2024年11月23日( 土 )

【コロナ禍 持続化給付金詐取を追う】鹿児島市の対応と見解について(後)

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 欲得のために制度を悪用し、国民の血税を自分の懐に入れる─コロナ禍の救済策の一環として国および各自治体が支給している持続化給付金などを、騙し取る事件が後を絶たない。

送達場所等の届出書
送達場所等の届出書

 甲社は、鹿児島市・下鶴隆央市長あてに2021年6月10日、告発の義務履行の申立書および要請書を内容証明郵便で届けた。申立書および要請書は受け取ったものの、鹿児島市は告発を拒んだ。

 甲社が鹿児島県警に対して詐取事件の相談を行い、鹿児島市に対して事業継続支援金詐取の経過を説明して刑事訴訟法第239条第2項に基づく告発を要請しても、まったく聞く耳をもっていないとのことで、当社に情報がもたらされた。

 当社が鹿児島市にて、甲社の代理人と鹿児島市を取材したところ、代理人は、「違法行為であることは事実です。鹿児島市は、すみやかに刑事告発してもらいたいです。A氏以外、誰も知らないことです」とコメントした。

 鹿児島市・産業局産業振興部産業支援課の担当課長は、「回答は甲社側に文書にて伝えた通りであり、変更はありません。市は申請書類に不備がなければ、受理いたします。申請内容が不正かどうかは、我々にはわからないし確認しようもありません」とコメントした。

義務履行の申立書
義務履行の申立書

 筆者が「下鶴市長宛の義務履行の申立書と要請書は、下鶴市長はご覧になっておりますか?」と質問したところ、担当課長は「市長の手元には届いておりません」と回答。「内容証明郵便で送りましたが、それでも下鶴市長にお見せにならなかった理由は?」と筆者が再度質問したところ、担当課長は「局内で処理できると判断したから」と回答した。筆者が「公金=税金が使われている制度を悪用したことは明白です。それでも告発しないのですか?」とさらに質問すると、担当課長は「市の対応に不備はありませんので、現状告発することはありません」と回答した。

 今回の取材で、事実として明らかになった事項は、以下の通りである。

1.甲社代表がA氏に法人実印を預けてしまったこと
2.甲社代表が知らない間にA氏により法人口座(以下、「別口座」)が開設されたこと
3.甲社の名義で「鹿児島市事業継続支援金」の申請がなされ受理されたこと
4.「鹿児島市事業継続支援金」30万円が、「別口座」に振込済であること
5.30万円はすでに引き出され、「別口座」にはないこと
6.甲社代表は「別口座」の存在すら知らなかったこと

 甲社の関係者は、下記のように話し、決意を述べた。

 鹿児島の県民性は現在も排他的・閉鎖的であり、ある意味で前近代的な風土がいまだに蔓延しております。薩摩藩として江戸期に72万9,000石を治め、明治維新および新政府樹立時の立役者としてのプライドを現在も有しております。つまり、薩摩藩のプライドは、「我々が近代国家の礎を築きあげたものである」ということです。

 鹿児島県の役人は口では「鹿児島県と我が国の発展と安全・安心のため」などと立派なことを言いながら、極めて実行力がないものです。つまり、ことなかれ主義であり、広域にわたる事案、難しい事案、ややこしい事案、高度な知識を有する事案はやりたがらないと言わざるを得ないものです。役人同士は裏では、「お手手つないで」によって、難儀は回避するのです。これが鹿児島県の現状です。

 今回の事業継続支援金の不正受給が明らかでも、まったく対応しません。今般の案件以外でも、「不正受給に利用された」とする旨の相談が複数件あり、氷山の一角です。日本警察の父と呼ばれた初代警視総監・川路利良は、薩摩藩与力の出身です。警察トップの警視総監の初代は鹿児島から出ており、今日まで多くの逸材を中央に排出しているものです。だからこそ、むしろ川路を輩出した矜恃こそ必要ではないでしょうか。金額の問題ではありません。不正が明らかであるので、見過ごす訳にはいきません。

   当社も同様であり、今回の1件について今後も徹底的に取材と発信を実施することを宣言する。

 コロナ禍での公金による支援を悪用した不正受給。不正受給を細部まで明らかにして訴えても、告発を拒む鹿児島市。そして市のトップである下鶴市長に、訴えの声を挙げない行政の体質─不正受給は絶対に許されないことであると同時に、鹿児島市の対応と体質についても問題を提起したい。

 当社は今後、今回の事件をきっかけにして、持続化給付金に関わる不正受給についての調査を実施していく。すでに鹿児島市および九州圏内から情報が寄せられている。

(了)

【河原 清明】

(前)

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