【再掲】2050年代を見据えた福岡のグランドデザイン構想(25)~福岡空港の総合的調査専門員会での配置検討
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C&C21研究会 理事 下川 弘 氏
2008年に行われた福岡空港の総合的調査専門員会では、新空港の具体的配置案として6案が示された。
当時は「コンクリートから人へ」の政策スローガンを掲げる民主党政権の台頭により、「公共工事=悪」の図式となっていた時代。建設費をいかに安くするか、つまり埋め立て面積をいかに小さくするかが課題だった。そのために採用されたのがクロースパラレル方式での検討であり、水深の浅い場所での配置案が考えられた。
また、当時の福岡県知事と福岡市長との対立構造があった。新空港が福岡市域内で完結するのであれば、政令市の首長である福岡市長が決めればよいのであるが、当の市長は建設に反対の立場。県知事が意見発動するためには、福岡市外である新宮町域に計画しなければならなかった。
そうして必然的に、新宮町長崎鼻に接した「三苫・新宮沖案」が最優力候補地となった。
しかし、我々C&C21研究会の見解では、この三苫・新宮沖案には大きな欠点が3つあることを指摘した。
まず1つ目は、年間ウインドカバレッジ(※)が最大とはならず、とくに冬季には北西風による横風をまともに受けることになってしまうことだ。そのため、冬季には欠航便が増え、使えない空港となってしまう可能性がある。
2つ目は、この志賀島から宗像までの沿岸地域は「玄海国定公園」に指定されており、海岸線に沿って空港島を建設するということは、南北の砂の行き来がなくなり、白砂清松の砂浜が壊れてしまう危険性があるということだ。加えて、この海岸線を産卵地とするアカウミガメの生息域が破壊される可能性もある。
そして3つ目は、この連載でも何度か述べてきた通り、クロースパラレル方式では将来的な拡張可能性がないということである。
残念ながら、素人が考えても専門委員会が出してきた建設候補地案は、相ノ島南の1案を除いては、あり得ない建設候補地であった。まるで「新空港は問題があるので、現空港の滑走路を増設する方向性にしよう」と誘導するための候補地選出であるように感じた。
(つづく)
※:ある滑走路方位に関して、年間の風向、風速を考慮し、横風の影響を受けずに離着陸できる確率を表わしたもの。航空機は風に向かって離陸、着陸するため、横風により離着陸が制限を受けないように滑走路の方位を設定する必要がある。 ^
<プロフィール>
下川 弘(しもかわ・ひろし)
1961年生まれ、福岡県出身。熊本大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程を修了後、87年4月に(株)間組(現・(株)安藤・間)に入社。建築設計第一部や技術本部、総合企画本部企画部などを経て、99年1月には九州支店営業部に配属。その後、建築営業本部やベトナム現地法人、本社土木事業本部営業部長などを経て、2020年9月から九州支店建築営業部営業部長を務める。社外では99年9月からC&C21研究会事務局長(21年8月から理事)を務めるほか、体験活動協会FEA理事、(一社)日本プロジェクト産業協議会の国土・未来プロジェクト研究会幹事、(一社)防災教育指導協会顧問など数々の要職に就いている。関連キーワード
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