ストラテジーブレティン(286号)テーパリングの先に見える長期趨勢(1)(後)40年間の金利低下トレンドの終焉と米国株リスク~
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は2021年8月26日付の記事を紹介。長期的金利と株価の関係は局面ごとに大きく変化してきた
それでは、長期金利の長期趨勢が下落から上昇に転ずるとき、株価にどう影響するのだろうか。この点に関しても、過去を振り返ると両者の関係は時代局面で大きく変わっており、一貫した相関はない。
図表3に見るように、
(1) 1980~99年まで、S&P500益回りは10年国債利回りとほぼ同一で推移してきた。つまり金利低下は益回り下落(=PERを押し上げ)で株高要因に、金利上昇はPERを押し下げ株安にというほぼ完ぺきな相関が続いていた。
(2) 2000年から12年ごろまでは、金利低下と益回り上昇(PER下落)が同時進行したので、金利低下は明確な株安要因といえた。
(3) 12年から18年までは10年国債利回りはほぼ横ばいなのに益回りが低下(=PER上昇)しており、株価は金利とは無関係に上昇した。
(4) しかし19年以降、金利低下と益回り低下(=PER上昇)が進行しているように見える。再び1999年以前のように益回りと長期金利がパラレルに動く時代に入っている可能性は、十分に考えられる。とすれば今後予想される金利上昇は、益回りを押し下げ株安要因になる。
J・マッキントッシュ氏は、これは非常に重要だと語る。「今は微々たる利回りしかもたらさない債券をポートフォリオに組み込むのは、株価下落ショックを和らげるため」。しかるに株価下落と債券下落(金利上昇)が同時に起こるとすれば、債券保有はポートフォリオのリスクヘッジにはならなくなる。「問題は我々が2000年代以前に近い経済環境に戻りつつあるかもしれないことだ。つまり、FRBが経済を支援することより、インフレを気にかけていた時代だ。もしそうならば、債券利回りの上昇は、株価の好材料となる経済ニュース(景気加速)の兆候ではなく、株価を後押ししない経済ニュース(インフレ)の兆候ということになる」。
超長期金利低下トレンド終焉と米国株式の潜在的リスク
武者リサーチは、マッキントッシュ氏の懸念は時期尚早だと考える。当面予想される金利上昇は良い金利上昇(=経済拡大による)であり、悪い金利上昇(=インフレ)ではないと考えられる。また金利と株価の関係が1999年以前に戻りつつあるとしても、現在の益回りは10年国債利回りよりはるかに高く、1~2%程度の長期金利上昇に株価は堪え得るバリュエーション上のバッファーをもっている。株価の長期上昇トレンドは変わらない、と見られる。
しかし、短期急落のリスクは排除できない。その引き金になりそうなのは、米国企業が長期金利低下という長く続いた金融環境に過剰適応してしまっていることである。市場がそのリスクに気付けば、株価急落などの一時的ショックを引き起こすかもしれない。
(つづく)
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