工場を止めることにもなり、取引先のホテルや病院に迷惑をかける。それだけは避けなければならないと、感染対策を徹底した。朝礼の中止や時差出勤も導入した。工場内は日頃から間隔を空けて作業しているが、昼時は食堂に人が集まるので食事の時間を分け、座席の間隔を空けるなど徹底して密状態をなくした。その甲斐あって、1人の感染者も出すことなく操業を続けている。
雇用を守る
次に重視したのは、雇用を守ること。コロナ禍で全国的に失業者が増えるなか、田中丸氏は、「雇用を守ることは、企業の社会的な責任」であると、雇用調整助成金を活用しながら100%の給与を保証し、雇用の維持に努めている。ボーナスも満額とはいかないが、支給した。それでも田中丸氏は、「コロナ前は、ほぼ毎日のように残業や休日出勤をしていた人にとって、工場の稼働の落ち込みは、その分の収入減となります。この状態がいつまで続くのか先が見えないだけに、積極的な手が打てず経営者としては心苦しい」という。
回復の兆しも徐々にみえてきた。新型コロナがきっかけとなり、県内や周辺をめぐるマイクロツーリズムという考え方も広がり、新たな需要の発掘も見込める。GoToトラベルキャンペーンも始まった。地域によっては観光客がかなり戻っていることから、九州、福岡でもキャンペーンの効果が期待されている。「人の動きが出てくれば宿泊需要も回復します。そのときのための体制は整っている」と力を込める。
今回のコロナ禍による損失を取り戻すには数年を要すというが、長年築き上げてきた企業基盤と信用は揺るがない。かつて、日本三大商人に数えられ、「三方よし」という考え方で有名な近江商人は「商売の心得十訓」のなかで、「資金の少なきを憂うなかれ、信用の足らざるを憂うべし」と著している。企業活動を継続していくためには売上を上げて利益を出し、そのなかから投資をして事業拡大、継続を図っていく。そうした企業活動を支える根本が信用であると説く。
コロナ禍で社会的使命を追求した同社の信頼はさらに高まった。今回の逆境は、同社をこれまで以上に強くしたといえるだろう。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:田中丸 昌宏
所在地:福岡市博多区博多駅南4-6-3
設 立:1964年8月
資本金:5,000万円
TEL:092-431-1313
URL:https://www.tamayalinen.co.jp
<プロフィール>
田中丸 昌宏(たなかまる まさひろ)
1960年2月生まれ、大阪府出身。近畿大学農学部を卒業後、住友林業に入社。2000年に玉屋リネンサービス(株)の常務に就任。03年、同社代表取締役社長に就任。法人名
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