建機・福祉レンタル業界トップ企業 激動の時代を生き抜く果敢な戦略
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(株)ニシケン
建機・福祉レンタル業界で九州トップクラスの注目企業
建機レンタル・福祉レンタル業界で九州トップクラスの業績を誇る(株)ニシケン。2016年3月には業界大手(株)カナモトの子会社となった。現在、代表を務めるのは、みずほ銀行出身の田中誠一社長だ。畑違いの業界のように思えるが田中社長曰く「金融業とレンタル業はよく似ている」という。
「金融業は資産であるお金を貸して利息をいただき、レンタル業は資産である機械を貸してレンタル料をいただく事業(物融)と、大変似ているので正直、驚いています。また、建機においても福祉においてもこの業界自体がシェアリング・エコノミーとして今の時代に合っていて、ポテンシャルをおおいに感じます」(田中社長)。
事実、ニシケンは19年期に売上高200億円を超え、これまでにない数字を叩き出した。その背景について田中社長は、「無駄を減らし、効率性・透明性を高めたこと、それによって社員のモチベーションが高まったことが要因ではないでしょうか。福祉事業においては高齢化社会にマッチしたことも一因だと思います」と分析する。少子高齢化が進むなかで福祉業界の需要拡大には可能性を感じる一方、「目先の10年くらいは良いとしても、ニーズのすべてを賄える資金があるかというと難しい」とシビアな見方だ。
コロナ禍で加速したIT化 営業にもデジタルツールを導入
従来、ニシケンの強みは「昭和の営業力」、つまり対面での「人間力による営業」で仕事を獲得できることだった。田中社長はこの営業スタイルで5年は業績を維持できると踏んでいたが、新型コロナウイルスの流行によって状況は一変。対面での営業というニシケンにとって最大の武器を奪われた状態となった。そこで注力したのが、デジタルツールを活かした営業戦略である。
20年6月1日に新しく「マーケティング課」を創設し、ウェブでの情報発信やITツールによるコミュニケーションを強化。オンライン面談を導入し、Wi-Fi環境の整備など社内のIT化を図った。
ITに関わる投資額は60期(18年11月~19年10月)1に対して61期(19年11月~20年10月)は1・1倍、62期(20年11月~21年10月)は1・5倍となる見込み。
500名超の話を聞いていく 「1on1」のチャレンジ
次なる10年に向けて田中社長が今、力を入れているのは「1on1(ワン・オン・ワン)」と呼ぶ、社員とのコミュニケーションである。社員1人ひとりと社長が直に面談(雑談)をし、現場の声を聞くというものだ。
当初は対面で実施していたが、新型コロナウイルス感染対策のためにオンラインで実施。30分ほどの面談を続けている。ニシケンの社員は525名(20年10月末見込)。1カ月に30名と面談したとして合計17カ月以上かかる計算だ。たしかに時間はかかるが、それに見合った効果があるという。
「銀行員時代、為替ディーラーに従事していた期間が長く、意思決定の速さと果敢なポジション・テイキングが自分の強みだと自負しています。そこをニシケンのチャレンジ精神と合わせて相乗効果を発揮したい。そのためには、正確な情報を掌握する必要があります」(田中社長)。
ポジション・テイキングとは、相場観(将来の見通し)に基づき、それが実現した場合に収益を獲得できるポジションをあらかじめ構築すること。その判断材料となるのは「正確な情報」である。つまり、正確な情報が集まらなければ相場観の信頼性が揺らいでしまう。
会社の今を知り、現場を知っている社員1人ひとりがもっている情報の1つひとつが経営判断に重要なカギとなるのだ。
「500名以上の社員から話を聞いていくのは決して容やすいことではありません。時間もかかるし労力もかかる。ただ、それ以上に得られるものがあります。普段、光が当たっていない人の活躍を知ることができるし、組織を見るうえでの解像度が上がります」(田中社長)。
この1on1は20年からスタートし、21年の年始には完了する予定だ。その後、田中社長は2回転目を実施する考えだという。
「経営者にとっては1000本ノックというか、修業のようなものだと思っています。現場の声を丁寧に聞いていくことでみえてきたものを経営に活かしていきたい」(田中社長)。
業界トップのカナモトを親会社にもち、異業種から転身したリーダーをトップに据えるニシケンがこの激動の時代にどのような好戦を繰り広げるのか。地元・福岡において見逃せない展開が始まる予感だ。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:田中 誠一
所在地:福岡県久留米市宮ノ陣町若松1-9
設 立:1960年11月
資本金:10億4,903万円
TEL:0942-35-5840
URL:http://www.r-nishiken.co.jp
<プロフィール>
田中 誠一(たなか せいいち)
1966年、福岡県大野城市出身。九州大学大学院工学研究科修士課程修了。92年、日本興業銀行(現・みずほ銀行)入行。2017年、みずほ銀行国際為替部副部長、19年6月、(株)カナモト社長付顧問を経て、20年1月に(株)ニシケン代表取締役社長に就任。法人名
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