2024年12月24日( 火 )

菅義偉氏に天の裁きが下るとき

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「日本国民はそろそろ気付いた方がよい。この国の為政者は国民の幸福など微塵も考えていないことを」と訴えた6月2日付の記事を紹介する。

菅首相はワクチン列車に駆け込み乗車しようとしているが、五輪開催の時間に間に合う列車には、すでに乗り遅れている。それにもかかわらず、間に合わない列車に無理やり乗り込んで、大会開催をゴリ押ししようとしている。ワクチン接種進捗によって感染が抑制されるまでには時間がかかる。その前に東京五輪の期日が到来する。

コロナ感染波動は世界で同期化する。感染第4波が4月にピークを記録して、感染第4波は収束局面に移行している。これを背景に、足下の日本の新規陽性者数が減少に転じている。しかし、感染第5波に警戒が必要だ。感染第4波の中心に位置づけられたのはN501Y変異株。これに対して、今警戒されているのがL452RとE484Q、および両者を併せもつハイブリッド変異株。L452Rは日本人がもつ免疫能力をすり抜ける可能性が指摘されている。E484Qについてはワクチンの有効性が低いことが懸念されている。

米国の権威ある医学学術誌である“The New England Journal of Medicine”にアストラゼネカ社製ワクチンの有効性検証結果が掲載されている(https://bit.ly/34ExMmb)。この論文では南アフリカ変異株に対するワクチン有効性が10.4%であったことが示されている。

ワクチンがすべての新型コロナウイルスに有効であると限らない。菅内閣の防疫体制はザルである。英国変異株、インド変異株に対しても、水際でウイルス流入を阻止する意思も行動も感じられない。入国に際しての検疫措置が緩すぎてお話にならないのだ。その結果として、海外で発生した変異株が容易に日本国内に流入している。

五輪では「バブル方式」を採用して、入国する外国人が日本国民と接触しないまま、帰国することが喧伝されている。しかし、これもおとぎ話に過ぎない。

オーストラリアのソフトボールチームメンバーが入国し、群馬県太田市に入った。バブル方式では、入国外国人の行動は練習場、宿泊施設、競技会場に限定される。移動は必ず専用車両を用いることとされている。ところが、早速、太田市の市長が、選手団がホテルに閉じ込められていてはストレスが溜まるだろうから、市内の商業施設での買い物を容認してはどうかと言い出した。

入国第1号チームから「バブル崩壊」のリスクが表面化している。入国する選手は原則として選手村に入るが、自己手配ホテルへの滞在も認められている。それらのホテルで入国外国人と日本国民の接触が本当に遮断されるのか。また、メディア関係者に対しても「バブル方式」が取られるのか。選手に対する検査は「原則として」毎日。選手の移動は「原則として」公共交通機関を用いない、とされる。

「安心・安全の大会」は「原則として」では実現しない。要するに、すべてがいい加減なザル対応だ。世界から5万人を超える外国人が流入する。変異株が持ち込まれることは間違いない。感染第5波が極めて深刻なものになる可能性がある。

五輪組織委員会から16万個のコンドームが配布されるとのこと。組織委は何の支援を行うのか。

政府がワクチンブームを無理やり創出しようとしているが、賢明な人はワクチンを接種しない。重大な副反応が存在しており、長期的な人体への悪影響の恐れもある。治療薬の開発が進められており、治療薬の活用を軸にすべきだ。ワクチンを接種した人の平均余命が大幅に短縮化される可能性を否定できない。

現下の日本の客観情勢は五輪開催を正当化しない。この状況下で五輪開催を強行するなら、必ず、その咎(とが)が表面化することになるだろう。

老子第73章:「あえてするに勇なれば則ち殺され、あえてせざるに勇なれば則ち活かさる。この両者、或(ある)いは利あり、あるいは害あり。天の悪(にくむ)む所、孰(たれ)かその故を知らん。天の道は、争わずして善(よ)く勝ち、言わずして善く応じ、召さずして自ら来たし、繟然(せんぜん)として善く謀(はか)る。天網(てんもう)恢恢(かいかい)、疏(そ)にして失わず」。

現代語訳:罪人を裁くのに、ふみ切ることに勇敢であれば人を殺し、ふみ切らないことに勇敢であれば人を活かす、とか。この2つの態度は、人為の立場では、あるいは利とされ、あるいは害とされる。しかし、天が何を罪として悪むのか、その真相は誰にもわからない。だから聖人でさえ、それを知ることを難しとするのだ。

いったい、天の理法は、争わないでうまく勝ち、言(ものい)わなくても自然にやってき、招かなくても自然にやってき、おおまかでありながら、うまく計画を立てる。天の法網は広く大きく、目はあらいが取りにがすことがない。すべてを天の理法に任せればいいのだ(朝日選書『老子』福永光司)。

「天網(てんもう)恢恢(かいかい)、疏(そ)にして失わず」「天網(てんもう)恢恢(かいかい)、疏(そ)にして漏らさず」という。天の網は粗いけれども、罪を見逃すことがない。

菅首相の為政は失態続き。コロナ収束に軸足を定めるべきだった。「二兎を追う者は一兎をも得ず」である。

コロナ収束を優先するのか、経済活動活発化を優先するのか。「右往左往」が続いてきた。緊急事態宣言を発出しても、首都圏の東京以外を除外する。感染拡大地から全国各地への旅行を一切止めない。感染が日本全国に広がることなど、誰にでもわかる。それでも、非科学的、反知性主義の政策がゴリ押しされる。

厚労省はコロナパンデミックの入口で検査拡大の基本方針を取らなかった。検査を徹底的に抑圧した。その結果、感染の早期封じ込めに失敗した。PCR検査を感染症ムラで独占しようとした。「クラスター対策」はコロナ予算が感染症ムラに落ちる仕組み。自分たちの利権を優先し続けてきた。

感染症対策の基本は「検査と隔離」。検査によって感染者を特定し、その感染者が感染を拡大させないようにする。この基本を無視してきたために、日本は東アジアで最悪のコロナ被害を生み出した。

感染収束を優先するなら、五輪をあきらめるしか道はない。ところが、菅首相は自分の利益のために五輪開催強行路線を突き進む。IOCも自分の利益のために五輪開催強行路線を突き進む。菅首相とIOCは自己利益のためだけに五輪開催強行に突き進む面で、まったくの同類。

そのために被害を蒙るのが主権者である日本国民。日本国民はそろそろ気付いた方がよい。この国の為政者は国民の幸福など微塵も考えていないことを。国民を踏み台にして、自分の利益を増大させることしか考えていない。このような悪徳為政者を天が見逃すわけがない。菅義偉氏は必ず天の裁きを受けることになる。


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植草一秀の『知られざる真実』

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