東芝・車谷社長が事実上のクビ、CVCと仕掛けた救済策が大炎上(3)
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「策士、策に溺れる」。東芝の車谷暢昭社長が辞任した。事実上の解任である。「ものいう株主」に追い込まれた車谷社長を救済するため、「プロ経営者」の藤森義明氏が英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズと組んで仕掛けた東芝の買収劇。車谷社長は前CVC日本法人の会長、東芝社外取締役・藤森氏はCVC日本法人の最高顧問。車谷社長の「自己保身」のための出来レースと猛反発を招き、失敗に終わった。
東芝の大株主の上位3社は「ものいう株主」で占める
東芝の経営陣は、エフィッシモ・キャピタル・マネジメント以外の大株主とも対立している。その1つが、シンガポールの3D・オポチュニティー・マスター・ファンド(以下、3D)。昨年の株主総会では2人の社外取締役の選任を求めた。3D代表の長谷川寛家氏はゴールドマン・サックス出身。
3Dは2020年7月20日、東芝の車谷暢昭社長と社外取締役・藤森義明氏の取締役再任に反対すると発表。3Dの狙いが、車谷氏の解任にあることがはっきりした。
3Dは、車谷社長と藤森氏の関係を問題視した。投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズで藤森氏が最高顧問、車谷氏が会長兼共同代表だったこともあるため、独立性に疑義があると主張。また、東芝が藤森氏を選任する理由としてM&Aのエキスパートであることを挙げているが、藤森氏はLIXILグループのCEO時代に多くのM&Aの失敗を生み出しており、その評価は極めて疑わしいと断罪した。
株主総会では、車谷社長の取締役再任についての賛成は57.96%となり、かろうじて過半数を上回り取締役に再任された。藤森氏への賛成は78.09%だった。
3Dは今年3月、米ハーバード大学の基金運用ファンドから東芝株を買収し第2位の株主に浮上した。ハーバード大基金は、経産省の元参与から昨年7月に議決権を行使しないように圧力をかけたとして大騒ぎになったため、すっかり嫌気がさして株を売却したようだ。
筆頭株主のエフィッシモ、2位株主の3D、3位株主の米投資ファンドのファラロン・キャピタル・マネジメントは、今回の臨時株主総会の開催を要求した1社。大株主の3社は「ものいう株主」であるアクティビストが占めることになった。
3Dが圧力をかけた、かの調査結果と合わせて、車谷社長が6月の定時株主総会で解任されるのは確実だ。そこでCVCをホワイトナイトとしてTOBを実施して上場を廃止し、「ものいう株主」に退散してもらうという車谷社長の救済大作戦が敢行された。シナリオを描いたのはもちろん「プロ経営者」の藤森氏にほかならないだろう。藤森氏を中心に論を進める。
LIXILのオーナー潮田洋一郎氏の日本脱出計画の相談に乗る
藤森義明氏は「CVCの日本での活動の利益代理人」と言われている。
藤森氏はLIXILグループのオーナー、潮田洋一郎氏から首を切られたが、縁が切れたわけではなかった。潮田氏は、法人税や所得税、相続税が高い日本からの脱出に執念を燃やした。情報誌『FACTA』(19年5月号)の「LIXIL『日本脱出』の証拠」にこんな一文がある。
3月27日、六本木ヒルズにある森タワー51階の「六本木ヒルズクラブ」に潮田の姿があった。対面していたのは欧州最大のファンドであるCVCキャピタル・パートナーズ日本法人代表の赤池敦史、CVCの顧問を務める藤森義明である。潮田から日本脱出計画策定の依頼を受けたのは、確認されているだけで2社ある。1つがGCAで、もう1つがCVC。潮田はこのうちのCVCチームと六本木ヒルズで面会した。要するに日本脱出をあきらめていないのである。
潮田氏は、日本脱出に反対する瀬戸欣哉CEOを解任し、自らCEOに就いてシンガポール移転を実行しようとした。海外の投資家が瀬戸氏を支持して、潮田氏に退任を突き付けた。返り討ちにあった潮田氏は19年6月に退任。日本脱出計画は消滅した。
(つづく)
【森村 和男】
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