2024年11月13日( 水 )

【衆院選2021】保守分裂含みで注目の「福岡5区」 野党共闘なるか 立民・堤かなめ氏

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 9~10月に行われるとされる次期衆院選、福岡5区は自民党候補が並び立つ「保守分裂」選挙となることが濃厚で、全国でも注目の選挙区だ。立憲民主党は同区に福岡県議を3期務めた堤かなめ氏(60)を擁立することを決めている。
註 福岡5区=福岡市南区の一部、筑紫野市、春日市、大野城市、太宰府市、朝倉市、那珂川市、朝倉郡

(聞き手= (株)データ・マックス代表取締役社長 児玉 直)

災害対策とジェンダー平等~共働き家庭を支える制度づくり

堤かなめ・福岡県議(立憲民主党) ――残念ながら福岡の選挙区は、与野党含めて女性の立候補者が少ないですね。立憲民主党の坪田さん(坪田晋/福岡1区)など、若い候補者の方は何人かいらっしゃいますが。

 堤かなめ(以下、堤) そうなんです。女性候補者は私の他に11区に社民党の志岐(玲子)さんが出るくらいだと思います。女性候補が少ないのは残念ですね。

――前回2017年、福岡5区は希望の党から立った楠田大蔵さん(現・太宰府市長)と日本共産党の票を足せば、当選した原田義昭氏(76/自民党)とほぼ互角でした(註)。自民党の支持率が低迷していますので、仮に自民党が一本化しても野党共闘できれば良い勝負になりますし、一本化できなければ勝てる可能性がかなり高まるのでは。政策面では何を訴えますか。
※註 【現】原田義昭氏=12万3,758票、楠田大蔵氏=9万6,675票、田中陽二氏(日本共産党)=2万4,715。楠田氏と田中氏の得票数を合わせると12万1,390票となり、原田氏との差は2,368票。

 堤 選挙区内の朝倉市周辺が豪雨被害に遭ったように、いまは自然災害が増えており、県内では毎年のように自然災害が起きています。これを根本的に解決するのは地球温暖化対策だと考えています。早急に二酸化炭素(CO2)排出量の削減を進めなければなりません。そのためには自然エネルギー立国政策が必要で、立憲民主党が打ち出している政策を本気で進めなければなりません。日本は化石燃料(石炭・石油)の輸入に年間20兆円を費やしています。これが不要になればもっと自然エネルギーの研究開発や普及と実用化に資金を投入できますし、地域で経済を回すことで雇用も生まれます。地域循環型経済を展開してグローバル経済から脱却しないと、どんどん富が海外に流れていく状況にもあります。この20年間、日本は労働者の賃金が低迷する一方で株主への配当金はどんどん増えています。資本金10億円以上の企業で賃金が低迷するなか、株主配当は20年間で6.2倍にもなっているのです。株主のなかには外国人投資家もいますし、日本人が汗水たらして働いた成果が一部の富裕層や海外投資家に流れているという状況を改善しないといけません。よく「トリクルダウン」と言われますが、一般国民のところまでまったく「滴(したた)り落ち」ていないのが現実です。

 ――貧富の格差も拡大・固定化しています。まずは消費税をどうにかすべきではないですか。

 堤 立憲民主党は分離課税を国際標準にする政策を出していますし、株の配当と累進課税も強化して「消費税廃止」まで視野に入れるべきだと個人的には考えています。

 ――女性の地位向上は堤さんの専門分野ですね。

 堤 ジェンダー平等に関していうと、日本はもはや先進国ではないと言われています。ジェンダー平等指数でいくと世界の国々のなかで120位まで落ちており、先進国では最低の順位です。日本は1985年に女性差別撤廃条約を批准したのですが、36年経過するなかで他の先進国が着々と政策を打って女性の地位向上を進めてきたにもかかわらず、日本は本気で取り組むことなく古い価値観にとらわれたままでした。

 ――女性の地位を向上させる突破口となるような政策がありますか。

 堤 政策としては待機児童問題を早く解消すべきですし、配偶者控除をなくすべきだと考えています。これは中小企業経営者で同じ意見の方が意外に多くて、「女性にたくさん働いてほしいのに、すぐに配偶者控除の上限に達してしまうので難しくなっている」という声を良く聞きます。立憲民主党の政策として掲げているわけではありませんが、ほとんどの世帯が共働きを前提としている現状では、子育てと仕事が両立できる政策とともに、働きたい方が自由に働くことができるように制度を変える必要があると思います。

 ――確かに、いまほとんどの家庭が共働きです。むしろ、共働きでないと普通の生活ができなくなっていますね。

 堤 景気動向によって失業することもあれば、病気になって働けなくなることもあります。人生にはさまざまなリスクがありますので、家庭における「リスク分散」という意味でも夫婦が2人とも働ける環境にあること、さらにリスクが男性に偏ることなくワークライフバランスがとれるような、そんな働き方に変えていくことが必要だと思います。年金なども配偶者控除の下では年金額が少ないんですね。配偶者控除をなくしたほうが長期的にみるとよりお得でもあるのです。これまではフルで働きたいという女性が少なかったのですが、いまは働かないと子どもたちの教育費にもまわせないという現実があります。前の民主党政権時代には「配偶者控除をなくす」としながらも達成できませんでした。今度はぜひやっていただきたいと枝野(幸男)代表にも直接訴えています。

