2024年12月27日( 金 )

九州トップの環境設備総合商社 地場のまちづくりの一役を担う(前)

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(株)カンサイホールディングス

 創業73年、会社設立67年を迎えた(株)カンサイホールディングス。前身の電気設備資材商社の関西電業(株)としてスタートし、現在は業界を牽引する九州トップの環境設備総合商社に成長した。コロナ禍で経済全体が冷え込むなか、同社はきめ細かな創意工夫により、地域のまちづくりの一役を担う。

「経営者賞」を受賞

(株)カンサイホールディングス代表取締役社長・忍田勉氏
(株)カンサイホールディングス
代表取締役社長 忍田 勉 氏

 (株)カンサイホールディングス代表取締役社長・忍田勉氏は今年4月7日、(公財)経営者顕彰財団が主催する2020年度(48回目)の「経営者賞」を受賞した。
 同財団は1972年、九州・山口の中小企業の経営や技術に関する貢献者を表彰するために、旧福岡相互銀行(現・西日本シティ銀行)の創立者、故・四島一二三氏の寄付を基に設立された。「経営者賞」は、九州・山口地方で中小企業の経営・技術に優れた業績を収め、地域経済の発展に貢献した経営者に対して贈られる。

 同社の忍田社長は次の3点が評価され、受賞した。

 (1)忍田氏の座右の銘である「継続は力なり」の精神に則り、メーカーと電気設備工事会社との橋渡し役として新たな仕事を創造する展示会「カンサイフェア」を40年間にわたり継続して実施。また、地元プロスポーツチームのスポンサーを長年務めるほか、若手プロゴルファーの育成を目指した「カンサイカップ」を主催している。

 (2)1995年に関西電業(株)(現・(株)カンサイ)の2代目社長に就任以降、電気設備資材の総合商社としてグループ会社を13社に拡大し、九州一円を網羅する営業拠点網を構築。また、2013年にはグループ全体の持株会社である(株)カンサイホールディングスを設立し、19年度のグループ売上高を307億円と就任当初の3倍以上に成長させた。

 (3)電設資材商社で構成される九州電設資材卸業(協)の理事長を12年の創立以来務め、18年には上部組織の全日本電設資材卸業(協)(連)会長に就任(現在2期目)し、業界の発展と地位向上に貢献している。さらに 20年11月には福岡商工会議所副会頭に就任し、地域の活性化にも貢献している。

 忍田社長は今回の受賞について「大変うれしく光栄です。今日までお客さま、お取引先、取引行、そしてともに日々戦う社員とスタッフの支えがあってのことです」と述べた。

 地場経済アナリストは「同財団の経営者賞はこれまで、製造・製作などを行うメーカーの受賞がメインでした。忍田社長のような立場のほうが表彰されたことは、やはり長年地域に根ざした事業展開と地域貢献が本物であったということ」と分析する。

 忍田社長には、業界内のみならず他業界・業種のリーダーから、経営にまつわる相談事が途切れなく舞い込んでくる。地場経営者のリーダーの1人として存在感を示している。

地場屈指の企業に成長

(株)カンサイホールディングス 60周年イベント 同社は1948年に忍田社長の父・忍田楢蔵氏が創業。54年に関西電業を設立し、2013年10月には設立60周年を前に持株会社のカンサイホールディングスを設立した。現在、グループ会社はカンサイをはじめとする13社(45営業拠点)を数える。

 同社は、電気設備や住宅設備資材を取り扱い、提案営業により、地場の電気工事業者を中心に取引を行う。忍田社長は以前実施したインタビューで、「02年に社名を関西電業からカンサイに変更しました。当時、環境設備総合商社を目指すにあたり、従来の社名では電業=電気屋の固定観念を外すことができないため、思い切って変えました。これは、若手の社員を中心にしたプロジェクトチームが1年がかりで検討したものです。先代が付けた社名の一部を残したい気持ちがあり、カタカナの社名にしました。社名を変えたことより社員の意識が向上し、一体感が強まったと感じています」と述べているように、社員1人ひとりの能力を最大限生かすことを主眼に、経営の舵取りを行う。商号の変更はCI(コーポレート・アイデンティティー)の一環で、企業の将来を左右する。重要な任務を若手社員に任せるという企業風土が醸成されているのは、忍田社長の経営手腕によるところが大きいといえる。

 同社が躍進した最大の理由は、九州一円に営業拠点があることだ。グループ全体で45カ所に上る営業ネットワークにより、迅速でタイムリーなサービスを提供できる。九州内なら「どの地域にもカンサイの営業所がある」とされ、たとえば福岡の工事会社が県外で工事を行う場合、なじみがある同社の営業所がすぐ近くにあるため、原材料の確保の心配は無用となる。「地域密着をモットーに進めてきた多店舗展開が我々の強みです。当社のお客さまであれば、九州のどこの現場でも、サイン1つで当社の資材を受け取っていただけます」(忍田社長)。

(株)カンサイホールディングス

 電材だけでなく、弱電工事や空調工事、住宅設備、リフォーム、ユニットバス、キッチンなど、グループ全体で幅広い需要に応えることが可能。「電材に限らず、住居や建物内装にかかわる設備なら、一通り当社のグループで対応できることも強み。たとえば、マンションを建てる場合、必ずオートロックやインターホンがついてきます。当社にお声がけいただければ、これらの材料から弱電工事まですべて含めてお受けできるのです」(忍田社長)。電気関係を筆頭に、関連設備における資材の供給から工事の設計・提案、施工までを総合的にワンストップで提供できるのが、同社の強みとなっている。

 顧客が必要なときに必要なものを必要なだけ(小ロット受注)、すぐに納入するというスピーディーな対応に加えて、工事に関する相談にも的確に対応できるなど、グループ全体で顧客満足度を高めている。

(つづく)


<COMPANY INFORMATION>
代 表:忍田 勉
所在地:福岡市博多区東比恵3-32-15
設 立:2013年10月
資本金:9,600万円
売上高:(20/3連結)307億円


<プロフィール>
忍田 勉
(おしだ つとむ)
1948年生まれ。奈良県出身。明治学院大学法律学部を卒業後、74年に実父の経営する関西電業(株)に入社、95年に2代目社長に就任する。現在、九州電設資材卸業協同組合理事長、全日本電設資材卸業協同組合連合会理事長、福岡商工会所副会頭などを務める。

(後)

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