サムスンを引き離しトップを走っているTSMC(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
あらゆるハイテク製品に利用されている半導体が、世界的に不足している。半導体産業の構造や米中対立などが原因で半導体の生産がボトルネックとなっている半導体不足は、モバイル機器や家庭用ゲーム機、そして自動車の生産に至るまでさまざまな分野に影響をおよぼしている。今やありとあらゆる製品にコンピューターチップが組み込まれており、半導体不足により、これらの製品の売上高が落ち込むなど大きな波及効果がもたらされている。今回は半導体製造で世界をリードしているTSMCとサムスンとの競争を中心にして、半導体業界の現状を述べる。
「産業のコメ」と言われる半導体
半導体は「産業のコメ」または「デバイスの脳」と言われ、米中対立の最も重要な争点でもある。半導体は今後、需要がますます増加し、市場が成長すると予測されている。Motor Intelligence社の調査によると、全世界における半導体製造の市場規模は、2020年の420億ドルから毎年6.75%成長し、26年には622億ドルに達すると予測されている。
半導体は大きく分けて、演算を目的としたロジック半導体と、情報の保存を目的としたメモリ半導体がある。ロジック半導体の代表的なものはCPU(中央演算処理装置)やGPU(画像処理に特化した計算処理を行う半導体チップ)があり、その他にも仮想通貨のマイニングに特化したASIC(特定用途向けの集積回路)などのように特定の用途に使用されるものもある。
半導体の性能を左右するのは、微細化技術である。半導体の最小単位であるトランジスタ(半導体素子)を微細化すればするほど、同一面積あたりの集積率が上がり、演算速度は上がる反面、消費電力は下がる。このため、トランジスタの微細化は、半導体メーカーにとって最も重要な差別化要因なのだ。
半導体を製造面から眺めると、回路の設計を手がける企業(ファブレス)、その設計図を基に製造する企業(ファウンドリ)、設計と製造と両方を行う垂直統合型企業(IMD)の3種類に分かれる。今回、半導体不足の原因には、製造する企業であるファウンドリが関係している。
世界最大の半導体製造専門会社は、台湾のTSMCだ。TSMCは、1987年にMorris Chang(モリス・チャン)氏によって台湾で創業された。TSMCは半導体製造の技術革新を続けて世界最大のファウンドリ企業となっている。ニューヨーク証券取引所(NYSE)と台湾証券取引所(TWSE)に上場しているTSMCは、時価総額が5,597億ドル(約61兆6,655億円、世界で第11位)を越え、半導体製造を手がけるライバルのサムスンやインテルを上回るまでに成長しているのだ。TSMCは、2020年1~3月期のファウンドリ業界で世界シェアの54.1%を占め、2位のサムスンを大きく引き離している。
TSMCの果敢な投資
TSMCは、熊本県に300mmウェハーを生産する大規模工場を建設することを検討しているようだ。建設予定の工場では、回路線幅が16nm(16ナノメートル)と28nmの半導体の技術を導入するという。現在、半導体業界の最先端の主流となりつつある5nm級の最先端技術に比べると劣るが、自動車用のチップやイメージセンサーにはこの技術が必要であるようだ。
TSMCは今年2月に総額186億円を投じて茨城県つくば市にR&D拠点を設立して、22年から本格的に事業をスタートすると発表した。総事業費370億円のうち、190億円を日本政府が補助金のかたちで負担する予定だ。このR&D拠点には日本を代表する半導体の素材、部品、装置メーカー20社が参画するようだ。
TSMCは、日本より先に米国への投資を実行している。TSMCは昨年5月、アリゾナ州に120億ドルの予算をかけて工場を建設する計画を発表している。TSMCは120億ドルが投資される米国アリゾナ州の工場建設を最近スタートしており、超微細工程である2nmの生産ラインを今年中に台湾に建設すると発表した。TSMCはアリゾナ州に建設している5㎚工程に次いで、3㎚工程の建設計画を5つも予定している。このためにTSMCは今後4年間で1,000億ドル規模の設備投資をする予定であり、今年だけで300億ドルの投資が行われるという。
(つづく)
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