 ――そうした政策を充実させれば人口も増えていくのでしょうか。

 堤 じつは、共働きでジェンダー平等が進んでいる国の方が出生率が高いんです。女性はずっと家にいて、子どもを産んで育てるのが仕事、のような考え方では逆に出生率が低くなる傾向があります。

街頭演説で手ごたえ~共産党の選挙協力は

 ――人口減はより危機的状況になっていて、たとえれば「久留米市(人口約30万人)が毎年1つずつ消える」ような局面に入りました。福岡県内でも不動産価値のない土地が増えてきているので、九州全域でみた場合はそんな土地のほうが多いと思います。人口問題は喫緊の課題です。

福岡5区で立候補する、堤かなめ・福岡県議(立憲民主党)
福岡5区で立候補する、堤かなめ・福岡県議(立憲民主党)

 堤 「婚活パーティー」を開くよりも、安心して結婚できる、安心して子どもを産めるという環境整備に力を注ぐほうが大事だと思うのです。ようやく幼児教育と高校が無償化されましたが、まだまだです。子どもたちの教育にお金がかからないようにしないと。国立大学に進学するのだって、私たちのころと比べたら異常に高騰していますから(註)。
※註 昭和50(1975)年の国立大学入学金は「5万円」、同授業料は「3万6,000円」。令和3(2021)年度の国立大入学金は「28万2,000円」(1975年比で5.64倍)、同授業料は「53万5,800円」(1975年比で約14.9倍)。

 ――確かに、福岡でもそれなりの所得層のサラリーマンじゃないと東京や大阪の私立大学に進学させることはできなくなりましたね。奨学金を使っている家庭も多い。

 堤 留学する大学生も減っていますし、奨学金を借りたとしてもきちんと返せる仕事に就ける人が少なくなっています。もっと教育にお金をかけないと、国としては先細りするのではないでしょうか。

 ――まずは給料を上げることが必要でしょう。低く据え置かれたままでは、経済もまわりませんよ。

 堤 エッセンシャルワーカーの給与、とくに介護職や福祉職の給与を早急に上げる必要があります。待遇改善はもちろんですが、現状の給与額はあまりにも低すぎます。介護施設の経営者の方にお聞きしたことがありますが、経営自体は補助金である程度やっていけるんだけれど、経営者が補助金を給与としてきちんと配分していないという指摘もありました。私の兄は保育園を経営しているのですが、人件費比率が決められておらず、経営者の胸先三寸に任せられているんだそうです。だから、人件費比率の縛りが必要ではないかと思います。保育園だと、若い人を非正規で雇って人件費を抑える経営者も多いと聞きます。介護職だと長時間拘束されて高ストレスな割に給与額が低い。もっと人件費に予算付けできるような制度にすべきですね。

 これは私の夢ですが、高齢者施設と保育施設を一体化させると、お互いが良い影響を与え合えると思います。幼い子と接することで高齢者は元気になりますし。さらに障がい者施設も加えた複合的施設をつくり、農業と福祉の連携も進めたいですね。

 ――選挙では共産党との連携も必要になるのでは。福岡は保守が強いといわれていますが、前回選挙の結果などをみると、野党が一本化することで勝てる選挙区は意外に多いんですよね。

 堤 枝野代表も、「一本化して勝てる地域ではなるべく一本化したい」とおっしゃっていますので、(福岡5区でも)おそらくその方向性があるのだろうと。ただ、まだはっきりと党本部の決定というかたちにはなっていないようです。特に現場レベルで共産党さんとの話し合いなどは行っていませんが、いざ方針が出れば共産党さんは動きが速いので、都議選の結果なども詳細に検討しつつ発表の時期をみていらっしゃるのかなと思います。

 ――5区の有権者の反応はいかがですか。

 堤 ほぼ毎日、街頭や駅に立って政策を訴えていますが、車から手を振ってくれる方などが少しずつ増えてきて、手ごたえを感じています。地元ということもあって、駅では中高生時代の友人に声をかけてもらいました。民主党時代の選挙では苦情を言われることも多かったのですが、今回はお電話で「前回は楠田さんに入れたけど、あんたを応援するバイ」という声もいただきました。そういう期待とみなさんの声を大切にして、国政の場に届けていきたいと思います。

 

【まとめ:データ・マックス編集部】


<プロフィール>
堤 かなめ

1960年生まれ。太宰府市出身。県立筑紫丘高等学校を経て九州大学文学部英語学英文学専攻卒業。KDD国際電信電話に勤めたのち、九州大学大学院で社会学を専攻(修士課程修了)。1993年九州国際大学講師、95年スウェーデンのカロリンスカ研究所で客員研究員、98年九州国際大学助教授、01年に教授。02年イギリスのサリー・ローハンプトン大学にて客員教授。05~08年九州女子大学教授。09~13年九州大学大学院人間環境学府非常勤講師。2010年7月、参議院議員選挙(福岡選挙区)で17万6,149票を獲得。2011年4月、福岡県議会議員選挙(博多区選挙区)で初当選。現在3期目
HP:https://www.kaname2010.org/

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