【衆院選2021】国産治療薬と治療法の開発がコロナ対策の要 自民党との“1対1”対決に決意~福岡2区・稲富修二氏
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“160万都市”福岡市の中心部を選挙区とする福岡2区(南区、中央区、城南区)。有権者数はおよそ44万7,000人(2020年9月/総務省調査)。前回2017年10月の選挙では自民党の鬼木誠氏(48)が10万9,098票を得て希望の党(当時)の稲富修二氏(51)に約8,200票差をつけて逃げ切り、その後稲富氏は復活当選をはたしていた。17年の選挙で日本共産党から立った松尾律子氏が獲得した票は1万7,594票。野党共闘が進む次期総選挙で共産党票を取り込むことを見込めば、稲富氏有利にも見える。しかし今年6月、一部週刊誌が稲富氏の家庭内不和を取り上げたことが選挙区内に波紋を広げている。選挙への影響はわずかとみる者が多いものの、稲富氏が「やや優勢」から鬼木氏に「並ばれた」程度に肉薄されているのは間違いない。立憲民主党の現職・稲富修二氏は、野党共闘による自民党候補との“1対1”決戦に「望むところ」と意欲をにじませる。
根拠のない楽観論こそ、菅政権最大の誤り
――菅政権は本来であればコロナ禍対策に全力を注ぐべきですが、党内基盤の弱さから近づく総裁選に気もそぞろ、政権の延命のみが目下の課題といったところです。
立憲民主党現職・稲富修二氏(以下、稲富) 選挙日程を自民党の都合で決めていくことに象徴されますが、コロナ禍において1つの政党内の内輪もめが国政を停滞させているのは本当に許しがたいと思います。国会を開かないのも憲法違反です。予算を組んで必要な法案をつくるためには国会を開かないといけないのです。自民党の総裁が代わったところで国内状況が好転することはありません。いまこの瞬間にも困っている国民がたくさんいるのです。
――次期総選挙の争点がコロナ禍への対応策になるのは間違いありません。現状の問題点も含めて、コロナ対策のあるべき姿とはどのようなものでしょうか。
稲富 菅政権は結果として新型コロナウイルスの抑え込みに失敗したわけです。では、これからどうするのかということでいえば、私は国産治療薬の開発がすごく大事だと考えています。ワクチン供給の遅れでわかったように、新型コロナ対策で日本は国際的に周回遅れの状況なんですね。追いつくためにはとにかく治療薬を開発することと、治療法を確立することが大事です。いま、コロナ治療薬の適応外使用の問題があって、「イベルメクチン」のことが話題になっていますが、これ以外にも診療の手引きには複数の薬があげられています。承認されていない薬だとしても、適応外で使えるものをより積極的に活用すべきだと思います。野党側はこのことについて前回の国会で法案を提出しています。
適応外使用の問題は、使った場合に診療報酬の対象にはなるものの副作用が出た場合の救済制度がないということなんです。それだと医師は積極的に使いにくいし、供給量も追い付いていない。したがって、いま日本がやるべきことは国産治療薬の開発であり、政府をあげて取り組むべきだと思います。治療薬と治療法さえ確立すれば、たとえばインフルエンザのような扱いにして経済を動かすこともできる、日常生活を取り戻すことができると思います。
もちろん、それまでには時間がかかりますので、現下の状況では有効な経済対策が必要です。政府の補助金・支援金にはさまざまなメニューがあるものの支給までの決定が遅いですね。申請して何カ月もたつのに出ないという声をたくさんいただいています。とくに個人事業主の方が困っているのは、申請が不備だと差し戻されるだけで何が不備か教えてくれないということ。訂正して出しても今度は別の記載不備で戻ってきてしまう。「申請の無限ループ」と呼ばれているそうですが、結局、制度はあっても使えないという状態なんです。これを使える制度にしなければなりません。
