(株)ジャパンシーフーズと熊大、アニサキスの新たな殺虫方法開発~発想を転換「見えぬなら殺してしまえアニサキス」
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大電流を流して殺虫
水産加工を手がける(株)ジャパンシーフーズ(本社:福岡市南区、井上陽一代表)と熊本大学は、魚介類に寄生する「アニサキス」を殺虫する方法としてパルスパワー※を用いた新たな装置を開発した。
刺身などに含まれる生きたアニサキスが人の胃に侵入すると、アニサキス食中毒になり、激しい腹部の痛みや嘔吐などを引き起こしてしまう。これまで、刺身向けのアニサキスの殺虫方法は冷凍しかなかった。しかし、冷凍することで退色、食感の軟化などの品質劣化を招くうえに販売の際は「解凍」表示が必要なことから商品価値の低下を招いていた。
今回の同社と熊本大学産業ナノマテリアル研究所による共同研究では、魚身に電流を瞬間的に流すことで、魚身の温度上昇を抑えることが可能となり、その結果、解凍品に比べて品質の劣化が少なくて済むため今後、冷凍に変わる新たな殺虫方法として期待される。
今後の3つの目標
同社は数年前からエックス線、テラヘルツ波、近赤外線などによってアニサキスを発見すべく研究を重ねていたものの、どれもうまくいかなかったという。そこで「見えぬなら殺してしまえアニサキス」(同社・井上代表談)に発想を転換し、いかにアニサキスを殺虫するかについての研究を開始。試行錯誤の日々を送っていた。そんななか、以前、アニサキスの殺虫方法について相談した福岡大学電気工学部から熊本大学産業ナノマテリアル研究所を紹介され、今回の共同研究の実現に至った。
同社の井上代表は今後についての3つの目標を掲げる。第一は「量産体制の確立」。現在のプロトタイプ機は「バッチ式」と呼ばれる1つの場所に魚身を入れて処理を行うものだが、次世代機ではベルトコンベア上に魚身を入れて処理を行う「連続式」と呼ばれる機械にして量産体制を整える。
第二は「安全面の徹底」。パルスパワーは1万5,000ボルトという高電圧を発生させるため、ちょっとした気のゆるみが大事故へとつながりかねない。そのため、装置の運用には細心の注意を払っていく。
そして、3つ目が「パルスパワーによるアニサキスの殺虫方法を広める」こと。「この殺虫方法であれば、安心して刺身が食べられる」と世間に広く認知されることを目指す。
日本の生食文化を守る
井上代表は、「和食がユネスコ無形文化遺産に登録されました。それに刺身や寿司が大きく寄与していることは疑いの余地がありません。食品メーカーは“安心・安全”な食品をお届けするのが責務である一方、“おいしい食品”をお届けする使命もあると思っています」とし、「今回のパルスパワーによるアニサキス殺虫技術を独占するつもりは毛頭ありません。この技術を水産業界全体に広め、それが和食文化、生食文化を守ることにつながればと考えています」と生食文化への貢献に意欲を燃やしている。
【新貝 竜也】
※ パルスパワー:200V(もしくは100V)の電源から電気エネルギーをいったんコンデンサに蓄積し、これらをマイクロ~ナノ秒レベルで取り出すことによって得られる瞬間的超巨大電力のこと。 ^
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