2024年11月17日( 日 )

食品スーパー大手ライフコーポレーションの清水信次会長が現役引退~驚嘆!95歳まで現役の経営トップを貫いた超がつく「怪物経営者」(3)

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 大手スーパー「ライフ」を展開する(株)ライフコーポレーションの創業者、清水信次氏の現役引退が報じられた。(株)ダイエーの創業者の(故)中内功氏、(株)イトーヨーカ堂創業者で、(株)セブン&アイホールディングスの名誉会長・伊藤雅俊氏、ジャスコ創業者で、イオン(株)名誉会長・岡田卓也氏と同じ、日本に流通革命をもたらしたスーパーの第1世代だ。同世代の創業者が現役を退くなかで、清水氏は現役の経営者であり続けた。超がつく「怪物経営者」である。

秀和が買い占めた流通株

株 マーケット イメージ 秀和が買い占めた流通株は、(株)東京スタイル、(株)マルエツ、(株)いなげや、(株)松坂屋、(株)伊勢丹、(株)長崎屋、イズミヤ(株)、(株)忠実屋。秀和がこれら流通株に要した資金は2,500億円にのぼった。

 秀和に株を買い占められた企業のなかで、貧乏くじを引いたのは、老舗百貨店の伊勢丹の4代目社長・小菅国安氏だろう。秀和に買い占められたばっかりに、次々と失態を重ね、1993年5月、社長辞任に追い込まれた。実質的な解任だった。

 そもそも秀和が伊勢丹株を買い占めるきっかけについて、小林氏はある経済雑誌で、こう語っている。小林氏が仲人を務めた結婚式に、小菅氏が出席を断ってきたからだという。小林氏が伊勢丹株を買っているからという理由だ。これで激怒した小林氏は伊勢丹株を25%買い占めた。最終的に、メインバンクの三菱銀行が乗り出し、秀和が買い占めた伊勢丹株を買い戻し、小菅氏に引導を渡した。

 清水=小林連合は流通株を買い占めていったが、バブルが弾けて秀和の資金繰りが破綻。秀和の救済に乗り出したのが中内氏のダイエーである。忠実屋、マルエツなど秀和が買い占めた流通株を担保に1,100億円融資した。

 首都圏への進出が遅れたダイエーは、マルエツと忠実屋を喉から手が出るほど欲しかった。担保権を行使して、ようやく手に入れたが、こんどはダイエーが破綻。イオンがダイエーを完全子会社化した。この時期、今日の流通地図を形成することになる「スーパー三国志」が繰り広げられたのである。

生き残ったのは、ライバルたちが慢心を防いでくれたから

 清水氏の中堅スーパー大同団結構想は志半ばに終わった。ここで引いたことで、ライフは生き残った。あのとき、秀和が買い占めた流通株をライフが引き受けていたら、ダイエーの二の舞になった可能性がある。

 清水氏は、生き残った理由を、「ライバルたちが慢心を防いでくれた」と述懐している。

 社外の交友関係でも、旭化成の宮崎輝さん(元社長)、小松製作所(現・コマツ)の河合良成さん(元社長)といった大先輩が「いちばん大事なのは己を知り、足るを知り、とどまることをしることだ」「必ず物事には終わりがある」「おカネも権力も自然に集まるのはいいが、追いかけるのは危険だよ」などいってくれた。

 そもそも僕は自分が偉いと錯覚したことはない。(中略)流通業界には伊藤雅俊さん(セブン&アイ名誉会長)、岡田卓也さん(イオン名誉会長相談役)、中内さん(ダイエー創業者)らがいるんだから(『東洋経済オンライン』2012年1月4日付)。

 清水氏は後年、週刊誌のコラム「政財界交遊録」で、セゾングループの堤清二氏についてこう綴った。

 (堤さんは)4兆円を超えたところで(ダイエーの)中内さんと同じように崩壊した。人間の欲望ってきりがないもの。もっともっと大きくしたいと思ったらつぶれちゃう(『週刊朝日』17年1月27日号)。

 清水氏の商売の哲学は「足るを知る」ことにある。とどまることを知る。100歩のところを50歩で立ち止まる。ものには必ず終わりがくるからだ。ダイエーの中内氏、セゾンの堤氏は、とどまることを知らなかったため、会社を潰してしまったというわけだ。

(つづく)

【森村 和男】

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