もう1つ気になっているのは、学生さんたちに対する支援が薄いことです。コロナ禍が始まって2年が経とうとしていますが、大学生や専門学校生は学校にいけない状況にあるにもかかわらず学費を満額支払わなければなりません。学費のなかには設備資料用も含まれていますが、設備を利用していなくても値引きされることは原則ないのです。学生たちの生活を支えるアルバイトの求人も減っていますので、困窮している学生は増えています。こうした現実は見えにくいものですが、学費の半額を国が負担するなどして積極的に支援すべきです。
――昨年入学した学生だと入学式もオンラインで、ほとんど学校に行けないままに1年が過ぎたために友人もつくれなかったという話も聞きます。
稲富 結局、こういうところで政府の姿勢が見えるんですね。大きいところに対する支援は積極的で、たとえばGOTOトラベルでいうとまだ1兆円が残って塩漬けのままです。一方で学生に対する支援はまったく進んでいない。少なくとも経済的支援を打ち出して、安心して学べる環境をつくらなければなりません。「いまはつらいだろうけれども、一緒に頑張ろう」というメッセージを政府が伝えることで、安心する学生さんたちは多いと思います。
――現政権のコロナ対策で最大の誤りは何でしょうか。
稲富 根拠のない「楽観論」で物事を進めていることだと思います。「希望的楽観論」と言ってもいいのですが、たとえば“ワクチンが打てるようになれば収束する”“第4波が終われば大丈夫”“オリンピックのころまでには終わっている”……などなど、菅政権はずっと楽観論を基準にコロナ対策を進めてきました。いま第5波での感染爆発が進み、東京などでは病床が不足して自宅で亡くなる方も増えています。野党はずっと病床を確保すべきだと提言し続けてきましたが、菅政権は「ワクチン接種が始まれば大丈夫」として聞く耳をもちませんでした。災害においては最悪を想定して行動すべきなのに危機感が薄く、事実をきちんと把握することができなかったために対策が後手にまわってきた。それこそが現政権最大の誤りでしょう。
東日本大震災が日本を襲った2011年3月11日、私は与党末席の議員でした。危機管理という点ではあのときと重なる部分があるように思います。「3.11」の時も危機の評価や予測が誤っていたんですね。10年経っても同じことを繰り返している、適切な判断ができない政治になっているのです。
自民党との「1対1」対決で国民の声をすくい上げる
――安倍政権から続く長期政権によって、自民党のゆるみのようなものが見てとれる。
稲富 「ゆるみ」というか、自民党が「生活の声」を吸い上げなくなったように感じます。たとえば補助金申請に関する不満の声などは国会議員が取り上げるべきことではない、もっと大きな政策的なことをすべきだという批判もありますが、私はそうは思いません。こうした声を拾い上げないと政策自体が実効性のないものになってしまいます。政権が長期化するなかで、多様な声を取り入れてブラッシュアップするという機能が失われてしまいました。現政権の基本は「(政府が)決めたからやれ」というやりかたで、真に国民に向き合っているとは思えません。
――自民党の劣化も背景にあるのか。党内での政策論争や権力闘争がなくなった。次の総裁に岸田文雄・前政調会長の名前があがっているが、では岸田さんになったら何が変わるのか国民には何も見えないまま。一方、機能不全に陥った自民党を倒せない野党には何が足りないのか。
稲富 長期政権を許した要因の1つは、野党が政権批判票の受け皿になれなかったということです。これはまさに我々の責任で、さまざまな声を吸収して政策にいかすことができなかった。自民党はいってみれば老舗の大企業で歴史と伝統があります。野党の役割は中小・零細企業の立場からものを見ることであり、小さな声、届きにくい声を拾い上げて国へ届け、政策を実現することです。自民党のような歴史や実績はないものの声を集めて実現することはできます。選挙が近くなっていろいろな声をいただく場面があるので、それを受け止めて一歩ずつ着実に行動していくということだと思います。
