東芝のキングメーカーになった永山治取締役会議長~迷走を続ける東芝の救世主となるか(後)
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東芝への唐突なファンドからの買収提案は、わずか1週間で社長退任劇に発展した。東芝の社長交代会見には、会長から社長に復帰した綱川智氏と取締役会議長・永山治氏が出席し、車谷暢昭氏は欠席した。事実上のクビである。市場関係者の視線は、車谷氏に引導を渡し、東芝の名実ともにキングメーカーとなった永山氏に注がれた。
殺虫剤「バルサン」の中外製薬を、時価総額日本一の製薬会社に育てる
中堅にすぎなかった中外製薬は、ロシュ傘下入りという大決断してから、経営方針を大きく転換。研究開発によって画期的な新薬を開発していく事業に特化した。しかし、1社だけで投資をするのはリスクが高すぎると判断。世界から創薬投資を呼び込むことが重要になる。それは当時のロシュ社のフランツ・フーマー会長も同じ考えだったという。
中外製薬は殺虫剤「バルサン」、栄養ドリンク「グロンサン」「新グロモント」、中外胃腸薬などで知られていたが、これら大衆薬は、新薬開発に集中するために売却した。
ロシュ・グループの一員になるという賭けは吉と出た。関節リウマチ治療薬「アクテムラ」や血友病治療薬「ヘムライブラ」、がん免疫治療薬「テセントリク」などの大型薬を生み出した。
中外製薬の株式時価総額は7兆1,443億円(21年4月20日終値時点)。武田薬品工業の5兆7,970億円、第一三共の5兆6,882億円、を大きく上回り、国内製薬業界のトップだ。
永山氏は凄腕の「プロ経営者」なのである。
キングメーカーの永山氏は誰を経営トップに据えるか
東芝と日立製作所は重電のライバルだったが、「親方日の丸」という社風は一致していた。2008年のリーマン・ショックで経営危機に陥ったことも共通している。しかし、対応は正反対だった。資金調達の国際金融を招き入れたことも同じ。日立は株主と向き合うと腹をくくって改革を進め、よみがえった一方、東芝は国際金融の餌食になった。ドル箱である半導体事業を売却し、成長の芽を摘んでしまった。とどのつまり、経営者に人を得たかに帰着する。
取締役会議長兼指名委員会委員長として、東芝のキングメーカーになった永山治氏の大仕事は、誰を経営トップに起用するか。「うるさ型」の株主を満足させながら、成長事業を育てるという難しい舵取りを委せられるCEOだ。
6月の株主総会に提出される役員人事が注目される。それに失敗すると、東芝は分割・解体の道を歩むことになる。
(了)
【森村 和男】
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