2024年12月22日( 日 )

同業他社に先駆けた情報化の推進で社内を一体化、コロナ禍にも柔軟に対応

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(株)電究社

業歴37年の電気設備工事企業 トップはデザイナーの経歴をもつ異色の存在

 (株)電究社は、1983年に住宅、ビル、店舗を中心に手がける電気設備工事業として福岡市に誕生。同社が目指すのは、暮らしになくてはならない電気エネルギーを快適かつ安心して使えるようにする環境づくりだ。豊富な経験とたしかな技術により、電気設備工事の設計・施工・メンテナンスの多様なニーズに応え、誠実に一歩一歩着実に歩んできた歴史をもつ。

 同社が手がけるビル・マンション・店舗商業施設などの電気設備工事・設計施工とは、電力供給会社からの一次側電力引き込みおよび建物内部の二次側配線工事を指す。分電盤や照明器具および配線器具を取り付け、それらに電源を供給する配管や配線をニーズに合わせて施工していくというものだ。

 「当たり前の話ですが、今の時代、電気がなければ私たちの生活はままなりません。すべてのさまざまな機器が電気によって動いています。その機器を24時間安心して使えて当然にするのが当社の仕事です」。そう語る現在のトップは、4代目となる直塚和知氏44歳。父親から事業を受け継ぎ今年で6年になるが、その経歴は少しばかり異色である。直塚氏は高校と大学でデザインを学び、卒業後はデザイン事務所や印刷会社でグラフィックデザイナーとして活躍した。同社に入ったのは、父親である先代の誘いがあったからだが、現在の立場になるとは思ってもみなかったという。なぜなら同社はいわゆる同族会社ではない。

父親の引退を契機に現場から経営へ まず取り組んだのは社内の情報化推進

 「デザインの世界に飛び込んだのはモノづくりが好きだからでした。正直、電気設備工事はまったく違う世界だと思っていました。でも、父の話から『電気設備工事もモノづくりとして共通するものがあるかもしれない』と、そう思ったんですね」。

 当時のデザイン業界といえば、パソコンやネットの普及で大きく様変わりしていたころだ。ちょうど良い機会かもしれない。飛び込むなら今だ―。そうした思いが直塚氏を突き動かす。しかし、やってみると電気設備工事は想像を超えて奥深かった。現場で汗を流すうちに、仕事に対する興味は日増しに強くなったという。目標は同じでもやり方は人によって千差万別。技術者次第でコストも違ってくるし、顧客の満足度も違ってくる。父親の言ったモノづくりという言葉の意味がわかるにつれ、さらにやりがいが増した。

 それから約10年。父親の引退を契機に、直塚氏は現場から経営へと立ち位置を変えた。まず取り組んだのは社内情報の在り方を変えることだ。

 「情報を共有化することに取り組みました。会社の目標を社員たちに強く意識させること、各担当者の現場状況をみんなが把握していること、原価意識をしっかりもたせること、そして私が彼らの本音をしっかり吸い上げること。定期面談では、仕事のことはもちろんプライベートな相談に乗ることもしばしばです」。

 会社が自分を見てくれている。そんな社員たちの安心感が、やがて社内全体の一体感へと変わる。直塚氏の粘り強さが試された時でもあった。

社員たちの一体感が会社全体のムードを刷新 負債から抜け出しV字回復へ

社員が1つにまとまることで業績は格段にアップした

 経営者として視野を広げるうち、業績に優れる会社が自分たちと根本的なところで違うことに気づいたことも大きかった。それからは現在に至るまで試行錯誤の連続だが、どんな課題にも解決策は必ずある。そう信じて突き進んできた直塚氏。

 当初、会社にはそれなりの負債があり油断ならない状況だったが、そこからV字回復へと転じた背景には、クリエイティブの世界で培った課題を見極める目、解決するための発想力があったことはいうまでもない。

 さて、電究社の業務は電気設備工事とひとくちにいわれるが、実は多岐に渡る。同業他社が専門化することでマンション、店舗に領域を限定しがちな業界において、同社のように幅広く仕事をこなせるところは稀だ。社員の配置を合理的に考え、専門スタッフを効率良く配置しているからできるわけだが、取引先から見れば頼れる存在であり、同社としては取引先が偏らず、社会情勢や変化する施工ニーズに柔軟に対応していくことができる。

 近年の業績は4億5,000万円から5億円超の売上で安定的に推移しており、社長就任時の負債もすべて消えたという。結果、企業の健康度をはかる指標である自己資本比率も向上し、今は極めて理想的な状態だ。

働き方改革で進めたデジタル化 緊急事態宣言のテレワーク移行もスムーズに

 そして情報化のもう1つの柱が業務のデジタル化だ。働き方改革施行の前から残業を減らすことを目指して取り組んでいたなか、全スタッフにモバイル端末をもたせることで、これまで二度・三度手間になっていた作業を端末上でまとめて共有化し、情報の蓄積、作業のスピード化を強力に推進してきた。デジタル化を早くから進めてきたから、コロナ禍で緊急事態宣言が出た直後からすぐにテレワークに移行できたという。事務管理業務はもちろん、現場管理者による打ち合わせ、設計、見積もりに至るまでほぼ支障なく行えたことは、これまでの取り組みが大いに功を奏した。

 とはいえ、各種の店舗や飲食店などが顧客となる同社にとって、コロナ禍が打撃となっていることは想像に難くない。直塚氏は現状を正確に分析し、「アフターコロナ」を見据えて力強く宣言する。

 「そもそも建設現場はアナログです。職人さんが手でモノをつくります。デジタル化ばかりが良いわけではなく、アナログにしかできない良い部分を使い分けることが重要です。今回の件で人と人が直接会って話をし、お互いの感覚を確認することができないもどかしさを改めて実感しました。ただ、私の考えを理解し実行してくれたスタッフのおかげで、これまでやってきたことが間違いでなかったと確認できたことは自信になりました。そしてこれから当社がどう変わっていくか。真価が試される時がきたと感じています」。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:直塚 和知
所在地:福岡市南区寺塚1-4-3
設 立:1983年9月
資本金:1,000万円
TEL:092-511-7773
URL:http://www.denkyusha.co.jp


<プロフィール>
直塚 和知
(なおつか かずとも)
1976年福岡市生まれ。近畿大学九州工学部産業デザイン科卒業。グラフィックデザイナーとしてデザイン事務所や印刷会社のデザイン室で働いた後、電究社に入社。現場経験を経て2014年に父親の後継として社長に就任。趣味はルアーフィッシング。海や川に繰り出すのが休日の過ごし方。

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