2024年11月22日( 金 )

矢西建設の「蹉跌」~絶好調企業に何が起きているのか(4)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

 特殊重機を数多く保有し、近年では大規模な太陽光発電事業の造成工事を多数受注して増収増益を続けてきた矢西建設(株)。コロナ禍に沈む業界にあって数少ない絶好調企業の1つとして知られていた。しかし今、同社に出入りする社員を見かけることはほとんどなく、さらに将来性についても「不穏な噂」が一定の信ぴょう性をもって流布されるようになっている。矢西建設に何が起きているのか? データ・マックスがつかんだ最新の情報をお届けする。

第3の異変~中興の祖・西川貞紀氏の“奔放”

矢西建設本社
矢西建設本社

 71歳の貞紀氏には現在、結婚を前提に交際している女性がいる。女性はフィリピン出身のEさん。Eさんは貞紀氏より35歳ほど年下の30代前半で、矢西建設の本社内でもEさんが甲斐甲斐しく貞紀氏の世話を焼く様子が目撃されている。貞紀氏は矢西建設の事業について「国内のマーケットは飽和状態で先がない」と語ってフィリピンへの事業移転を計画しているが、その計画の発端となったのがこのEさんの存在だという。

 「フィリピンのドゥテルテ大統領の娘が、今の彼女の友人なのです。できればそのまま会社をフィリピンにもっていきたいが、もしそれができなくてもフィリピンに進出する方針は変わりません」(貞紀氏)。

 矢西建設は現在施行中の工事を最後に受注できない状態になっているとされ、早期のフィリピン進出を目指す構えだが、具体的な計画については「白紙」だという。

第4の異変~本社屋に根抵当設定と謎の新設会社

 これまで挙げた3つの異変に加え、最後に2つの事実を提示したい。矢西建設のメインバンクである西日本シティ銀行は6月16日、矢西建設本社の土地と建物に極度額を3億円とする根抵当権を設定した。

 もう1つの事実は、「矢西(株)」が新設されたことだ。4月26日に設立された同社の代表取締役は、内田勝士氏。内田氏は今年1月まで矢西建設の代表を務めていた人物で、さらに取締役には山中和幸氏(矢西建設・元代表)、甲斐田幸治氏(同元取締役)、新開勝氏(同現代表)、木山武志氏(同現取締役)など、矢西建設の現代表である新開氏を含めた同社の現・元取締役がずらりと並ぶ。

 冒頭、業績絶好調企業=矢西建設のリスクについて分析することを本稿の目的としたが、結論を述べるなら、矢西建設にとって最大のリスクがオーナー「西川貞紀」氏の存在であることは疑いようのない事実だろう。取締役の離脱に加え、交際相手の言葉を鵜呑みにして確認しようのない伝手(つて)を頼りにフィリピンへの完全移転を決断するなど、その経営(判断)能力には疑問符をつけざるを得ない。さらに言えば、夜の街での奔放な金遣いは、中洲の遊びに慣れた者すら呆れさせるほど過激なものだという。

 西川氏は常々「オヤジは(売上)10億円を達成できなかったが、オレは60億円を突破した」と話しており、もともとは仕事一筋の現場人間を自負していた。仕事に厳しい分、利益を社員に還元することを意識したため同社の給与水準は高く、破天荒な西川氏を慕う社員も多かったという。しかし、いまや西川氏による矢西建設の私物化は限度を超えており、もはや社員とその家族が生活の拠り所とする同社の存続すら危ぶまれる状態に陥っている可能性もある。同社の今後は、取引先が現状をどう評価するのかという一点にかかってくるだろう。

 今、矢西建設の本社に残るのは経理を担当する3人の社員と代表の新開氏のみで、絶好調企業としてはあまりにも寂しい光景を晒している。企業は誰のものなのかを改めて問いかけたい。

(了)

【特別取材班】


<COMPANY INFORMATION>
矢西建設株式会社

代 表:新開 勝
所在地:福岡市早良区原1-41-3
設 立:1952年12月
資本金:2,000万円
売上高:(20/5)67億1,021万円

(3)

関連記事