【佐賀】原材料が100%佐賀産ビールの『佐賀アームストロング醸造所』
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佐賀市諸富町に立地する千葉県のプラントメーカーが、100%佐賀県産ビール大麦を使う製麦工程併設のクラフトビール工場『佐賀アームストロング醸造所』の建設を進めている。6月初旬に酒類製造免許を取得、7月中旬ごろ、“佐賀の味や香り”を楽しめるエールビールを発売する。
メーカーは、千葉県袖ケ浦市に本社を置く「コトブキテクレックス」。取引先の「味の素」が、微生物発酵によるグルタミン酸ソーダ(MSG)を九州工場(現・九州事業所)で生産を始めるのを機に、佐賀工場を1961年に建設。以来、MSG製造プラントの補修・点検を手がけ、醸造プラントメーカーとして発酵技術にも明るい。
一方、ビールは1994年4月の酒税法改正で、製造免許の条件が年産2,000kl以上から60kl以上に緩和された。その土地の特産品などを活かす小規模ブルワリーが全国各地に現れて“地ビールブーム”が生まれた。半面、ブルワリーの乱立で玉石混交状態になってブームは衰退。九州も例外ではなかった。現在、クラフトビール事業者でつくる「全国地ビール醸造者協議会」(東京都港区)に入る九州内の会員は福岡3社、大分2社、宮崎3社、鹿児島1社。佐賀県では有田町の清酒メーカーが手がけるだけという。
ただ佐賀県は、ビールなどの原料になる二条大麦の生産量で栃木県とトップを争う。コトブキテクレックスは1960年代、サントリーがビール事業に進出した際、タンクを製造の経験があった。
「大麦生産が日本一の佐賀県で、自社の発酵技術とタンク製造技術を結び付けクラフトビールをつくる」。そう考えた同社の松本憲幸社長は、ビールの味や風味を左右する「麦芽(モルト)」も佐賀産大麦を採用した。国産麦芽は、輸入麦芽より3倍ほど割高になるため、クラフトビール醸造所で自社麦芽を使うのは全国でも数えるほど。
醸造所の名前は、幕末の佐賀藩が製造した最新式大砲「アームストロング砲」から採った『佐賀アームストロング醸造所』。大麦は佐賀市の農業生産法人から調達する。
大麦は水に浸し発芽させると酵素が発生する。加熱して発芽を止めて乾燥と焙煎を経て麦芽ができる。ここまでが製麦工程。次の醸造工程は、ミルで麦芽を砕き、マッシュタンで砕いた麦芽とお湯を混ぜて粥(かゆ)状にしてろ過、麦汁をつくる。麦汁を煮沸してホップを入れ、冷却後、発酵タンクに移して酵母を投入。発酵で糖がアルコールと炭酸ガスに分解される。その後、貯酒タンクに移して低温下で熟成、ビールができる。同社ヘッドブルワーの伊藤謙二氏によると、発酵タンクは酵母の働きを良くするため国内では採用例が珍しい開放式タンクを導入。コクや香り、味が出やすいようにした。
仕込み1回(1バッチ)分のビール生産量は約500l(350ml缶で約1,400本分)。「生産するビールは、大麦モルトの力強い風味や味わいを生かしたペールエールや、小麦モルトを使った華やかな風味のヴァイツェンなどが中心になります」と伊藤氏。まず、佐賀県内の飲食店や酒販店、百貨店、ギフトショップなどに卸すという。
伊藤氏は「佐賀産ビール麦でつくった自社製モルトによる佐賀県ならではのクラフトビール。アームストロング砲のような先進技術とモノづくりへの情熱が詰まっています」と胸を張る。
【南里 秀之】
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