九州発コロナワクチン、第I相・II相の臨床試験終了~熊本市のKMバイオ
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新型コロナ感染症を対象に、明治ファルマ傘下のKMバイオロジクス(熊本市)が開発中の不活化ワクチン「KD-414」の第I相・第II相の臨床試験が終了した。8月中に収集したデータを統計学的に解析した後、年内の第III相臨床試験への移行を目指し、厚労省・医薬品医療機器総合機構(PMDA)との協議に入る。
同社は東京大学医科学研究所、国立感染症研究所、医薬基盤・健康・栄養研究所と共同で3月から、福岡市の(医)「相生(そうせい)会」が経営する博多クリニック(福岡市)と「にしくまもと病院」(熊本市)で、健康な成人や65歳以上の高齢者を対象に国内第I・II相試験を実施した。
2回接種(1回あたり0.5cc)タイプのワクチン開発を目指しており、目標だった被験者210人に対する27日間隔での2回接種を6月中旬に終えた。不活化ワクチンは、ウイルスの毒性や感染力を失くしたワクチン。インフルエンザワクチンでは一般的だが、コロナワクチンでは国内初。
同社広報課によると、収集した被験者データをまとめる作業を進めているが、重篤な副作用例は報告されていないという。
データは8月中に社内で公開できる状態になる。ただ、大規模な被験者を対象にする第III相臨床試験に移行するためにはデータを統計学的に解析し、さらなる有効性と安全性を確認する必要があり、対外的な公開はその後になる。
新型コロナワクチンはすでに承認済みの製品が複数存在し、国内でも使われている。そのなかで被験者を2群に分け、一方に被験薬、他方に偽薬(プラセボ)を投与して比較する「ダブルブラインドテスト(二重盲検試験)」を実施するのは人道上難しい。このため代替策として、承認済みワクチンと優位性を比較して承認審査する方法が検討されている。
また、数万人規模の臨床試験の参加者を短期間に募ることは容易でない。参加者を数千人規模に縮小し、承認審査に必要なデータを迅速に集める方法も検討中だ。
一方、同社菊池研究所(熊本県菊池市)では、新型インフルエンザ用ワクチン原液の既存生産設備を、コロナワクチン原液の生産整備に改造する工事を進めている。来年3月末までに、半年間で3,500万回(1,750万人)分のコロナワクチンを量産する体制を整える。ただし、ワクチン原液を製剤化(バイアル充填・包装)する工程は別の工場を使う可能性があるという。
同社広報課は「今後の目標は年内の第Ⅲ相試験移行、22年度の厚労省の製造販売承認、23年度の市場供給」と話す。
コロナ感染の予想以上の拡大と長期化によって、海外に頼らない国産ワクチンや治療薬を求める声が高まっている。九州発コロナワクチンの出番が“前倒し”になる可能性も十分にある。
【南里 秀之】
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