2024年11月21日( 木 )

「人」と「不動産」を軸に3つの挑戦 再生、アジア進出、マッチングアプリ・TRG

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(株)トリビュート

流動化して価値を高める トリビュートの不動産再生

トリビュートが発行している季刊誌
トリビュートが発行している季刊誌

 (株)トリビュートは創業以来、「不動産再生」に主眼を置いてきた。不動産再生とは、「空室が目立つ」「用途が立地に合っていない」「土地が狭小、不整形地」などの課題を解決し、流動化を促すことで不動産の市場価値を高めることを指す。

 木造アパートのリノベーションから繁華街のビル建替えまで、再生案件を数多く手がけるなかで、トリビュートには取引先からさまざまな相談が寄せられるようになったという。「駅前の土地を買いたい」「いくらなら売る」「ビルを建てる土地を買いたい」など、売買仲介の域を超えて、それぞれのプレイヤーをマッチングする機会も増えていった。近年はこのアレンジ業務を強化し、単に地権者などと交渉するだけでなく、市場動向やエリア特性を把握したうえで再生事業を進めてきた。

不動産コンサル戦略 「1担当10社」でより丁寧に

 福岡・東京に拠点を構える同社は、各スタッフが重点的に担当する顧客を10社設定することで、より丁寧なフォロー、ヒアリング、物件の選定などを行ってきた。

 また、物件情報の正確性が不動産取引の課題であると感じてきた同社は、売主から預かった約100件もの不動産情報を冊子にして季刊で発行。掲載されているのはすでに売主とつながった情報のため、買主や買主側の仲介を始めとする取引先から好評を得ている。「リスクはあるが有望」な不動産については、取得したうえで必要なバリューアップを施し、再販を行うこともあり、今年3月には福岡・天神と中洲の間に位置する西中洲エリア(福岡市中央区)で商業ビル「連スクエア&連ラウンド」を取得した。コロナ禍でのビル取得となったが、天神の奥座敷に例えられる西中洲という立地のポテンシャルを見込んでのことだ。

若く成長するアジアへ 21年にはマレーシア進出

連スクエア&連ラウンド
連スクエア&連ラウンド

 また、国内にとどまらず海外にも目を向け、トリビュートならではの正確な物件情報を投資家に提供し、日本とアジアのビジネスを活性化させてきた。海外の富裕層がもつ不動産投資ニーズを聞き取り、日本の不動産オーナーにそのニーズを情報提供し、双方をマッチングしてきた。このように、海外市場にも取り組んできた同社だが、さらに一段ギアを上げていくという。

 田中稔眞社長は、「成長しているアジアを見過ごすわけにはいきません。海外投資家に日本の不動産を売るだけでなく、その逆も手がけていきたい。片手間で進出するのではなく、社長である私が自ら現地で体感しなければ得られないチャンスがあるはずだと思い、マレーシアへの移住を決断しました」と話す。コロナ禍で海外渡航のハードルが高くなり、2020年に予定していた移住は21年に持ち越されたが、若く成長している国は不動産市場も成長する傾向にあるため、「確実にチャンスがある」(田中社長)と決意は揺るがない。

 同社では田中社長を始めとする創業メンバーだけでなく、未経験で入社した社員が力をつけてきたことで、新サービスへのチャレンジができるようになった。自由な社風を標榜する同社だが、経営理念である「人を大事に 人を笑顔に」から外れない限りは自主性を重視していることが社員の成長に結びついたのだろう。これまで未経験者の採用がメインだったが、組織ができ始めたことで採用も次のフェーズに入り、経験者採用に踏み切った。すでに大手不動産や再開発経験者などの採用に至ったという。

新機能、コロナ禍も追い風に TRG(トラジ)登録者数増加

 千に3つしかたしかなことがないという意味で、「千三屋(せんみつや)」と揶揄される不動産業界では、誰から情報を得るかが大きな意味をもつ。「誰か」というのは信用できる「誰か」(人)であり、信用とは実績だ。しかし、親しい間柄であっても互いのニーズはわからないのが現状だ。そのため、不動産売買取引においては、買主、買主の媒介業者、仲介業者、売主、売主の媒介業者が存在することが一般的だが、結果的に「お互い知っていた」というケースも少なくない。余計な媒介者が発生してしまったというわけだ。

 このような非効率を解決するため開発されたのが、プロのための不動産マッチングアプリ「TRG(トラジ)」だ。トラジに登録できるのは、宅建業者に限られる。実名、宅建許可番号、顔写真が必須だ。地域や会社名、店舗名でユーザーを検索でき、互いに「パートナー」になれば、1対1、グループ、登録物件ごとにチャット機能を使って情報交換できるようになる。物件情報の登録もでき、新機能「AI-OCR」でスピーディーに物件情報の生成も可能となる。さらに今後は、相互評価の導入など、登録アカウントの信頼性を高めるための強化が行われる予定だという。「都内を中心にテレワークが進んできたことで、TRGへの反響数、登録数が伸び始めました」(トリビュート)という声を聞く限り、コロナ禍も追い風になっているようだ。

 業者間取引において、インターネットと不動産の相性は決して良いとはいえない時代が続いてきた。プレイヤーとして不動産取引を手がけてきた同社だけに、物件ではなく、「人」を中心に据えたTRGによって、非効率の解消や不動産の流動性を高める可能性に期待したい。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:田中 稔眞
所在地:福岡市博多区博多駅前3-27-24
TEL:092-292-2313
所在地:東京都港区芝公園3-4-30
TEL:03-6257-3801
設 立:2009年4月
資本金:1,600万円
URL:https://tribute-company.jp


<プロフィール>
田中 稔眞
(たなか としまさ)
1980年8月12日生まれ、福岡市出身。不動産会社を経て、2009年に(株)トリビュートを設立し、代表取締役に就任した。趣味は仕事。

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