ユニデンHD、前代未聞の株主総会 独裁者・藤本前会長と決別(中)
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株主総会の参加は役員のみ。新型コロナウイルスから「生命と健康を守るため」として、株主総会への株主の来場を拒否。ネット中継もなく、後日、結果が通知されるだけ。こんな前代未聞の株主総会を開いたのが、無線通信機器メーカーのユニデンホールディングス(東京都中央区、東証一部上場)。1966年の会社設立から2020年の退任まで55年間にわたって独裁者として君臨してきた藤本秀朗・前会長(86)から決別するためだ。
物言う株主が監査役の解任要求
投資に使われる指標にPBR(株価純資産倍率)がある。株価を1株あたりの純資産で割ったもので、株価が割安か割高かを判断するための指標。株価が1株あたりの純資産の何倍で買われているのかを見る。PBRは6月30日時点で0.5倍、時価総額は147億円程度。不動産(簿価225億円)や現金(158億円)を潤沢に保有。アクティビスト(物言う株主)から狙われる典型的な企業だ。
これまで日本のヴァレックス・パートナーズや米国のコーンウォール・キャピタル・マネジメント、香港のリム・アドバイザーズといった投資ファンドがユニデン株を取得。ユニデン株の約25%を握っている。
このうち、アクティビストのリムは、米国における子会社の会計を見逃した監査役の黒田克司氏と藤本節雄氏の解任などを求めて株主提案した。藤本節雄氏は、創業者にして大株主であり代表取締役でもあった藤本秀朗氏の実弟。独立性が求められる監査役にふさわしくないと問題視されていた。
議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が株主提案に賛成を推奨した。
両監査役解任の株主提案は3分の2以上の賛成が得られず否決されたが、賛成が過半数を上回っており、事実上の不信任を突き付けられた格好だ。創業者の藤本秀朗氏と決別する新体制は厳しい船出となった。
トランシーバー、コードレス電話で当てる
ユニデンHD創業者の藤本秀朗氏は1935年6月14日生まれの86歳。1966年に会社を設立以来、55年間、超ワンマンとして君臨した。その事業家人生は浮き沈みが激しいものだった。
藤本氏は東京都出身。10代のころから商社マンとして米国で活躍することを夢見ていたという。60年に日本大学商学部を卒業し、中堅輸出商社のツルミ貿易(株)に就職。入社2年目で米国駐在をはたした。
藤本が電機業界に足を踏み入れた理由は、米国でトランシーバー製造会社の経営再建に関わったこと。66年、藤本氏はツルミ貿易からこのトランシーバーメーカーの株式を買い取って、ユニ電子産業(株)(現・ユニデンHD)を設立した。
日本で生産したトランシーバーを米国にOEM(相手先ブランドでの生産)で輸出。76年には売上高が400億円を突破するまでに急成長した。ところが、トランシーバーブームが去り、大量の在庫を抱え、倒産の危機に陥った。
80年代からは、生産品目をコードレス電話、衛星放送受信機に変え、世界で一番安く製造できる新興国で生産した。コードレス電話で業績を持ち直し、90年に東証一部に指定され、目標だった1部上場を成し遂げた。
(つづく)
【森村 和男】
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