ストラテジーブレティン(282号)これから日本をめぐる空気が一変する(後)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は2021年6月6日付の記事を紹介。実は明るい日本経済のファンダメンタルズ
このように心理的抑圧が日本経済の雰囲気を暗くしているが、実は日本経済は世界経済回復の恩恵を強く受け始めている。中国と米国の投資需要の急回復を受け、工作機械、半導体製造装置の受注が鋭角回復し、輸出にけん引されて生産が急回復する見通しである。法人企業統計2021年1~3月の製造業経常利益は前年同期比63%の急増となっている。また円安の下で日本の競争力回復が密かに進行している。コロナ後はインバウンドが急増、22~23年には再度日本の観光業はひっ迫の度を強めるだろう。
世界で最もresilientな日本
翻って日本は世界で最も安定した国、これ以上悪くなる要素のない国である。欧米のような分断・格差などによる社会不安は世界で最も小さい国の1つである。国家戦略と価値観に関しても民主主義と市場経済の堅持はほぼ全国民が同意している。米中新冷戦下で日米同盟強化に反対する向きはほとんどいない。失業率は世界最低水準、政府の赤字ばかりが喧伝されるが、企業・家計など民間を加えれば国全体としては世界最大級の貯蓄余剰をもっている。同盟国として米国から、貴重技術の提供国として中国から、日本は強く求められる国である。
少子高齢化、労働人口の減少、財政赤字、大量生産型工業時代に過剰適合した政府と社会システムの硬直性、デフレの長期化など、日本にはたしかに問題は多いが、これらすべては全世界がこれから直面する問題であり、日本は課題先進国として最も早くからそれらへの対処を迫られ、四苦八苦しながら解決策を模索しているといえる。
これほどの安定性にもかかわらず自己評価が著しく低く謙虚、期待が小さく、株式、不動産住宅などの資産価格は、バリュエーション(金融商品の価値)でみれば世界最低水準である。
日本を追い抜いてハイテク製造拠点となった韓国・中国などは一見輝いて見えるが、大幅貿易黒字の裏側で住宅バブルの高進、家計債務の急増、住居費の高騰による非婚化、出生率の急速な低下など将来の禍根が水面下で高まっている。まさしく1980年代末、バブル崩壊前の日本と類似した環境である。
日本の90年以降の足取りは、幸運(技術と市場のラッキーな獲得)による競争力向上で貿易黒字急増➡巨額の資金余剰が発生して、膨大な銀行貸し出し、民間債務増大➡不動産バブル発生➡住居コストの急伸➡生活困難・社会批判高まり/米国による黒字批判・通貨安批判➡金融引き締め/通貨高➡バブル崩壊と経済停滞、であった。韓国、中国が日本の軌跡をそのまま踏襲することはないにしても、日本同様にそれなりの困難が待っていると考えるべきであろう。
日本株の相対パフォーマンスは底入れした
こうしたことを世界の投資家はいずれ気づくはずである。日本株式(TOPIX)対米国株式(S&P500)の比率をたどると1950年前後で1倍であった両者の比率は、90年の日本のバブルピーク時に9倍に達したが、日本のバブル崩壊と米国経済の成長の高まりにより急低下し、今日0.5倍と空前の低水準に落ち込んでいる。今が日本株式の相対ボトムである可能性は極めて高い。
(了)
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