2024年11月23日( 土 )

日本製鉄が東京製綱に対する血の粛清~「ガラガラポン」で、役員人事総入れ替え(前)

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 坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。その人を憎むあまり、その人に関係のあるものすべてが、憎くなるというたとえ。この諺を地でいく出来事があった。ワイヤロープの国内最大手、東京製綱(株)の全取締役が退任する。前会長・田中重人氏を追い落とした筆頭株主の鉄鋼最大手、日本製鉄(株)が放った二の矢が、盾突いた役員らを「ガラガラポン」での総入れ替え。全体主義国家を彷彿させる「血の粛清」である。

東京製綱取締役8人全員が退任

 東京製綱(株)は4月26日、浅野正也社長(61)をはじめ取締役全員の8人が6月25日の定時株主総会で退任すると発表した。後任には、子会社、長崎機器(株)(本社長崎県時津町)の原田英幸社長(57)を起用する。原田氏は東京大学工学部を卒業し、1987年に東京製綱に入社。執行役員、東綱ワイヤロープ販売(株)社長を経て、2020年4月から長崎機器社長を務めている。

 新たな取締役候補は原田氏を含め10人で、このうち6人が社外取締役になる。

取締役候補

代表取締役社長 原田英幸(長崎機器社長)

取締役 寺園雅明((株)新洋副社長)
取締役 森忠大(経営企画部長)
取締役 喜旦康司(総務部長)

取締役(社外) 上山丈夫((株)三陽商会顧問)
取締役(社外) 狩野麻里((学)昭和女子大学国際交流センター長)
取締役(社外) 葛岡利明(元・(株)日立製作所執行役専務)
取締役(社外) 名取勝也(ITN法律事務所弁護士)
取締役(社外) 樋口靖((株)熊谷組相談役)
取締役(社外) 山本千鶴子(山本千鶴子公認会計事務所所長)

   東京製綱は同社に対して敵対的TOB(株式公開買い付け)を実施した日本製鉄との「協議を踏まえ、取締役8人全員の退任を決めた」としている。日本製鉄は「当社との協議内容を踏まえ、東京製綱の判断で決定したと承知している」とコメント。あくまで、東京製綱の判断で決めたものと言っているわけだ。しかし、額面通り受け取る向きは皆無だろう。

 全取締役の総入れ替えは、経営破綻したり、乗っ取られたりした企業では、とかく起こりがちであるが、平時の上場企業では、異例を通り越して異常である。「天下の日本製鉄が、ここまでやるのか」と驚き、心底呆れてしまった。

(つづく)

【森村 和男】

(中)

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