【凡学一生の優しい法律学】ワクチン狂騒曲(前)
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正式には承認されていない「丸山ワクチン」
筆者の年代にとって、忘れることができないワクチンは「丸山ワクチン」である。これは丸山千里博士が開発したガン治療薬であるが、現在まで正式に承認されておらず、薬効を信じる人々だけが「暫定的に」使用しているという不思議な「薬」である。
薬は国家が正式に承認して初めて保険適用される薬となる。そのため、国家の承認を受けていない薬はたとえ外国で承認されていても、日本では薬として使用できない。この国家の承認する手続きのもっとも根幹となる部分が、「治験」と呼ばれる「人体実験」である。
筆者は治験コーディネーターとして治験事業に参加し、後進の医療関係者に薬事法制に関して講義を行うことを一時、生業としていた。そのため、治験を「人体実験」と表現することには抵抗があるが、その本質を一般の人々に理解してもらえるよう、この表現をあえて使っている。
薬は人間の生命・健康に直結するため、古来より人類がもっとも富を投下してきた物質の1つである。あらゆる種類の薬が絶えずこの世に出現するなか、「ニセ薬」による大きな人的被害が起こりかねないため、国家は厳しい統制の下に置いてきた。
しかし、現実には巨大製薬資本が、最新の薬剤開発に膨大な投資を行い、世界の薬剤市場を独占している。特許権の制度は薬に関しても例外ではなく、先発企業が一定の期間、独占販売を認められるため、その間の利益は莫大なものとなる。
これらの事情により、丸山ワクチンは正式なガン治療薬としての承認は受けていないが、現実にはがん治療薬として使用できるという「中途半端」な状態にある。その最大の理由は、治験において「薬効」が「科学的に」認められないことだ。
新型コロナウイルスの特効治療薬になるかと思われた日本発祥のアビガンが、無念なことに治療薬として承認されなかったという事実が、多くの国民の印象に残っている。筆者には、この事実が奇妙にも丸山ワクチンの例と重なり記憶されている。
もちろん、筆者が仮に新型コロナウイルスに感染して治療を受けることになったら、その効果に関わらず、主治医にアビガンの使用を要求する。アビガンはほかの疾病の治療薬として承認されており、薬としての「安全性」は確認済みであるからだ。
(つづく)
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