2024年11月15日( 金 )

元総合商社駐在員・中川十郎氏の履歴書・ニューヨーク編(2)

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 ニューヨークでの人脈開拓、ビジネス情報収集では、 Kins Group社長のGloria Kins(グローリア・キンズ)氏、長年ニューヨークのビジネス界で活躍しているレストランチェーン「紅花」創業者のロッキー青木氏、JETRO ニューヨーク、ワシントン・ストラテジー・グループの今村勝征社長にとくにお世話になった。

国連関係の広報を担当していたGloria

 Gloriaは国連関係の広報を担当していたこともあり、国際的な広い人脈をもち、豪壮な邸宅を活用した懇親パーティをしばしば開催。そのたびに筆者を招待し、関係者に紹介してくれた。

 日本の茶道に興味を持つ友人に日本茶の輸入を勧めてくれたほか、南米ボリビア副大統領の姪を紹介してくれた。副大統領の姪はビジネスに熱心で、ボリビアの大型ガスパイプライン敷設プロジェクト案件を紹介してくれた。日本側と交渉したが、距離的に遠くボリビアに土地勘がなかったため、日本側は参加に難色を示し、商談が実らなかったのは残念であった。

 Gloriaが紹介してくれたイタリア女性とは、ニューヨークのカジュアルウェア、装身具、毛皮の日本向け輸入ビジネスに結実した。1985年のプラザ合意の結果、円が強くなったことから、ニューヨーク画商による日本向けの絵画輸出の商談もGloriaから頻繁に舞い込んだ。T百貨店向けの版画ビジネスは成立したが、絵画の輸出商談はまとまらなかった。 

NYレストランチェーン「紅花」のロッキー青木氏

ニューヨーク イメージ 青木氏はニュージャージーに壮大な大邸宅を構えて、趣味のビンテージカーを5台ほど所有し、ニューヨークには、ベンツのバンで通っていた。また、ロンドンを走っているタクシーを時々運転してマンハッタンを走行し、ニューヨーク子の度肝を抜いていた。

 青木氏の壮大な邸宅に何度か泊めてもらった。1、2階には10もの部屋があり、1階の暖炉付き書斎には、収集した古今東西の名著が天井まで並んでいた。その後、青木氏はこの邸宅を歌手のマドンナに売却し、ニューヨークに家を買って多くの骨董や名画を並べていた。

 青木氏からニュージャージーにあるトランプ氏のカジノを買収しないかという紹介があった。日本の不動産業者と交渉したが、蜘蛛の巣に覆われており、改修費がかさむとして、断られた。

 青木氏は名画への投資もしており、ブラジルの首都ブラジリアの絵も好んで大量に蒐集していた。あるとき、ニューヨークの絵画買い付けに訪れた日本のホテルJの所有者と青木氏がサザビーズのオークションに参加することになり、筆者も誘われて同席し、貴重な体験をした。

 後年、青木氏のこれらの絵画を銀座の画廊で展示して販売しようと努力したが、日本も不況となっていたため、転売には成功しなかった。

ワシントン・ストラテジー・グループの今村勝征社長

 筆者の貿易誌の対談記事を見たというワシントン・ストラテジー・グループの今村氏がニチメン・ニューヨークを訪問。今村氏もビジネスに熱心で、ワシントンで計画されていた新大学の建設のための鉄鋼建材やセメントを購入したいということだったが、新大学計画が中止になり、ビジネスにならなかった。

 プエルトリコのゴルフコースの買収案件やカリブ海・ケイマン諸島のマリーナの商談では、日本の不動産業者とともに、今村氏に案内してもらった。しかし、ここでも海外でのゴルフ場やマリーナ運営には不慣れだとしてビジネスが成立しなかったのは残念だった。

 この今村氏には30年来、日本ビジネスインテリジェンス協会ワシントン代表としてお世話になっている。

(つづく)


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)。

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