2024年11月05日( 火 )

誰かの役に立ち、社員に笑顔を 労働環境の向上で、さらなる事業展開

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(株)リュウセイ

商品と顧客、企業と顧客を結び 会社が1つの家族として発展していく

15周年記念で導入した特別仕様のトラック。
優良ドライバーがハンドルを握る

 生鮮輸送、倉庫管理に特化した配送サービスを主軸に、福岡市内はもちろん九州全域に流通網を広げているのが、(株)リュウセイだ。全国から福岡に集まる生鮮貨物を、独自の輸送ネットワークを駆使して九州各地の店舗や倉庫に届けている。

 そんな同社の代表取締役は井上竜毅氏37歳。人を喜ばせることが何よりもうれしいと語る経営トップだ。その理念は、たとえば求める人材像にも現れているようだ。「誰かの役に立ちたい」「何かに一生懸命になりたい」「トラックに乗りたい」という人材なら誰でも大歓迎するという。

 背景にあるのは流通を超えた使命感だ。単に商品を運ぶということにとどまらず、商品と顧客、企業と顧客、そして社会と人々を結びつけることを自らのはたすべき役割と捉えている。だからコンプライアンスの徹底はもちろんのこと、働く社員たちの意識や行動、言動にまで細かく気を配るという。

 「管理部門で働く社員は、私より年長の者ばかりです。私が彼らにアドバイスを受けることも少なくありません。そうした人間関係のなかで私も一緒に成長したいと思っています」。会社が1つの家族として発展していくことが井上氏の理想なのだ。

持ち前の行動力で仕事を引き寄せ 見事に結果を出した紆余曲折の創業期

 同社の創業は2007年。まだ14年の企業だが、保有トラック数はすでに130台を超え、社員数は150名におよぶ。井上氏はあまり自分を大袈裟にアピールすることを好まない。取材ではこちらが突っ込んで尋ねたからこそ出てきた話もあった。

 「高校では生徒会長を務めていました。筑豊のあまり褒められた学校ではなかったのですが、その経験を買われたのか、卒業時には神奈川県警から採用したいとのお誘いを受けたこともありました(笑)」。結局、行くことはなかったが、こうしたエピソードからもわかるように、若き経営トップは人を扱うことに長け、社員たちからの信頼も厚い。

 井上氏が起業したのは23歳の時だ。父親が運送業を営んでいたことからこの業界に飛び込む。まずは運送会社の従業員として福岡の魚市場に出入りしていたが、地元の先輩がトラックの購入資金300万円をポンと差し出してくれたことが独立のキッカケだったという。若さとバイタリティーにあふれる井上氏に何かを期待したのだろう。

 予期せぬ支援。大きなチャンスを引き寄せたものの、そう簡単にことは進まない。トラックがあっても、仕事を得るためにはライバル以上の汗を流す必要があるからだ。「当時は早朝から深夜までとにかく働きました。できることはすべてやる。そう決めて必死でした」。魚市場ではセリから顔を出し、まずは関係者に認められることに努めた。顔を覚えてもらったら次はその要望に応えていく。支援者は井上氏の可能性に心を動かされたが、井上氏自身も期待に応えようと必死で働き続けた。紆余曲折の末、見事に結果を出し今日に至っている。

15拠点に加え、3つの拠点と物流センター 人材不足に悩まないからこそできる事業展開

 同社は15の拠点を有するが、今年はさらに愛知と宮崎・鹿児島・岡山に営業所を設置する予定だ。そして3年後にはトラック保有台数400台、10年後には800台を目指すという。その視線の先には独自の物流センター開設もある。足元を固めるために、社内にコンプライアンス統括部を設置したほか、整備部門も設けた。

恵まれた労働環境のもと、
のびのびのと働くドライバーたちと井上氏(中央)

 スウェーデン製のトラック導入といった話も目を引くが、運転席をドイツ製のシートRECAROに張り替え、腰痛予防まで考えるという徹底ぶりだ。さらにはドライバーたちのために休憩室やシャワールームまで用意し、そのほかにも月に1回のペースで産業医の診察を行い、週に1回整体師を社内に呼び希望者を対象に施術も提供している。

 人材不足、定着率の低さが指摘される業界だが、必要な人材を着実に確保できている背景にはこうした細やかな気配りがある。そのほかに食堂を兼ね備えた寮があるなど、独身者にうれしい福利厚生もある。ちなみに朝は食堂でつくられた弁当が本社に届けられ、ドライバーの前に並ぶ。目指すのは至れり尽くせりの職場だ。

運送業は天職、趣味は仕事、そして快適な労働環境をつくり上げていくこと

 同社にはグループ企業があり、グループ全体の売上を見れば30億円をゆうに超え、従業員数250人の大所帯になる。

 「新しい事業を生み出し、推し進めていくことが楽しくてたまりません。話があれば積極的に応じてきたことが、グループ企業が次々と誕生してきた理由です」と語る井上氏。ユニークなところでは、たとえば「ジロー」という洋食店がある。地元の人気店だが弁当需要に応え、大手ドラッグストアの店舗に商品を卸す計画も進行しているという。単なる店舗経営にとどまらない、井上氏の経営者としての手腕が発揮された場面の1つだろう。

 冒頭で「誰かの役に立ちたい」という言葉を紹介したが、最近は久留米大学病院で難病と闘う子どもたちのために、陰ながら支援をしようという話にも一役買っている。たまたまその話を聞きつけ井上氏が出したアイデアは、同業他社十数社とともにリクルート動画を制作し、そこで得た収益をボランティアに活かそうというものだ。

 運送業は天職、趣味は仕事。社員たちに快適な労働環境をいかにして提供するかを考えることが唯一の楽しみだと語る井上氏。過去には有能な社員を他社に引き抜かれ、経営面、精神面で追い込まれたこともあるというが、気づけば活躍の場は九州全域へと広がっている。近い将来には西日本全域を網羅したいという。リュウセイの躍進は止まらない。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:井上 竜毅
所在地:福岡市中央区赤坂3-11-26(本社)
福岡市中央区長浜3-15-4(長浜本部)
設 立:2007年2月
資本金:300万円
TEL:092-791-1878
URL:http://www.ryuu-sei.jp


<プロフィール>
井上 竜毅
(いのうえ たつとし)
1983年直方市生まれ。福岡県立筑豊工業高等学校(現・鞍手竜徳高等学校)機械科卒業。高校時代は生徒会長を務めるなど同級生たちからの人望厚く、卒業後はすぐに父親に倣い運送業界に飛び込む。趣味は仕事と言い切るが実は家族思いの子煩悩で、5人の子どもたちとともに休日を会社で過ごすこともあるという。大切にする言葉は「謙虚と感謝」。

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