【コロナで明暗企業(8)】海外旅行が蒸発したエイチ・アイ・エス~ハウステンボス売却計画の衝撃!(2)
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新型コロナウイルスの流行はいまだ収束せず、旅行することはまだ難しい。コロナ禍で需要が蒸発した旅行業界のなかで、エイチ・アイ・エス(HIS)は海外旅行が主体であるだけに打撃が大きい。ワクチン接種による国内旅行の回復に期待がかかるが、7月12日、東京都に4回目の緊急事態宣言が出された。ドン底から抜け出す光明は見えてこない。同社は生き残るために、なりふり構わず資産売却に動き出した。
海外旅行の取扱高は「ほぼゼロ」
HISは旅行大手3社のなかで最も旅行事業の落ち込みが大きい。観光庁によると、コロナ禍の渦中にあった2020度(20年4月~21年3月)の旅行取扱高は(株)JTBが19年度比73%減、近畿日本ツーリスト(株)を傘下にもつKNT-CTホールディングス(HD)(株)が78%減ったが、HISは94%減。海外旅行の比率(コロナ前は80%)が最も高いためだ。
HISの中間期の海外旅行の取扱高はほぼゼロだ。海外旅行が持ち直さないと業績の回復につながらない。澤田氏は「国内旅行(の売上高)をコロナ前の4倍にする。会社全体が揺らがない体制をつくる」と述べ、海外旅行“一本足打法”を見直す考えを示した。
ワクチン接種が順調に進めば、今秋から徐々に回復するとみており、22年10月期の黒字化を目指す。旅行事業の売上高がコロナ前の19年10月期並みに回復するのは、23年10月期と見込む。
だが、ワクチン接種率は先進国で最低。東京オリンピック・パラリンピックの開催を目前にした7月12日から、東京都で4回目の緊急事態宣言が出された。海外旅行の回復時期はまったく見通せない。
第三者割当増資、政投銀の緊急融資、本社売却で乗り切る
この間、どうやって切り抜けるのか。HISは昨年12月11日に開いた、250億円の最終赤字を出した20年10月期の決算説明会で、海外の従業員と拠点を削減する大リストラ計画を発表した。21年度までに海外の人員を一時解雇などで19年度に比べて3割削減し、4,700人にまで減らす。海外拠点も35%減の175カ所にする。海外子会社も再編する。
国内では100店舗を削減。社員は新規事業や成長部門へ配置転換し、人員削減は行わない。旅行商品のネット販売も強化する。
緊急を要するのは資本増強策だ。昨年10月19日、第三者割当増資や新株予約権の発行で222億円を調達した。増資は香港の投資会社、Long Corridor Alpha Opportunities Master Fund(LMA)とMAP246 Segregated Portfolio(MAP246)、新株予約権は同2社と澤田秀雄会長兼社長が引き受けた。
資本増強の内訳は、第三者割当増資による新株発行が80億円、新株予約権の発行が146億円。発行費用を除いた合計222億円がHISの手取り調達額になる。
今年6月に行った中間決算の発表の場で、政府系の日本政策投資銀行に資本支援を要請したことも明らかにした。さらに、東京・虎ノ門の本社フロアを325億円で売却する。この一連の資本増強策により、21年4月末時点で15.1%ある自己資本比率を20%以上に引き上げる。
(つづく)
【森村 和男】
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