ミャンマー軍事クーデター、日本政府が沈黙する陰に日本企業と軍の深いつながり(7)
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(一財)カンボジア地雷撤去キャンペーン理事長
CMCオフィス(株)代表取締役 大谷 賢二 氏2月1日のミャンマー国軍によるクーデターは、昨年のミャンマー連邦議会の総選挙で、アウンサン・スーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が改選議席の8割以上を得たことに恐れをなした国軍が、憲法で保障された権限を発動したものだ。
国連や欧米各国は、ミャンマー軍に対して、市民の殺りく停止、スーチー女史などの逮捕者の即時釈放、民主化の回復を求めて厳しい対応をしているが、日本は毅然とした態度をみせていない。そのような対応しかできない背景には、日本企業とミャンマー軍との深いつながりがあった。構造的要因と指導原則に基づく国家および企業の責任
1. ミャンマーでのビジネス活動における構造的な人権侵害リスク
2011年の民政移管以降、欧米諸国による経済制裁が解消され、ミャンマーは先進国にとって魅力的な投資国となり、先進諸国はミャンマーの経済成長を促してきた。一方、NLD政権発足後もミャンマー国内における国軍と軍系企業の財政的な結びつきは依然として強固であり、また、人権や環境分野に関する法的基盤、規範意識も十分に醸成されないまま、経済成長が先行している状態だった。
問題の根幹として以下の二重の構造が存在する。
(1)国内的に不完全な市場運営上の制度的・法的欠陥や規範的欠陥の存在
(2)そのような状況にも関わらず、国際的にミャンマー国軍、軍系企業を潤す先進国企業の存在2. ビジネスと人権に関する指導原則の対象となる企業の経済活動
こうした状況下で起きたクーデターを受け、日本企業を含む、ミャンマー国内での事業展開を通して人権侵害に加担している企業の責任が問われている。ミャンマーでは国際人権基準に達する国内法が確立していないという実態、加えて人権侵害を行うミャンマー軍や企業の事態を知りつつ、軍の衝突が発生している地域での開発プロジェクトへの参加、サプライヤーの安全基準の欠如、少数民族の弾圧を行うミャンマー軍に関わる事業への投資や事業連携など、深刻な人権侵害に対する加担という重大な人権問題をこれまで放置してきたことが、クーデターを引き起こした原因となった可能性は否定できない。
これまで見てきたように、日本、そして日本企業と今回のクーデターは深く結びついており、そのことを見抜いたミャンマー人の日本に対する見方や希望的観測は、急速に冷え込んできており、今後の日本とミャンマーの関係に大きな影を落とすと考えられる。
いずれにせよ、軍による国民、少数民族に対する虐殺や外国人報道陣に対する不当逮捕、投獄などは許されることではなく、国連や各国政府の強い圧力によって一刻も早く辞めさせるべきであり、日本や日本人も傍観者であることは許されない。
現在の日本はワクチンをはじめ、コロナ対応の遅れが世界から指摘され、オリンピック・パラリンピックの問題とも絡む複雑な状況下にあるが、世界、とりわけアジアの国々から孤立しないためにも、毅然としたミャンマー軍への対応を行い、アフターコロナの経済回復に向けた人材確保のためにも、働く人の立場に立った入国管理の在り方を考えて、早急に実行する必要があるだろう。
(了)
<プロフィール>
大谷 賢二(おおたに・けんじ)
1951年福岡市生まれ。福岡県立福岡高校、九州大学法学部卒。98年5月にNGOカンボジア地雷撤去キャンペーン結成。2008年12月にアジア人権基金より「アジア人権賞」を日本人として初受賞。11年4月に(一財)カンボジア地雷撤去キャンペーンを設立、理事長に就任。関連記事
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