【再掲】2050年代を見据えた福岡のグランドデザイン構想(36)~新福岡空港のまとめと課題解決
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C&C21研究会 理事 下川 弘 氏
これまでに検討してきた新福岡空港島(案)が、現・福岡空港が抱えている5つの課題を解決できるかどうかについてまとめてみる。
(1)容量限界の解消
オープンパラレル方式による同時離発着を可能にすることで、増設滑走路完成後の容量限界にも対応可能である。
(2)市街地の安全確保
航空機事故が最も発生しやすいと言われるのが、離発着時である。空港自体が海上移転となることで、市街地へ被害がおよぶような事故の危険性が減少する。
(3)市内の高さ制限の解除
新福岡空港として海上移転することで、福岡市中心市街地にかけられている航空法の高さ制限が、広範囲にわたり解除されることになる。つまり、「天神ビッグバン」や「博多コネクティッド」などの国家戦略特区を活用した建物の高さ制限緩和の比ではなくなる。
(4)24時間利用可能
これから30~50年先を見据えた国際化社会の一員として、福岡市が成長し続けるのであれば、24時間利用の国際空港は必要不可欠である。4,000m滑走路2本、3,000m滑走路1本を備えた新福岡空港は玄界灘の沖合に位置し、24時間利用可能となる東アジア屈指のハブ空港となるだろう。
(5)環境対策費の削除
最高裁判決で示された騒音対策をはじめとした毎年支払われている高額な環境対策費については、空港移転にともない必要なくなる。ただし一方で、これまで補償を受けていた方々は空港移転に大いに反対すると考えられるため、国は跡地活用の方向性をきちんと示す必要があるだろう。
これまで複数回にわたって、2050年代を見据えた福岡のグランドデザイン構想を考えるにあたって必要不可欠となる、24時間利用可能な新福岡空港の構想について論を展開してきた。今回示したように、新福岡空港島(案)は、現・福岡空港が抱える諸問題を解決したうえで、福岡市のさらなる持続的な成長を支えてくれることだろう。
だが、真に福岡市が都市として今後も成長していくためには、新福岡空港の移転計画だけでなく、広大な現空港敷地の跡地活用についても同時並行で考えていかなければならない。
というのも、現空港の敷地面積は約350ha。現在、さまざまな跡地利活用策が検討されている東区の九大・箱崎キャンパス跡地が約50haであることと比較すると、実に7倍もの広さだ。そのため、跡地活用の方向性によっては、福岡市にどれだけ大きなインパクトを与えるかがおわかりいただけるだろう。
次回からは、現空港の跡地活用の方向性について、新たに論を展開していきたい。
(つづく)
<プロフィール>
下川 弘(しもかわ・ひろし)
1961年生まれ、福岡県出身。熊本大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程を修了後、87年4月に(株)間組(現・(株)安藤・間)に入社。建築設計第一部や技術本部、総合企画本部企画部などを経て、99年1月には九州支店営業部に配属。その後、建築営業本部やベトナム現地法人、本社土木事業本部営業部長などを経て、2020年9月から九州支店建築営業部営業部長を務める。社外では99年9月からC&C21研究会事務局長(21年8月から理事)を務めるほか、体験活動協会FEA理事、(一社)日本プロジェクト産業協議会の国土・未来プロジェクト研究会幹事、(一社)防災教育指導協会顧問など数々の要職に就いている。関連キーワード
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