2024年11月21日( 木 )

すべての学生生徒のために 組織運営力で全国有数の教育拠点へ

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学校法人福岡工業大学

減り続ける18歳人口 「質競争時代」で高まるプラスαの必要性

 1992年に約205万人だった18歳人口は、2035年には100万人を割り、40年には約88万人まで減少。一方、大学進学者数は17年の約63万人でピークを迎え、今後は減少局面に入るものの、大学定員数の増加で進学率は上昇すると予測されている(H30・2・21中央教育審議会大学分科会将来構想部会資料より)。

 1954年の創設から67年を迎えた学校法人福岡工業大学は、18歳人口の減少とコロナ禍にどう立ち向かっているのか。民間企業出身で、現在同大学理事・事務局長を務める山下剛氏に話をうかがった。

 「90年代前半は、各大学がほぼ定員を満たしていたためほとんどが黒字でしたが、大学は協調から競争の時代へと変わり、継続的な改革の必要性が高まっています。定型業務中心の運営から、コストパフォーマンスを考えた高度な組織運営が必要になる。そこにどれだけ多くの魅力的な選ばれる要因・材料をそろえられるかが、学園の生き残りを左右するカギになると考えています」と山下氏は分析する。

先進技術と自然環境が調和したキャンパス
先進技術と自然環境が調和したキャンパス

JUST DO IT!風土と文化が人をつくる 全国で唯一、14年連続志願者数増を実現

 同大学は、JR博多駅から快速で約14分。水と緑に囲まれた利便性の高い場所に位置する。「採用を増やしたい大学」で2年連続全国1位(日経キャリアマガジン特別編集「価値ある大学2021年版」日経HR)、全国唯一14年連続志願者増、一般入試志願倍率九州1位(2020年度入試/大学通信調べ)、国際共著論文九州1位(2021大学ランキング AERAムック)など、近年、数々の分野でナンバーワンを獲得している。また、経営・財務安定性の指標となる格付会社R&IとJCRによる評価はともにA+と非常に高い。

 キャンパスの敷地内に入ってまず感じたのは、明るくクリーンな雰囲気だ。校舎内も同様、床は磨き上げられ、淀みとは無縁の明るく爽やかな空気に満ちている。すれ違う職員や学生は、訪れる者に笑顔で挨拶をしている。聞けば、来訪者に気配りできるようにと、職員の机は出入口に向けて配置しているそうだ。徹底した衛生管理と環境整備、訪問者に対する細やかな気配りに、誰しもが感嘆するというのも頷ける。

 14年連続志願者増という記録は、意識改革と改善の積み重ねによって成し得たものだといえる。山下氏は次のように語る。

 「前理事長の鵜木洋二が着任したのが1997年。鵜木は(株)福岡ダイエーホークス(現・福岡ソフトバンクホークス(株))の社長、ショッパーズプラザの初代店長などの経歴をもつダイエーの出身です。着任当時、行動様式において大学の常識は世間の非常識と言っても過言ではない状態でした。そこで、当たり前を変革し、新しい常識をつくっていこうと『For all the students(すべての学生生徒のために)』の経営理念を具体化した指針ペーパーを10年間、毎週1回発行しました。目的は、学生をはじめとするステークホルダーが接するすべての学園の質を改善すること。改善に奇策はありません。経営主体=全教職員となることで、強い組織が育つ。学校を良くしようと思っている教職員の比率が高まれば改善が進んで、文化や風土も必然的に良くなると考えました」。

中期経営計画と行動計画で実現する 全国1位にこだわる魅力的な大学づくり

 鵜木氏の理事長就任から1年後の98年、全教職員が参画するFIT経営計画をスタートさせた。この計画は5年計画、3年見直しの中期経営計画「マスタープラン(MP)」と、それに基づく単年度の行動計画「アクションプログラム(AP)」で構成され、学校全体でPDCAサイクルを管理している。

熱気に包まれた学内合同企業説明会の模様
熱気に包まれた学内合同企業説明会の模様
(2020年度は新型コロナウイルスの影響のため、
同規模での実施はしておりません)

 「大・短・高含めて20名弱の教職員で運営するMP策定委員会は、陪席自由。皆さんが発言でき、学校全体でつくるMPです。『予算は投資』という考え方で、計画の具体化や数値目標設定、ガラス張りの情報公開など、学校経営のありとあらゆる改善を進め、組織の理念や意思、価値観を共有してきました。また、職員力向上のため、海外研修などの経験を通して多様な視点で物事を考えられる職員育成にも力を入れています。これもすべて当校の理念である『For all the students』がベースとなっています。コロナ禍で規模は縮小しましたが、7月に対面での企業説明会も開催しました。判断には勇気が要りましたが、『求めている学生がいるのであれば開催しよう』と、感染予防対策を徹底して実施しました。基準は非常にシンプルです」。

 緊急事態宣言発令後、文部科学省の要請に基づき一時的に学校閉鎖を行い、学生はキャンパスに立ち入れない状況だった。そのため、前期の授業は実験・実習を除きリモート中心だったが、後期は実験・実習、試験と同様に対面授業を重視して行っていく予定だという。

 「今、一番嬉しい数字は、全国有力企業のアンケートを基にした『採用を増やしたい大学』ランキングで2年連続全国1位になったことです。このような実績をどれだけ増やしていけるか、大学の多様性を追求することで実現したいですね。そして将来的には、全国有数の教育拠点に成長させたい。そのためには、おごらず謙虚に着々とやるべきことをやる。まだまだ道半ばですが、教職員の皆さんの思いが少しずつ実現していますから、皆がそれを実感しているでしょう」と目を細める。

 理念や目標は組織の方向性を示し、導く指針となるが、それを具体的に事業に落とし込んでいくのは気の遠くなる地道な作業の連続だ。「すべての学生生徒のために」という理念を核に、教職員、学生、協力会社など全関係者で大学改革に取り組み、つくり上げてきた文化・風土は、全国有数の教育拠点に押し上げる力となるだろう。「福工大」は明るい未来を見据えている。


<COMPANY INFORMATION>
学 長:下村 輝夫
所在地:福岡市東区和白東3-30-1
設 立:1954年4月
TEL:092-606-3131
URL:https://www.fit.ac.jp


<プロフィール>
山下 剛
(やました つよし)
1970年3月、西南学院大学商学部経営学科卒業。同年4月、大手流通企業に入社し、営業、人事、QC、経営企画などを担当する。96年10月、学校法人福岡工業大学に入職。翌4月同短期大学事務長、2004年4月、同法人事務局財務部長に就任。11年10月、同法人事務局事務局長、15年11月、同理事・事務局長に就任、現在に至る。

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