ミャンマー軍事クーデター、日本政府が沈黙する陰に日本企業と軍の深いつながり(3)
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(一財)カンボジア地雷撤去キャンペーン理事長
CMCオフィス(株)代表取締役 大谷 賢二 氏2月1日のミャンマー国軍によるクーデターは、昨年のミャンマー連邦議会の総選挙で、アウンサン・スーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が改選議席の8割以上を得たことに恐れをなした国軍が、憲法で保障された権限を発動したものだ。
国連や欧米各国は、ミャンマー軍に対して、市民の殺りく停止、スーチー女史などの逮捕者の即時釈放、民主化の回復を求めて厳しい対応をしているが、日本は毅然とした態度をみせていない。そのような対応しかできない背景には、日本企業とミャンマー軍との深いつながりがあった。日本企業の関与が指摘される人権侵害の事例
シャン州北部のチャウメでシャン州軍南部(SSA-S)が2020年6月24日、アッパーイェワダム建設現場の北約10kmの村で反麻薬デーの式典を開催するとミャンマー国軍に伝えたところ、軍はダム建設現場を警備していた戦闘部隊を派遣して同式典を阻止し、SSA-Sとの衝突に発展した。
その後、当該ダム建設現場近くのチャウメ南部の街全体で、ミャンマー国軍による、住民への強制的な荷物運搬、乗り物の徴用、負傷、射殺が行われ、600人以上の住民(ほとんどが老人、女性、子ども)が戦闘により強制退去を余儀なくされた。
そもそも、08年から行われている本ダム開発に対しては、ミツンゲ川流域に住む何万人もの人々が強い反対運動を行っている。ダムの貯水池は、川に沿って60km先の町にまで伸び、広大な農地と何世紀もの歴史を持つ先住民の地域を水没させることになるためだ。
その後、20年10月にもチャウメで起きたビルマ軍とSSA-Sとの武力衝突によって、民間人が負傷し、700人以上が避難を余儀なくされたと報じられた。これに関して、国際人権NGOのシャン・ヒューマンライツは、本ダム開発から日本企業を含む外国企業が撤退すること再度求めている。
(1)鉱山採掘機器のサプライヤーである小松製作所
ミャンマー北部のカチン州では、世界の翡翠生産量の90%が生産されており、数十億円の産業価値を有するとされるが、同地ではミャンマー軍とカチン独立軍による内戦が長年続いている。鉱山機器企業による機器の供給によって成り立つ翡翠産業が、国軍と民族武装集団との長期にわたる衝突を継続・激化させるとともに、土地の劣化、水質汚染、地滑りの発生などを助長している。
16年には1万機以上の採掘機が翡翠採取に使用され、それらの多くの機械はキャタピラー、(株)小松製作所、ボルボといった企業が製造、販売したものであった。このような状況をみると、これら3社が行う活動は、企業の人権尊重への責任という点において、問題を抱えている。
18年の調査対象地域を再訪したところ、人権状況がさらに悪化していることが判明した。20年の報告書によれば、18年中旬以降、少なくとも210名が鉱山の地滑りで死亡。カチン州の状況はすでに十分に報告されているにもかかわらず、18年当時、上記3社は指導原則が求める人権デューデリジェンス(人権侵害のリスクを特定した上での予防・軽減策)を実施したと示すことはできなかった。その後、何らかの措置を講じたことを示したのはボルボ社のみだ。
(つづく)
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