元総合商社駐在員・中川十郎氏の履歴書・ニューヨーク編(1)
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ニチメン・ニューヨーク店新規事業開拓において、着任後の最初の仕事は情報産業関係で日本から出張している富士通情報関係者のアテンドだった。これには、三和銀行グループの日商とニチメン(両社が合併して双日に)の両商社でアテンドし、ニューヨークを中心に米情報通信関連企業に案内した。これはその後、日商が中心となり、情報会社・ニフティ(株)に発展した。
ニチメンは米・サンフランシスコのU.S.リーシング、三和銀行、日商と協力し、オリエント・リース(現・オリックス)を設立し、主力として運営。ニチメンから出向した宮内義彦氏が社長、会長を長年務めた。
ニューヨークにおける新規ビジネス確立では、現地人脈をまず開拓し、この人脈からビジネス情報を入手、新規ビジネスを開拓する戦略をとった。筆者としては、国連広報を担当し、とくに中南米、アフリカ、アラブ諸国の外交官、ビジネスパーソンと強い人脈をもつGloria Kins女史との人脈確立に努力。さらに日本人としてニューヨークで米国ビジネスマンと最も強い人脈をもっているといわれたニューヨークレストラン「紅花」のロッキー青木氏との人脈を強化。さらに、ビジネス得意先として開拓したハーバード卒のH氏との関係の開拓に尽力した。
Kins女史は、週刊情報誌も発刊しており、レキシントン街にある自宅は建築誌にも紹介されるほど有名な建築物だ。100人も入るほどの広い応接間で毎週、開かれるパーティに呼んでもらい、ニューヨーク人脈の開拓に努力した。
青木氏も、紅花の主要な顧客や有力なビジネスパーソンを、機会あるごとに紅花で紹介してくれた。この人脈は日本向けのカジュアルウェア、装身具、宝石、毛皮などの新規ビジネスに結実した。
H氏には毎週月曜日にマンハッタンで開催されるハーバード大学OB朝食会を紹介してもらい、ハーバードビジネス人脈確立に努力した。
たまたまカナダのカルガリー滞在中に、カナダの情報通信ミッションで2週間ご一緒したNTTの香取一昭氏がニューヨーク駐在中で、情報人脈開拓に努力した。また、宇部興産(株)のニューヨーク社長として活躍中の谷本氏とも、ブラジル駐在中にリオデジャネイロでアテンドし、関係を強化していた。カナダの情報通信「テリドン」ビジネスでお世話になった(株)進学社の堀内道夫常務もしばしばニューヨークに出張されたため、情報通信関係ビジネスで指導をいただいた。駐在の後半には、ニューヨーク出張中のドクター中松にもお目にかかる機会があり、それ以来30年にわたり、お世話になった。
ニチメン・ニューヨークの情報産業開拓に必要と上司からの勧めがあり、総合科学メーカーのニューヨーク駐在の技術ベテランO氏をニチメン・ニューヨーク開発顧問として委嘱。O氏はかつて戦艦大和の大砲の火薬の研究をしたというだけあり、技術的に有能で、新技術開拓に大いに貢献してもらった。
「ニューヨーク経済研究会」を設立し、JETROや得意先の三和銀行などの駐在員などにも参加してもらい、政治、経済、金融情報収集に努力した。
<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)。関連キーワード
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