2024年12月27日( 金 )

九州トップの環境設備総合商社 地場のまちづくりの一役を担う(後)

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(株)カンサイホールディングス

 創業73年、会社設立67年を迎えた(株)カンサイホールディングス。前身の電気設備資材商社の関西電業(株)としてスタートし、現在は業界を牽引する九州トップの環境設備総合商社に成長した。コロナ禍で経済全体が冷え込むなか、同社はきめ細かな創意工夫により、地域のまちづくりの一役を担う。

経営を委譲して見守る

 忍田社長は、グループ会社の経営については各社の代表に委譲している。グループのトップとして各社代表に対して適時提言するが、経営実務や現場の仕事については口を挟まない。「ホールディングスについては私がやりますが、グループ会社については各代表に任せています。数値をチェックして提言することはありますが、それぞれの経営の仕方を尊重しています。なぜなら、任せることで各代表のモチベーションが高まり、より良い仕事をつくり上げるからです。各代表の下で活動する社員も、それぞれの持ち場で能力を発揮して成果を上げます。意欲のある者にどんどんチャンスを提供するのが私の流儀です」(忍田社長)。

 いわれた通りに仕事をこなしているだけでは、社員の成長や進化は期待できないという。忍田社長は、それぞれのグループ会社と社員が成長し進化するためには、地域に根差した丁寧なコミュニケーションをとり、顧客との厚い人間関係によって信頼を高めることが最も重要であると説き、自らも実践していると話す。

 「我々地場企業にとっては、今もこれからも生身の人と人との関わり合いが一番大切です。だから、グループ会社については、それぞれの社長が持ち味を生かした経営を行うことで、進化し成長しながら地域に根差していくと確信しています。私は各社の経営を見守り、困難に直面したら一緒に解決するために歩んでいきます」(忍田社長)。

提案型営業と地域密着の徹底

同社の一大イベント「共創展 カンサイフェア」
同社の一大イベント「共創展 カンサイフェア」

 コロナ禍によって、毎年開催されてきた「共創展 カンサイフェア」は昨年中止となった。今年の開催も未定だ。

 3日間にわたって行われるグループの総力を結集した一大イベントであり、毎年2万人を超える顧客が来場する。協賛メーカー130社以上が、最新の節電家電・システム機器や住宅設備などを展示し、活発な商談が行われる。業務の商談だけでなく、フードコートなどの食のコーナー、縁日・雑貨・美容などの家族と一緒に楽しめるブースも充実。3日間の売上高は30億円を超える。

 忍田社長は「共創展の開催は未知数ですので、フェアに変わるものをお客さまに提供していくことが大切です」と語っている。現在、社内でITを最大限活用したネット通販の強化などを進めていると説明する。

 中核のカンサイをはじめとするグループ13社が、それぞれの独自の経営によって成果を上げている。過去にM&Aで傘下に入った企業もあるが、同社側からアクションを起こしたことは一度もないという。つまり、相手側から経営難などの理由で、同社にM&Aの依頼があったのだ。M&Aが成立した後も企業体制を変えることなく、引き続き経営を継続させている。同社から役員などを送り込むこともなく、忍田社長からグループ会社の経営に口を挟むこともない。ただし、相談があれば親身になって提言し、ときには支援もする。かつて業績が赤字であった企業は、グループ入り後にすべて黒字に転じている。グループそして社員が一体となった企業風土がより根付いていることの証だ。今年の新卒採用者はグループ全体で20人。コロナ禍で国内経済が冷え込むなか、積極的に採用する同社グループは、より進化させるという意志を表している。

 今後について忍田社長は次のように話す。
 「LEDや太陽光発電関連は、横ばいかダウントレンドになるでしょう。新たな挑戦については、その1つに、国家(文部科学省)が提唱・推進するGIGAスクール需要の高まりによる新たな市場開拓があります。生徒1人に1台の端末と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備する時代に突入しています。加速化するデジタル化で、PC 端末は鉛筆やノートともに必須です。ITとICTは今後の学校教育のスタンダードになります。今後はGIGAスクール開設に関する工事への対応が求められます。この分野は、これまでの同業他社だけでなく、事務機器を扱う企業との競合も発生します。また、国家(環境省)が提唱するNet Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル:ZEB)は、快適な室内環境を実現しながら、建物内で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のことです。ZEBの建築物の設計と施工についても、今後需要が発生するでしょう。これまで先人が培ってきた事業を正しく受け継ぎながら、時流に沿った新たな事業づくりに挑んでいくことが我々の使命です。今まで以上に地域密着を強固にしながらお客さまへの提案力を高めて、グループが一体となって明るいまちづくりのために寄与していきます」。

 今年9月で73歳を迎える忍田社長。73歳には見えない若々しくて情熱的な姿勢で「継続は力なり」を率先して実行し、グループ全体を俯瞰する。同社の躍動はこれからも続きそうだ。

(了)

【河原 清明】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:忍田 勉
所在地:福岡市博多区東比恵3-32-15
設 立:2013年10月
資本金:9,600万円
売上高:(20/3連結)307億円


<プロフィール>
忍田 勉
(おしだ つとむ)
1948年生まれ。奈良県出身。明治学院大学法律学部を卒業後、74年に実父の経営する関西電業(株)に入社、95年に2代目社長に就任する。現在、九州電設資材卸業協同組合理事長、全日本電設資材卸業協同組合連合会理事長、福岡商工会所副会頭などを務める。

(前)

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