人間の劣化を加速させる化学物質の蔓延:精子の数は半減中!
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。今回は、2021年4月16日付の記事を紹介する。
このところ世界の関心は新型コロナウイルスやその変異種による感染拡大に集中しているようだ。日本の場合も、7月の東京オリンピック・パラリンピックを100日後に控え、感染をいかに抑えるかが、大きな課題となっている。外国からの観戦者は入国が認められず、競技に参加する外国人選手も日本に安心して行くことができなければ、開催そのものが中止となる事態もあり得る話だろう。
そんな中、スポーツ選手に限らず、人類全体にとって由々しい事態が静かに進行している。何かといえば、人類の減少という人口問題に他ならない。ニューヨークのマウント・サイナイ・アイカーン医学大学のシャンナ・スワン博士が発表した最新の研究論文によれば、「今日、男性の精子の数は祖父の時代と比較すれば半分に減少しており、日々、その数は減少の一途をたどっている」とのこと。
いわゆる先進国の健康な男性4万5,000人を調査したところ、1973年から2011年の間に、精子の数は59%も減少していることが確認されたという。このままの傾向が続けば、「2045年までに特殊な医療技術を導入しなければ、自然なかたちでの生命の誕生は難しくなる」とも指摘されているから無視できない。新型コロナウイルスも恐ろしいが、精子の減少も人類の未来にとっては緊急事態といえるだろう。
その主な原因は内分泌かく乱物質(EDC)と呼ばれる化学物質の蔓延である。プラスチックを柔らかく加工する際に使われている「フタル酸エステル」と呼ばれる環境ホルモンなどが体内に侵食し、人体に悪影響をおよぼしているという。美容液や化粧品をはじめ、スキンケア商品に含まれており、皮膚を通して侵食するのみならず、香水などのスプレー商品にも利用されているため、鼻から吸い込むかたちでも体内に取り込まれてしまう。
それ以外にもEDCは食品にも添加されている可能性が高い。なぜならプラスチックで包装されたり、冷凍食品を加熱解凍する際にもプラスチックから食材に浸透するケースが一般的に確認されているからだ。しかも、こうしたEDCの一種であるビスフェノールなどは自然界にも広く拡散しており、無意識のうちに人体に取り込まれているから厄介極まりない。最も深刻な問題は、男性ホルモンの一種であるテストストロンの値を減少させ男性を女性化させてしまうことである。その結果、多くの男性が生殖能力を低下させてしまっている。
実は、悪影響を受けているのは男性に限らない。女性の場合も、卵子の減少という状況に追い込まれている。その結果、最近では流産する女性が急増するようになってきた。要は、男女を問わず、我々は日々、数千種類もの化学物質に囲まれた生活を余儀なくされているからだ。
残念ながら、どの化学物質がどのような影響を人体におよぼすかは、まだ研究段階であり、その実態はいまだ十分には解明されていない。とはいえ、世界の人口減少問題にとって最も大きな課題は男性ホルモンの急速な衰えであることは間違いなさそうだ。
さらには、農業の生産現場でも深刻な問題が発生している。アメリカ製の「ラウンドアップ」と呼ばれる殺虫剤は収穫量を増やすために広く使われている。こうした殺虫剤は発がん性も指摘されているにもかかわらず、規制はされていない。我々の日々の食卓の上には、このような化学肥料や薬品を投下されたうえで収穫された食材が並んでいるのである。有機食材への関心も高まっているが、すべての食材を健康志向で調達するのは至難の業といえるだろう。
しかも、最近のコロナ禍の影響で、在宅勤務やテレワークが増えた結果、身体を動かす機会が減る傾向が顕著である。そうした運動不足になりがちなライフスタイルはテストストロンを減少させるうえでは効果抜群だ。巣篭りで家飲み生活が続けば、ますます、男性ホルモンはビールの泡の如く消え去る運命にある。脂肪はEDCが最も貯蔵場所として好むと言われている。
いずれにせよ、差し迫った人類滅亡の危機を回避するにはライフスタルを変えることが欠かせない。食生活はもちろん、日光浴や身体を動かすことを習慣化させること。そして、男性ホルモンを破壊するような化学物質を寄せ付けない工夫が大切である。
スワン博士のアドバイスは「できるだけ、ニンジンやジャガイモなど自然な食材を自分で調理し、プラスチック容器は使わないこと。冷凍食品を解凍する際にはプラスチック容器からは出してオーブンに入れること。化粧品を含め、ヘルスケア商品には合成香料の物は避けること」。
多くの人が気づかないふりをしているようだが、こうした環境ホルモンに囲まれた生活によって、我々の健康や生命の起源が脅かされていることに向き合うことが必要である。さもなければ、45年という近未来までに「人類は自らの力で子孫を残す術を失う」危険に直面することになりかねない。
著者:浜田和幸
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