九州発のコロナワクチンが第III相治験に移行~KMバイオ
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明治ホールディングス(株)傘下のKMバイオロジクス(熊本市)が、開発中の新型コロナウイルスワクチンの第I相/II相臨床試験(治験)で有効性と安全性を確認、10月中にも最終段階の第III相治験に移行する。2022年度中の発売を目標に、同社菊池研究所(熊本県菊池市)の生産体制を来年4月に整える。
同社のコロナワクチンは、季節性インフルエンザの予防接種に使われるワクチンと同タイプの不活化ワクチン。国内では開発例がなく、発売されるとmRNAワクチンやウイルスベクターワクチンをアレルギーなどで接種できない人の新たな選択肢になる。
第I/II相治験は、20歳以上65歳未満の健康成人105人、65歳以上の健康高齢者105人の被検者計210人を対象に、福岡市と熊本市の医療機関各1カ所で3月に始まった。被験者は、 ワクチン投与量で高用量、中用量、低用量の3群とプラセボ群に割り付け。ワクチンは1回あたり5㏄を27日間隔で計2回筋肉接種した。
被験者への接種は6月に終了。その後、安全性と有効性を評価していた。その結果、成人、高齢者とも3群で忍容性(※)が確認され、高い安全性が示唆された。副反応は、1回目接種後から2回目接種28日後までに接種部位の疼痛など。重い副反応は発熱が1例報告された。
ワクチンへの免疫応答は、高用量群で最も高く、若い年齢ほど高い傾向だった。この結果を踏まえ、同社は10月中にも第III相治験に移行する。新型コロナの感染状況は“第5波”が収まりつつあるものの、冬場にかけて新しい変異株による“第6波”が警戒されている。しかし一方でワクチンや治療薬は海外製品頼みで供給に不安が残る。
このため厚労省は、最終段階の第Ⅲ相治験の被験者を万人規模から千人規模に縮小。治験を実薬と偽薬を比較する二重盲検法から既存のワクチンや治療薬との有効性比較などに切り換えて純国産のワクチンや治療薬の開発を後押しする方針を打ち出している。
こうした“追い風”もあり、純国産コロナワクチンは、先行する大阪大学発の創薬ベンチャー「アンジェス(株)」(大阪府茨木市)をはじめ塩野義製薬(株)(大阪市)、第一三共(株)(東京都中央区)も開発を急ぐ。KMバイオは23年度発売の当初目標を1年前倒しし22年度中とした。
さらに同社は、第I相/II相治験の被験者から採取した血液を用いて、インド由来のデルタ株など変異株に対するワクチンの薬効評価を計画。また開発中のワクチンを「プロトタイプワクチン(大流行発生前にワクチン製造のモデルになるウイルスを使い製造・開発するワクチン)」として厚労省に製造販売を承認申請することも検討する。
昨年8月、厚労省はコロナワクチンの大規模生産体制づくりを目的に「ワクチン生産体制緊急整備事業」の1次採択分として純国産ワクチンを開発中の4社と武田薬品工業、アストラゼネカ日本法人の計6社に総額926億8,900万円(うちKMバイオ98億円)の助成金交付を決定。今年8月には2次採択分でVLPセラピューティクス・ジャパン(同)に143億円の助成金交付を決めた。同社が開発を目指すコロナワクチンは、大分大学医学部付属病院臨床薬理センターで10月中にも第Ⅰ相治験を開始する。
KMバイオのワクチン開発には、国立感染症研究所、東京大学医科学研究所などが参加する。菊池研究所の生産体制が整うと年1,500万回(1人あたり2回換算で750万人)分の不活化コロナワクチンの供給が可能になる。
【南里 秀之】
※:副作用が、投与された人にとってどれだけ耐えられるかという程度を示す。 ^
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