2024年11月23日( 土 )

住友林業、住宅の見積書の明細を開示せず不誠実な契約!(中)

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 木造住宅メーカー最大手の住友林業は、「ビッグフレーム構法」(木質ラーメン構造)、「マルチバランス構法」(木造軸組構造)などの耐震性の高い構造と高級感を感じられる仕様で人気も高く、ブランド力を強味としている。その住友林業の契約に関して、見積書の本体工事の内訳明細の開示を求めた契約者に対し、「会社のシステム上、開示できない」という回答を行った住友林業の対応が問題となっている。

住友林業の平均的な本体価格(標準仕様・仕上げ)との大きな乖離

 住友林業の平均的な本体価格の坪単価は、インターネット上で調べると70~90万円である。A氏の住宅の本体価格の坪単価は125万円/坪であり、平均的な坪単価の1.4~1.8倍程度となっている。住友林業の別の住宅でも「本体工事」の見積金額の明細が開示されていない。また、住友林業以外の大手住宅メーカーの見積書においても本体工事の明細を示していない例もある。大手住宅メーカーは、その知名度やブランドイメージが集客に有利に働いているため、見積書の内訳明細を示さずとも契約が取れるという現状があるのではないだろうか。

 A氏が計画している住宅の床面積は200坪を超えており、一般的な住宅の床面積の6~7倍程度の大きな床面積の住宅である。一般的な住宅よりも大きな床面積の住宅であれば、建築材料や職人の手配などのロスの減少、現場の固定費が割安となるなどのスケールメリットがあるため坪単価が下がることはあっても、上がることは考え難い。しかし、A氏に提示された本体工事の金額は平均金額の1.8倍程度となっており、公序良俗の観点からもA氏が不審に感じるのも当然である。

 住友林業が、知名度やブランドイメージを武器に有利に契約を結び、契約客から見積書の内訳明細の開示を求められても「会社のシステム上、内訳明細は出せない」と開き直る態度からは、大手住宅メーカーとしての誠意がまったく感じられない。

 自社の電算ソフトを用いて見積もりを行うとしても、材料単価や数量・施工手間などを積み上げなければ本体価格は導き出せないはずである。本体価格算出の基となる内訳明細が電算のなかに存在していなければ「本体価格」の合計金額が出せる道理はない。

 明らかに存在しているはずの電算ソフト内の「内訳明細」を開示できないということは、メーカーにとって不都合な理由、たとえば、「見積もりの内訳明細を開示すれば、多くの専門的な質問に対し回答ができない」などの理由によるのではないだろうか。

 見積書の内訳明細が開示されず納得できなければ、契約を結ばなければ良いのであるが、A氏の場合は建築の素人であり、営業マンから「今なら消費税8%で契約できますよ」と契約を急がされたことからも、住友林業にも非があるといえる。

提案工事・付帯工事も法外な金額

 2つ目の問題点は「提案工事」である。提案工事は明細があり「1億166万8,086円」となっている。「提案工事」とは標準仕様・仕上げに対して変更または付加するものである。A氏の住宅の提案工事の坪単価は50万円/坪となっている。

 提案工事の内容は多岐にわたるが、外壁タイル:5,000万円、小型エレベーター:567万円、外部階段:480万円、キッチン・ユニットバスなどの水回り:3,000万円と、これらの項目だけでも9,000万円が計上されている。

 ローコスト住宅メーカーの建設単価(工事完成した坪単価)が40万円/坪前後であるため、A氏の住宅の仕様変更の差額や付加の提案工事だけでもローコスト住宅の建設が十分に可能な金額となっている。この提案工事には内訳明細があり、標準仕様との差額が記されているものもあるが、「一式480万円」などと内訳明細が不明な項目も多い。一般的に建築業界内には、「増額は大きく減額は小さく」という常識があり、増額分を不明瞭にする傾向が見られる。

 3つ目の問題点である「付帯工事」は、解体工事費・地盤改良費・外構工事・地下室工事、敷地内インフラ工事で構成され、その金額である約1億7,500万円を200坪で割ると約87万円/坪となる。この坪単価は、住友林業の平均的な建設単価と変わらない金額である。

ほかの住友林業の住宅の例

 A氏の親戚に、偶然にも住友林業で住宅を建てた人がいた。さすが住友林業と思わせる立派な住宅であり、契約書式は下記の資料(2)の通り、A氏の場合とまったく同じ構成である。

資料(2)

 本体工事の坪単価は69万円/坪であり、総工事費の坪単価でも80万円/坪であった。この金額は、先に述べた住友林業の平均的な坪単価と合致する。提案工事などの増額分は11万円/坪程度であり、これはほぼ標準仕様・仕上げに近い住宅だと思われる。本体工事以外の提案工事や付帯工事の内容に差はあるが、本体工事の坪単価だけを見てもA氏の住宅の金額が2倍近くなっていることに驚かされる。

 A氏の住宅については、下記のような疑問が残る。

・なぜ、これほどの高い金額で契約させられたのであろうか。
・住友林業の積算ソフトに欠陥があるのか。
・積算ソフトの結果に対して、社員は何の疑問をもたないのか。
・高額な契約を結ぶことができそうな客には不当に高額な金額を提示しているのか。
・不正な契約は組織ぐるみで行われているのか。

 住友林業は不誠実な対応に終始しているが、都甲建築士兄弟は、A氏の事例について、旧知の設計会社、施工会社、他社ハウスメーカーなどに意見を聞いたところ、どこも「ありえない。解約すべきだ」「しかも、あの住友林業が!」と、どこからも一致した意見が返ってきたとのことである。

 都甲建築士兄弟は以下のように語っている。

「A氏の住宅の事例をデコレーションケーキに例えれば、本体価格という十分に見栄えが良くおいしいケーキに、提案工事という得体のしれない飾りや盛り付けを施したもののように見えます。仮に住友林業からの金額提示が、本体工事:85万円/坪、提案工事:50万円/坪合計135万円/坪程度であったならば、上限価格として受け入れられたのではないでしょうか」

(つづく)

【桑野 健介】

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