サムスンを引き離しトップを走っているTSMC(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
あらゆるハイテク製品に利用されている半導体が、世界的に不足している。半導体産業の構造や米中対立などが原因で半導体の生産がボトルネックとなっている半導体不足は、モバイル機器や家庭用ゲーム機、そして自動車の生産に至るまでさまざまな分野に影響をおよぼしている。今やありとあらゆる製品にコンピューターチップが組み込まれており、半導体不足により、これらの製品の売上高が落ち込むなど大きな波及効果がもたらされている。今回は半導体製造で世界をリードしているTSMCとサムスンとの競争を中心にして、半導体業界の現状を述べる。
サムスンが不利な理由とは
前回述べたように、TSMCは米国や日本と緊密な関係を構築するため、果敢な投資を実行しており、その投資額は毎年サムスンの約3倍になっている。半導体はタイミングを見極めることが重要な産業であり、果敢な投資が勝敗を決めることが多い。
その反面、サムスンはメモリ分野に投資をしながらファウンドリ部門に投資をしているため、ファウンドリ部門への投資額はTSMCほど多くはない。その結果、世界シェアにおいて、TSMCに大きく引き離されている。2位のサムスン電子は米国に180億ドルを投資すると発表しているが、時期など詳細な計画は何も決まっていない。
また、3nmの技術開発はTSMCより先に成功しているものの、量産化では遅れを取っている。このような状況が続けば、サムスンはTSMCとの差を縮めることができなくなる可能性があると懸念する声もある。現在、完璧な歩留まりと品質で5nmのチップを量産できるのは、世界でTSMCのみであるが、そのTSMCが2nmの工程開発にも成功したというニュースが報道され、サムスンの関係者は衝撃に包まれている。
加えて、韓国の政府機関の調査によると、法人税の負担において、サムスン電子は27.7%であるのに対して、台湾のTSMCは11.5%にすぎないという。世界各国の政府が半導体産業を国の戦略産業として捉えて各種支援策を打ち出しているなかで、韓国の法人税率は韓国企業に重荷となっており、競争力低下につながることが憂慮されている。サムスンはTSMCとの差を縮めるためには、メモリ分野で行ったような迅速な意思決定と果敢な投資が必要になるが、副会長イ・ジェヨン(李在鎔)氏が刑務所に拘束されている状況のため、迅速な意思決定を行いにくいと指摘されている。
このような状況で、半導体の製造最大手のTSMCには注文が殺到しており、半導体を増産するためには設備投資などに2~3年はかかるため、半導体不足が起こっている。半導体はただ投資のみを行えば製造できるものでないため、TSMCの独走が長く続く可能性が高い。TSMCは主な顧客がある米国だけでなく、部品、素材などの最先端技術をもっている日本にもR&Dセンターや工場を設けて、サムスンと水をあけようとしている。半導体をめぐる米国、日本、中国、韓国、台湾などの動向が注目されている。
(了)
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