突然の社長交代 五洋食品産業に何が起きているのか(2)
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五洋食品産業(株)の株主総会は8月27日、同社のプレゼンルームで開催された。コロナ禍で株主の来場を遠慮してもらっていたこともあり、同社役員のほかには数名程度の株主だけが参加していたようだ。その代わりにオンラインでの参加も認められていた。
例年通り、舛田圭良氏が議長を務め株主総会は進められた。同社は8月3日に取締役候補者を発表しており、議案通りに選任されることは既定路線だった。ところが株主から同社にとっては想定外の修正動議が出された。動議を出したのは筆頭株主であるイノベーション・エンジン食品革新投資事業有限責任組合(以下、IE)の小松伸多佳氏。傍らにはIE代表の佐野睦典氏もいた。2015年から6年間にわたり、二人三脚で進んできたはずのファンドが経営者を裏切った瞬間だった。
IEは同社株式の35.86%を保有し、共同歩調をとるFP成長支援A号投資事業有限責任組合(以下、FP)8.3%、FPステップアップ支援投資事業有限責任組合7.91%と合わせれば52.07%と過半数を握っている。絶対的な大株主の提案に周囲は驚いた。
同社側はこれまでの実績と今後の成長にベストなメンバーとして取締役候補者を選んでいた。その経営トップの代わりに、別のメンバーを入れるのであれば、相応の理由があって然るべきだ。舛田氏は「このタイミングで新しい人を入れたほうが企業としてのパフォーマンスが上がるとの考えなら、その理由を説明しないとほかの株主も判断できないでしょう」との趣旨の発言をし、小松氏に説明を求めた。しかし、小松氏はファンド側(IEおよびFPの関係者)を代表するかたちで「答える義務はない」「総合的な観点から判断した」と繰り返すのみだった。
参加していた別の株主からも「売上も利益も上げているのに、なぜ社長を代えるのか」「コロナ禍にもかかわらず最高益を出した経営者を交代する理由を説明してほしい」などの声が挙がったが、小松氏は同じ回答を繰り返すのみで埒が明かない。このため舛田氏は「これ以上質問してもほしい回答は得られないようなので審議に入りましょう」と議論を打ち切り、原案、修正案の各候補者の賛否に移った。両案の候補者の承認を図った結果、舛田氏と藤永氏が否決された。
オンラインで参加していた非常勤取締役・前田隆氏から改めて「舛田社長を代える理由がわからない」「少数株主の意見を無視した、大株主の一方的な意向だ」という趣旨の発言があったが、小松氏は紋切り型の回答を繰り返しただけだった。こうしたファンド側のやり方を承服できなかったのか、前田氏はその後に就任を辞退している。
取締役から外された舛田氏、藤永氏は席を立ち、そこから異例の取締役会が開催されることになる。
(つづく)
【緒方 克美】
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