2024年12月22日( 日 )

「謙虚」と「感謝」を貫く経営 盤石な基盤を築き、100億円企業を目指す

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

福岡ロジテム(株)

最新の物流システムを広めたい

宇美本社倉庫

 新型コロナウイルス感染拡大防止のために経済活動が停滞するなか、物流業界は感染リスクを抱えながらも懸命に物資を届け、ビジネスや生活を支え続けた。社会的存在意義の大きさを改めて示すとともに、ネット社会の進展により、物流は今後もさらに成長する産業であることを印象付けた。

 福岡ロジテム(株)は2005年の創業以来、物流に新風を吹き込み続け、15年で年商50億円の企業に成長した。創業者の小林専司氏は大学卒業後、父親が経営する運送会社で働き、勉強のために東京の上場企業・日本ロジテム(株)に入社。ここで、九州とはまったく異なる東京の物流を目の当たりにする。

 「当時、九州の物流は物を運び、保管することがメインでした。一方、東京では工場から運んできた物をカット、組み立てなどの流通加工まで含めて物流をトータルで手がけていて、感動しました」と当時を振り返る。23歳だった小林氏は、福岡に新しい物流の風を吹かせたいという強い思いを抱き、貪欲に技術やノウハウを吸収した。

 3年後、福岡に戻った小林氏は、「ただモノを運ぶだけではなく、最先端の物流を広めたい」と考え、東京で学んだ流通加工ができるシステムを導入、営業改革を行った。その狙いは見事にあたり、新規取引先を次々と開拓し会社の業績は右肩上がりを続けた。

3年目に黒字転換をはたす

 小林氏が福岡で新しい事業展開の壁を感じているころ、日本ロジテムは海外でも急速に事業を拡大していた。小林氏も福岡の立地からアジアを視野に入れた物流を構想していたこともあり思いが一致、日本ロジテムが50%を出資して小林氏が独立、新しい物流会社を設立することになった。それが福岡ロジテムである。「看板もない自分に上場企業が出資してくれたことは奇跡であり、大きな力になりました。友人や知人も出資してくれ、皆さんのおかげで会社ができました」と語る。

 顧客もなくゼロからのスタートだったため、いきなり売上が上がるはずもない。当然、1年目は毎月赤字が続き、2年目も黒字にはほど遠い状況。転機は3年目に訪れた。大手小売チェーンからセンター業務を受託、一気に黒字転換をはたしたのだ。その後、大手食品卸の物流センターなどを次々と受注して成長に拍車がかかった。それ以来、黒字経営を続けている。小林氏は、「日本ロジテムのバックアップや信用、福岡県からの助成金、周囲の協力、そして社員の頑張りのおかげ」と目を細める。以来、福岡や佐賀に5カ所の物流倉庫を構え、総合物流倉庫企業としてさらなる成長を遂げている。

常に謙虚で感謝の気持ちを忘れない

民間の国際交流事業として大きな成果を上げている
(提供:NPO法人 アジア太平洋こども会議・イン福岡)

 企業の発展には、皆が力を発揮できる環境や地域から支持される企業文化を、社員や関係者を巻き込みながらつくり上げることも欠かせない。トップにはそうした資質が求められる。小林氏自身が根本とするのは、人のために尽くすこと。そのうえで「謙虚」と「感謝」する心を挙げる。「感謝の気持ちと謙虚さをもっていれば会社は何とかなるが、謙虚さをなくし不遜になると会社はダメになる」と、ことあるごとに社内で語りかけ、共有してきた。

 小林氏の人を巻き込む力は、JC時代での活動で磨かれた。1989年、民間レベルの国際交流事業「アジア太平洋こども会議・イン福岡」が開催されることなり、このときの実行委員長を務めたのだ。35カ国・地域から1,110人が参加する一大プロジェクトは初めての開催で、前例がない。「引き受けた以上はやり遂げよう。子どもたちの笑顔のために」と、寝る間も惜しんで働いた。困難だと思われた事業は動き出し、大きな成功を収めた。以来、こども会議は毎年夏に開催され、大きな社会運動にまで成長した。実行委員長として奔走するなかで、「リーダーは誰よりも働くべき。一番努力して一番知恵を出し、誰よりも謙虚でなければならない」ということを学んだという。

 「人にかけた情けは水に流し、人から受けた恩は石に刻む」という意味を表す「刻石流水」という考え方を大事にし、社会貢献活動にも力を尽くす。福岡県内4エリアの中小企業1200社余で構成する中小企業経営者協会の上部組織、福岡県中小企業経営者協会(連)の会長として、会員企業の交流や企業価値の向上、地域社会の活性化への貢献などにも取り組んでいる。

 「高校生に自分の可能性や世界への視野を拓いてもらいたい」と、ハーバード大学、スタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学など世界トップの大学生を招聘して開催する高校生の交流事業、「イングリッシュキャンプ」などの開催にも関わり、未来の日本をつくる若者の育成に情熱を注ぐ。

目標は売上高100億円

物流に関する困りごとの解決に貢献してきた

 同社は、きめ細かな物流システムを提供し、効率化やコストの削減をはじめ物流に関連するさまざまな要望や困りごとに応えることで成長を遂げてきた。小林氏は企業成長の原動力の1つに投資を上げる。「企業は投資をしなければ勢いが削がれる。少なくとも数年に一度は投資すべき」だという。今年は新型コロナウイルスの問題で投資を抑えているが、来年からはエリアの拡充も図り、九州の地盤をさらに強化するために積極的な投資を進める計画だ。また、経営の効率化のためにIT化や人材育成にもさらに力をいれる。

 同社は、実質無借金経営を達成しながら剰余金を積み上げ、盤石な経営基盤をつくってきた。「このスタイルを代々受け継いでいく企業風土を醸成して、100億円企業を目指したい。社員には2年ぐらい赤字でも構わないから失敗を恐れずに挑戦してほしい」と次世代へ夢を託す。100億円企業に向け福岡ロジテムは着実に前進している。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:小林 専司
所在地:福岡県糟屋郡宇美町大字井野369-8
設 立:2005年10月
資本金:6,000万円
TEL:092-931-1665
URL:http://www.f-logitem.jp


<プロフィール>
小林 専司
(こばやし せんじ)
福岡市出身。東福岡高等学校、中央大学卒。2005年10月福岡ロジテム(株)を設立、代表取締役社長就任。仕事はもちろんのこと、ボランティアなど社会貢献活動にも積極的に参加。福岡県中小企業経営者協会連合会会長も務める。

関連キーワード

関連記事