【企業研究】2032年に3,000店舗・売上高3兆円 ニトリの野望実現に向けた道のり(後)
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ニトリホールディングスの2021年2月期は売上高が前期比11.6%増の7,169億円、営業利益が28.1%増の1,377億円となり、34期連続で増収増益を達成し、営業利益率も19.2%と高い水準を維持した。32年には3,000店舗・売上高3兆円という遠大な目標を掲げているが、その実現に向けて新たな動きを活発化させている。
商品展開では、「シンプル」「ナチュラル」「ビンテージ」「フェミニン」「和」の5つのスタイルを提案。それぞれのスタイルに合ったアイテムを商品開発スタッフがバイヤー、マーチャンダイザー、クリエイターと緊密に連携しながら製造部門も巻き込んで、企画先行の商品開発を行っている。さらに、全体像がわかるマトリックスを描いて、社内で意思統一し、全品種でコーディネート商品の一定枠を設定し、単品レベルでのバラツキも防止している。
色や柄などに女性の感性をとり入れるため、スタッフの女性比率は企画部門で70%、テキスタイルセクションでも50%に達している。体制を強化するためにデザイナーを大量採用し、人員は3倍に増えた。商品開発は企画・コンセプトづくりから始まり、カラー、モチーフ、素材などのトレンドを読み取り、海外の展示会にも頻繁に出向いて綿密にリサーチ、企画書を書き上げ、直近の市場動向も加味して着手する。
商品を発売してからも、顧客の反応や生活者の嗜好の変化を見極めて修正も行っていく。ナチュラルでは北欧モダンの柄から、麻やコットン素材や無垢の板といったより自然な風合いを求める傾向が顕著となり、ビンテージでもミッドセンチュリーが注目を集めており、トレードオフでそれらしい風合いのものに変えていこうとしている。トレンド対応については、流行をいち早く取り入れるトレンドセッターではなく、一般層を意識し、半歩先を見据えて取り組んでいく。
コーディネートの取り組みを拡充しているニトリだが、即売上に結びつくわけではない。前述したように、日本ではコーディネートを楽しむ層が限られているからだ。しかし、最近は家に人を招き入れ、インスタグラムなどSNSで自宅を公開するといった傾向も高まり、ミレニアム世代の登場で意識も変わりつつある。
そうした流れを追い風にしながら、ニトリ自身もSNSを積極的に活用して情報を発信している。従来メディアのカタログについても、気軽に始められるコーディネートのヒントを紹介した「スモールコーディネートブック」を投入、売り場でのルーム提案やVMDも強化する。
その一方で、ニトリは機能性商品にも力を入れ、拡充に取り組み、顧客の支持を集めている。ひんやり接触冷感の「Nクール」は、シリーズで5,000万枚を超える大ヒット商品となった。最近では、こうした商品群でもコーディネートを意識したアイテムを開発し、スタイル提案に組み込み、売り場で訴求している。「Nクール」の布団や敷パッドに、遮熱性のカーテンを売り場でコーディネート提案するといった展開も行っていく。ニトリの絶対的な強みである機能性アイテムでコーディネートを可能にすることで、より魅力を高め、新たな購買動機にも結び付けようとしている。
今後は新たな顧客の取り込みを目指し、プライスブランドの「デイバリュー」との差異化をより明確にし、クオリティーブランドである「アンドスタイル」の取り組みも強化しようとしている。
ニトリには、32年に3,000店舗・3兆円に拡大させる目標がある。その野望を実現するためには、さらなる次の一手が必要だ。成長が期待される海外事業は中国34店舗、台湾35店舗、米国2店舗で、前期の出店は台湾の5店舗。中国をはじめとするアジア市場での展開がカギを握るが、その実現にはまだまだ道のりは遠いといわざるを得ない。
そこで国内での成長が不可避となるが、そのためにはさらなる新事業に着手することが求められている。似鳥会長も、衣食住でより良い暮らしを実現すると明言し、新たなマーケットに進出することは確実とみられる。当然M&Aが有力となり、対象企業としてスーパーやドラッグストアも視野に入れていることだろう。
(了)
【西川 立一】
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