2024年11月25日( 月 )

中国経済新聞に学ぶ~中国は莫大な富を再分配時代が到来

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 中国共産党の習近平総書記(国家主席)は8月17日、所得の規制や再分配など「共同富裕」の実現に向けた概要を示し、国内の富裕層に警告を発した。

 習氏が2012年に党総書記に就任して以降、共産党は貧困撲滅と「小康社会(適度にゆとりのある社会)」の実現を最優先してきた。人民の幸福増進と党による統治強化の要と位置付けていたからだ。

 中国で昨年、所得上位20%の平均可処分所得が8万元(約128万円)を超え、下位20%の10.2倍となったことも示された。

 経済協力開発機構(OECD)によれば、この格差は米国では約8.4倍、ドイツやフランスといった西欧諸国では5倍に近い。中国はメキシコの10.4倍に迫る。

 中国は過去40年、経済成長をほぼ一貫して優先してきた。だが、習近平総書記はここにきて、社会的平等を一段と重視する姿勢を鮮明にしている。共産党支配の存続に対する国民の支持を固めることが狙いだ。

共産党の原点に回帰

中国 富裕層 イメージ 習総書記は会議で重要談話を発表し、「共同富裕は社会主義の本質的要請であり、中国式現代化の重要な特徴である。人々を中心とする発展思想を堅持し、質の高い発展のなかで共同富裕を促進する必要がある。金融は現代経済の核心であり、発展と安全に関わる。市場化・法治化の原則に従い、重大な金融リスクの防止・解消の取り組みを統合的に成し遂げる必要がある」と強調した。

 会議は「共同富裕とは国民全体の富裕であり、大衆の物質的生活と精神的生活がともに富裕であることであり、少数の人々の富裕ではなく、また、画一的な平等主義でもなく、段階的に共同富裕を促進する必要がある。勤勉と革新による富裕化を奨励し、発展のなかでの民生保障・改善を堅持し、人々の教育水準の向上と発展能力の強化のために、より包摂的で公平な環境を整え、向上するためのルートを円滑化し、より多くの人々が豊かになる機会をつくり、誰もが参加できる発展環境を形成する必要がある。基本的経済制度を堅持し、社会主義初級段階に立脚し、公有制を主体とするさまざまな所有制経済の共同発展を堅持する必要がある。力を尽くしてことにあたり、力に応じて取り組み、科学的な公共政策システムを構築し、すべての人々のための合理的な分配システムを構築すると同時に、必要性と可能性を統合的に考慮し、経済発展と財源の持続可能性を踏まえたうえで民生保障・改善を築き、基礎的、普遍的、包括的な民生保障を重点的に強化する必要がある。漸進性を堅持し、共同富裕の長期的で困難かつ複雑な性質を十分に理解し、各地が現地の状況に応じて効果的な道筋を探ることを奨励し、経験を総括し、一歩一歩進めていく必要がある」と強調した。

 中国政府は農村部を中心とした貧困削減で積極的な取り組みを進めてきた。最近では多くの資産家を輩出してきた国内テクノロジー産業に対する締め付けを強化。著名な実業家らをもてはやす風潮の行き過ぎも批判している。

 共産党中央財経委員会会議では、「高所得の規制・調整を強化するとともに、法に沿った所得を守り、過度な所得を合理的に調整し、高所得層と企業に社会への還元を増やすよう促す」方針が示された。

共同富裕の基準を明確化

 会議では共同富裕の基準を明確にし、3つの「多い」によって概括した。1つ目は「人数が多い」で、国民全体が豊かになることが共同富裕であり、少数の人が豊かになることではないとした。2つ目は「内容が多い」で、物質的生活が豊かになることも、精神的生活が豊かになることも必要だとした。3つ目は「ステップが多い」で、共同富裕は画一的な平均主義ではなく、段階的に徐々に実現すべきものだとした。

 共同富裕の実現はケーキをつくるようなものだ。大きくなければならないうえ、うまく分け合わなければならない。「大きくつくる」は質の高い発展に基づき、「分け合う」は制度的な設定に基づく必要がある。イノベーションと教育という2つの「原料」をしっかり使い、新しい「作り方」を絶えず探求して、より多くの人が豊かになるチャンスを創造する。一方で、豊かになる歩みは歩幅が大きくても小さくてもいいし、ペースが速くてもゆっくりでもよく、大事なことは制度的な設定によってリズムを調整し、「先に豊かになった者が後から豊かになる者を導く」を実現することだ。この過程で、効率と公平性との関係をしっかり処理し、所得分配がよりバランス良くなり、最低ラインの保障がより的確にする必要がある。平等に分配し、責任を負い、共同富裕を促進するグランドデザインを絶えず改善し、すべての人がケーキのおいしさを味わえるように努力する。

 中国では現在、「共同富裕」という格差解消のスローガンが演説から国営メディア、学校まであらゆる場所で掲げられており、馬雲(ジャック・マー)氏など当局の制裁対象となった実業家らもこのスローガンに言及し始めた。


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