――なぜ野党が強くなれないのか。これまで、「モリ・カケ・サクラ」など、内閣を吹き飛ばす破壊力をもったスキャンダルは数々あったが、不発に終わってしまいました。
稲富 野党がバラバラだからでしょうね。逆にいえば野党をバラバラにさえしておけば与党は安泰だということです。我々野党が合従連衡して力を合わせて対峙しないと、巨大与党には勝てないのです。
――次の総選挙は政権奪取には千載一遇ともいえる好機です。これだけ支持率がおちて新型コロナ対策などで国民に見えやすい政策論争ができる。どう戦うのか。野党共闘できるのか。
稲富 共闘については「党対党」の案件ですので、私ができる範囲を越えています。現時点で言えることは、共産党さんが福岡2区にまだ候補者を立てていないということだけ。今後どうなるのかはわかりませんが、私が望むことはできるかぎり自民党と1対1の勝負がしたいということ。わかりやすく明確に、地元の皆さんに選んでいただける状況にしていただきたいと思います。
連続当選して初めて一人前の政治家、の覚悟
――経済政策でいうと、コロナ後を見据えてどのようなことが必要でしょうか。
稲富 やはり消費税ですね。時限的に減税するということを枝野代表がおっしゃっています。まだ党として最終的な結論は出ていませんが、これをどうするのかが政策のメインになると思います。
――福岡県でいうとインバウンドの消滅で関連業界は壊滅状態ですが、メーカーなどはほとんど影響を受けていません。産業ごとのダメージ格差が大きい。
稲富 すごく儲かっている業界がある一方、サービス業などコロナ禍の影響を直接的に受ける業界は前年比9割減など著しい落ち込みに見舞われています。産業ごとのダメージがそれぞれ違うので、対策も一律に行うのではなく実態に即したものにすべきだと思いますね。たとえば雇用調整助成金ですが、雇用さえ維持しておけば治療薬や治療法が出たときにすぐに経済を再開することができます。しかし雇用が失われてしまうとそこにタイムロスが発生する。
――GOTOキャンペーンは完全に時期を間違えましたが、わかりやすい景気刺激策も必要でしょうか。
稲富 GOTOが間違っていたのは、時期が早すぎたということと一過性のものだったということです。規模は大きかったものの、事業者にとっては同じ財源を使って1年、2年と使える息の長い支援策にしたほうがよかった。
――週刊誌報道について。
稲富 ああいった報道が出ること自体が不徳の致すところであり、修行が足りないということだと思っています。家庭内のことなので、詳細は控えさせていただければ。
――ズバリ、勝算は。
稲富 選挙はいつもそうですが、事前予測などいろいろな情報が飛び交います。しかし選挙は最後までわからないし、たった一言で風向きが変わることもあります。私は1期目の後に落選して、ずっと浪人生活を送って、前回は復活当選させていただきました。政治家は期を重ねて経験を積むことでやっと仕事ができるようになるということを実感しています。今回の選挙は事実上の2期目に向けた挑戦になります。何とか生き残れるように、政治家として戦えるように、選挙に臨みます。連続当選して初めて本物の政治家になることができます。厳しい状況ではありますが、皆さまにご支援いただけるようにがんばってまいります。
【まとめ:データ・マックス編集部】
〈プロフィール〉
1970年福岡生まれ。私立白陵中学校・高等学校(兵庫県)卒業。2年間の浪人を経て東京大学法学部に進学。1994年、丸紅(株)入社。1996年、松下政経塾入塾(17期生)。松下政経塾では主に租税や社会保障制度をテーマに活動。2002年、米・コロンビア大学公共政策大学院(SIPA)修了。経済政策を研究、『アメリカの仮面と正体』を執筆。2009年、衆院選(福岡2区)で初当選。2017年の衆院選で2期目当選。民主党(当時)では税制調査会事務局次長として事務運営。社会保障制度の安定財源確保についての答弁や立法成立に携わる。地元では国政報告会を約170回開催、地元の声を国会に届けてきた。関連記事
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